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温かい心

ダイヤに手を引かれ、キッチンにつながる、大きなダイニングに着いた。



「ニーニャ、よく似合っているよ。ステラに切ってもらったのかな?」



僕はアルクスにコクコクと首を縦に振る。

アルクスの隣には女性がいた。

その女性は僕に微笑む。



「はじめまして、ニーニャさん。私はサリーです。」

「はじめまして…。」



僕はサリーのお腹が大きく膨らんでいるのに気がついた。



「それ。」

「そうなの、赤ちゃんがいるのよ。」

「赤ちゃん…。」



たまに家に顔を出す母親がおいていくものだ。

僕は幼い弟と妹のことを思い出す。

誰との子かはわからないけれど、僕が育てなければいけない。


けれども、大きな男たちにさらわれた時、もうあの子達の世話をしなくていいと安心してしまった。

世話をするのが、嫌だったわけではない。

でも、僕の心の何処かで逃げ出してしまいたいという気持ちがあったのだ。


だから僕は、この城に赤ちゃんが生まれることに、少し怖くなってしまった。



「ここに座りな。」



ダイヤが引いた椅子に僕は座る。

すると、次々と料理が運ばれてくる。

料理はどれも暖かく、色とりどりであった。


僕の前にもたくさんのものが置かれ、どうすればよいかわからない。

僕は隣のダイヤの真似をしながら食事を進める。

ダイヤはそれに気づいたのか、僕に合わせるように彼の動きがゆっくりになる。

アルクスもサリーもなんだか楽しそうだ。

料理と同じくらいあたたかい、この空間でさっきの不安は取り除かれた。












食事が済むと、アルクスとサリーはダイニングルームを出る。



「先に失礼するね。ニーニャ、今日はゆっくり休んでね。」

「ありがとう…。」



アルクスとサリー、ここに来るときに車を運転していた老人の姿が閉まるドアで見えなくなる。



「俺達も行くか。」



ダイヤは立ち上がり、僕の椅子を引く。

僕は椅子からおり、ダイヤと手を繋ぐ。

ダイニングのドアをエリオットが開けてくれた。



「お腹いっぱい食べられましたか。」



エリオットは僕に優しく話しかける。

僕は首を縦に振る。



「それなら良かったです。ゆっくりお休みください。」










ダイヤに連れられ、廊下を歩く。



「急だったから、部屋の準備がまだなんだ。悪いが、俺の部屋で寝てもらうぞ。」



僕はまた首を縦に振る。

ダイヤは先程入ったメイドや執事の集団部屋のドアに手を掛けた。

ドアが開くと、さっきの部屋とは全く違う部屋が広がっていた。

僕が住んでいた家より広い部屋に、南には床から天井まで伸びる大きな窓。

東側と北側には壁一面に本がしまわれており、西側は机や棚、花が飾ってあった。

飾られている花を眺めていると、ダイヤが着替えをしていた。

さっき腕に見えた入れ墨は、左胸のあたりから背中を伝って両腕や、腹、左足へと広がっている。



「花は好きか?」

「すき…、? わからないけど。 ダイヤ、好きってなぁに?」

「好き…か、そうだな。自然と心が向いてしまうことかな。」

「心。」

「そう。ほら、こっちおいで。」



ダイヤはベッドに入ると毛布をめくり、僕に手招きする。

僕がダイヤのベッドに入ると、優しく毛布をかけてくれた。

普段はこの大きなベッドに一人で寝ているのだろうか。



「寒くないか。」

「うん、大丈夫。」



ダイヤは僕を自分の方に寄せ、ギュッと抱きしめる。

ふと、ダイヤは僕の首の後ろを触った。



「…、反対側向いてくれるか。」



ダイヤの言う通りに、ダイヤ側に背中を向ける。

ダイヤが触ったところは、ちょうど洞窟で一番最初に焼かれたところだ。

どのようになっているかは、僕は見たことがない。



「少し痛いかもしれないが、我慢できるか?」

「…、我慢できる。」

「わかった。」



ダイヤはそう言うと、僕の口に彼の左指を3本横並びにして入れた。

すると、僕の首を牙のようなものが抉る。

痛みを耐えるために、僕は目をギュッと閉じ、歯を食いしばる。

ダイヤの指がミシミシと音を立て、口の中に血が入る。


ダイヤの右手が首に触れると同時にさっきまでの痛みが無くなった。

口の中の血を飲んだあと、僕は何が起こったか分からないまま、ダイヤの方を向く。



「よく頑張ったな。」



ダイヤの優しい声に心が落ち着く。

首を自分で触ってみたが、小さな傷があるだけだった。



「何をしたの?」

「秘密。おやすみ、ニーニャ。」



ダイヤはそう言うと、僕の額にそっとキスをした。

すると、僕のまぶたはドンドン重たくなっていく。

僕はいつの間にか眠りに落ちてしまったようだ。









明るい光が僕に当たる。

その温かさで目が覚めた。

隣にはダイヤが、まだ僕を抱きしめたまま眠っていた。

昨日のあの出来事は夢ではなかったのだ。

僕はホッとした。


少しすると、コンコンと扉を叩く音がした。

僕は反射的に毛布の中に隠れてしまった。

部屋の中に入ってきたのはカートを押したエリオットだった。

僕は毛布の中からこっそり覗いた。



「ニーニャさん、おはようございます。ゆっくり眠れましたか?」



僕は首を縦に振る。



「それなら良かったです。ニーニャさんはホットミルクでいいですかね。」

「ホットミルク…。」



エリオットは、カートの上の入れ物の中身をコップに注ぐ。

コップの中から、ふわふわと湯気が立つ。

エリオットは、そこに黄色いものを入れて優しくかき混ぜてから、僕にコップを渡した。



「やけどしないように気をつけてくださいね。」



体を起こし、温かいコップを受け取るだけで全身が温まる。

エリオットは僕と反対側、ダイヤの方にまわって彼を起こす。



「ダイヤさん、起きてください。」



エリオットはダイヤを軽く揺する。

エリオットは、カートの上の青い花の模様のカップにオレンジ色のものを注ぎ、僕のカップに入っているものと同じものも注がれた。

甘い匂いに誘われるかのようにダイヤが起き上がる。

ダイヤは僕の頭を撫でると、エリオットからカップを受け取る。

ダイヤが、カップに口をつけたので、僕もコップの中のものを口に入れる。


とてもあたたかく、ほんのり甘い。

僕はその”ホットミルク”を一瞬で飲み干してしまった。



「ダイヤさん、今日はニーニャさんのものを買いに行きましょう。

揃えるべきものは、リストアップしておきました。」

「ありがとうな。…ニーニャおいで。」



ダイヤはベッドの隣の小さな机にカップを置くと、僕を手招きする。

僕がダイヤに近づくと、ダイヤは僕を抱きしめる。

僕は何もわからないまま、ダイヤに包まれていた。



「気に入られてしまいましたね。」

「俺のだから。」

「ニーニャさん嫌なら言ったほうがいいですよ。」

「ぼ、僕はそんなに嫌じゃない…かな。」



三人で話しながら支度をして、朝食を取ってから城の外に出た。

ダイヤは、いつも着ている白い羽織を裏返しにして着た。

白い羽織の裏側は、ダイヤの目と同じような色で、首元に布が着いていた。

ダイヤは首元の布をかぶった。


すると、彼の背が伸びる。

僕と頭半個分くらいしか、かわらなかった身長はエリオットやアルクスよりも高くなった。

僕は驚き、開いた口が塞がらない。

ダイヤは、僕を軽々と抱き上げると、エリオットと共に街の方へ歩き出した。

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