優しい音
「大丈夫か?」
ダイヤが僕の方を振り返って、優しく問いかける。
その時はダイヤの音は元に戻っていた。
黒く焦げてしまっていた肌も八割ほど元に戻っていた。
「うん、大丈夫。」
「よかった。」
ダイヤは僕の無事を確認すると、レンシンの方に向かっていった。
ペタッと座り込んだレンシンをダイヤは引っ張って立たせ、箒に乗せた。
その後、ダイヤは大人の姿に変身して、ソラさんをおんぶして、魔法の扉を出した。
扉の先はお城の医務室。
医務室にレンシンとソラさんを置くと、ダイヤはみんなの治療を始めた。
コクエンさんやセンリさんも治療の手伝いをしてくれた。
一通り治療が終わると、ダイヤがまた外に出かける準備をしていた。
「ジンを探してくる。ベルリアルの魔力の後をつけていけば、たどり着くはずだ。」
「待って! おいてかないでよ…。」
僕は必死でダイヤを引き止めた。
ダイヤの肌は、ほとんど元に戻っていたが、火傷のあとがまだ見える。
また、ベルリアルと出会ってしまったら、さっきと違って上手くいかなかったとしたら、もうダイヤに会うことができないと思ったのだ。
ダイヤが僕の手を優しく離そうとした時、リュウセイが医務室に帰ってきた。
リュウセイは誰かを支えていた。
よく見ると、ジンだった。
ジンの青い髪は、赤黒く染まってしまっていた。
「ジン…見つけて…。」
リュウセイの顔は青く、鱗がボロボロと落ちていた。
ダイヤはすぐに二人に駆け寄り、テオの力を借りて、二人を中に入れた。
ソラさんはセンリさんの横で泣いていた。
全員の治療が無事に終わり、ダイヤがやっと椅子に座った。
火傷のあとは、もうどこにもなかった。
「ソラ、ジンのことなんだが、顔に傷が残ってしまうかもしれない。 本当にすまない。」
「大丈夫。ジンにも後で話しておくよ。わかってくれるはずだ。」
「でも、どうしてこんなことに…。」
「詳しいことは、二人に聞かないと分からない。
ダイヤも長居させてしまってすまないね。お礼もしないと。」
「いや、礼はいい。 いつこっちが世話になるかわからないからな。」
「そうか。」
「あとは、お前らでしっかり話せよ。 よそ者は帰るから。」
「せっかくの旅行を邪魔してしまってごめん。また、いつでも来て、歓迎する。」
「ありがとな、じゃあ。」
僕はこの会話を、ただ聞くしか出来なかった。
僕たちは荷物をまとめて、コクエンさんが運転する車に乗り、来たときに乗った船に乗り込んだ。
船は進み、コクエンさんと秘龍の国がどんどん遠ざかっていく。
僕は、ダイヤに聞いてみた。
「どうして、ジンとレンシンの話を聞かないで帰ることにしたの?」
「あの国はあいつらの国だ。 部外者が口を挟むものじゃない。」
「でも…、気になるよ。 まだ、何か力になれたかもしれないし。」
「…。 そうかもしれないな。 けどな、俺はあの事件の真相が大体わかってるんだ。」
「そうなの?」
「そうだ。 この出来事が、吉と出るか凶と出るかは、あいつら次第だな。」
ダイヤは、夕日を眺めながら言った。
ダイヤはこの先のことを、色々知っているようだった。
船から降り、トヤヘリノに帰ってきた。
港には、車で迎えに来てくれたオルターさんがいた。
近づいていくと、車の中にアルクス様がいるのも見えた。
ダイヤはアルクス様の顔を確認するように、車内を見てから車に乗り込んだ。
「ダイヤ、話がしたい。」
「わかった。」
帰りの車はずっと沈黙だった。
城に着くと、正面玄関の扉が開かれた。
ダイヤは、一度扉の前で止まってから、中にはいった。
ダイヤが城内に入った瞬間、二階と三階の部屋の扉が光った。
一階の暖炉の部屋からララが出てきた。
彼女は何も言わずに、ただジッと僕達のことを睨んでいた。
「自室にいてくれ、大丈夫だから。」
ダイヤの言葉を信じて、僕は自分の部屋に戻った。
心配だったのか、テオも僕の部屋に入ってきた。
二人で荷物の整理をしながら、ダイヤのことを待った。
大きな机の周りに、みんなが椅子に腰掛けている。
奥には一階にあるものと似た暖炉。
オルターさんが何かを話しているのを、みんなが聞いているようだった。
僕の向かいに座っているクロム様は、曇った表情をしている。
いつの間にか、眠ってしまっていたようだ。
僕には毛布がかかっていた。
多分、テオがかけてくれたのだろう。
テオは、どこからか持ってきた本を読んでいた。
「おはよ、まだ全然夜やけど。」
僕の部屋の窓からは、いくつかの星が見えていた。
少しすると、僕の扉の部屋がノックされ、ダイヤが入ってきた。
「遅くなったな。今日はもう寝ようか。」
「うん。 アルクス様とお話できた?」
「できたよ。 もう大丈夫だからな。 もう少し待ってくれ。」
ダイヤは、優しく微笑んだ。
もう少し待てば、何か変わるのだろうか。
ダイヤの部屋に移動し、この日は三人で一緒に寝た。




