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絆の輪

ダイヤ、エリオット、僕は東の国の街に降りた。

昨日僕が車に乗って通り過ぎた街だ。



「さて、最初はなんだ?」

「まずは、衣類を揃えましょうか。」

「じゃあ、こっちだな。」




ダイヤは、緑と白の屋根の店に入った。



「いらっしゃいませ。」

「この子に合う服を注文したいんだ。採寸してくれないか。」

「かしこまりました。そちらの台にどうぞ。」



僕は鏡の前にある台の上に立たされ、若い女性が僕の体の色々なところの長さを測る。



「採寸完了しました。ご希望の生地やデザインはありますか?」

「ニーニャ、何かあるか?」

「僕は…特にないよ。」

「じゃあ、俺が勝手に選ぶぞ。」



ダイヤは、若い女性と話し合っている。



「エリオットさん。」

「どうしましたか?」

「今日の朝、アレは何?」

「朝…、ホットミルクのことですか?」

「そうじゃなくて、ダイヤを起こしに来て…、ホットミルク?入れて。」

「あぁ、そのことですか。」



エリオットは僕と目線を合わせるようにかがみ、優しく話した。



「私のお仕事なんですよ。」

「お仕事?」

「はい、ダイヤさんのお世話をするのが、私の役目なのです。」

「お世話…、僕もしたい。」

「ニーニャさんがですか?」

「うん。ダイヤに恩返し?がしたい。だから、エリオットさん僕にお仕事教えてください!」



僕が知っている”仕事”は石をかまどに運ぶこと。

今日の朝のエリオットを見て気がついた。

あの行動はダイヤのためになる。



「では、明日から少しずつ頑張ってみましょうか。」

「おねがいします。」



僕の背がシャンと伸びたように感じた。



「待たせたな。次はなんだ?」



ダイヤがたくさんの紙袋と箱を浮かせて、僕とエリオットのところに来た。



「作ってもらうと聞いたので、後日取りに来るのかと思いました。」

「あぁ、ここはちょっと特別な店だからな。」



ダイヤはそう言いながら、僕を抱き上げた。



「次は、手続き関係ですね。」

「手続きは俺だけで行けるな。他のものを二人で見てこいよ。」

「では、そうしましょうか。」



ダイヤは上着の内側からふわりと浮いた(ホウキ)を出すと、その上に僕を乗せた。



「絶対落とすなよ。」



ダイヤは(ホウキ)に圧をかけるように言った。








ダイヤとは一度別れて、僕達は家具を見に行った。



「ベッドと机と椅子…あとは何が必要でしょうか。…なにか欲しいものがあれば、遠慮なく言ってくださいね。」

「お仕事に必要なものってなぁに?」

「まずは、文字の読み書きが必要ですね。その勉強のための本棚も買っておきましょうか。それと…」













僕は、エリオットと共に色々な店を回り、日が傾いた頃にダイヤと合流した。



「欲しいものは買えたか?」



僕は首を縦に振る。



「じゃあ、帰ろうか。さっき連絡してくれてた大きい荷物は全部部屋に、もう送ってあるからな。」

「ありがとう。」



城に帰って夕飯を食べたあと、少しだけエリオットに仕事を教えてもらった。

ティーカップと紅茶の種類、スケジュールの管理や庭の手入れの仕方。

話を聞いただけで、頭がいっぱいいっぱいになってしまいそうだったが、これもダイヤの役に立つためだと思い、頑張った。







月が高く登り、星が見えるようになった頃。

僕はダイヤのもとへ行った。



「どうしたんだ?」

「ベッド、買ってもらったけど…。一緒がいい。」

「なんだ、そんなことか。いつでもおいで。…あ、そうだ。」



ダイヤは僕の右手の小指に、白い宝石のついた指輪をはめた。



「お守り。これで、この城のほとんどの部屋に入ることができる。そこのドアを俺の部屋に行きたいと思いながら開けてみな。」



ダイヤは台所につながる扉を指さした。

僕は言われたとおりに、ダイヤの部屋に行きたいと思いながら、扉を開けた。

すると、扉の先にあったのは台所ではなく、ダイヤの部屋だった。

大きな窓から大きな月がよく見える。


この指輪をもらったことで、僕はダイヤと正式に仲間になったという自覚が持てた。

心にポッカリと開いた暗い穴が、その小さなお守りによって塞がれた。













その次の日から、僕の特訓が始まった。

文字の読み書き、トヤヘリノの地理、テーブルマナーに買い出し。他にも色々。

僕はエリオットを”先生”と呼び、僕ができる最大限の力で毎日頑張った。

しかし、何も思うようにいかない。

何もできない、役に立たない自身が嫌になってしまったのだ。

失敗しても許してくれる、優しいダイヤや先生にも申し訳なく思ってしまい、よく台所に隠れて涙を流した。


そんな僕を探し、エリオットは声をかけてくれた。



「ニーニャ、こっちにおいで。いいものを見せてあげましょう。」



エリオットが僕の手を引いて、中庭の出入り口の戸を開ける。

僕は涙を拭いながら、手を引かれるまま庭に入る。



「ほら、綺麗でしょう。」



エリオットは僕と目線を合わせるために屈む。

僕が手を顔からどかすと、色とりどりの花が咲いていた。



「きれい…。」

「ここは、私の秘密の中庭です。この場所は私とダイヤさん、そしてニーニャしか知りません。」

「そうなの?」

「はい。辛い時、悲しい時はここに来なさい。花達が慰めてくれます。」



そう言うとエリオットは立ち上がり、ブランコの近くにある小さな鐘を鳴らした。



「この鐘を鳴らせば、私はここに向かいます。」

「先生はこの鐘の音がどこにいても聞こえるの?」

「えぇ、聞こえますよ。もう歳ですが、耳はまだまだ元気です。」



僕とエリオットは向かい合って微笑んだ。



そのあと、ダイヤも僕のことを探してくれていたようで、僕の顔を見ると安心したように、僕を抱きしめた。

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