信じる心
僕達は、ジンとレンシンの部屋でボードゲームをしていた。
「何の話してるんやろか。」
「俺達にはわからない、難しい話だよ。」
「最近は特に忙しそうだよね。」
「何かあるんですか?」
「そう言われてみると、わからないな。何かあるわけじゃないと思うんだけど。」
ジンとレンシンは少し考えたが、すぐにゲームに戻った。
「はい、あがり〜。」
「また、ジンが勝ったん?」
「ジンってほんとゲーム強いよね。」
「まぁね!」
しばらく色々遊んでいると、日がだんだん落ちてきた。
「外で遊びたい。」
「あんなことがあった後なのに、よくそんなこと言えるよね。」
「中で遊ぶの飽きちゃったんだもん。」
「んじゃ、気分転換に城ん中散歩しようや。俺等に案内するんも含めて。」
「いいね!城内散歩しよう!」
僕達は部屋を出て、散歩を始めた。
先が見えないほどの長い廊下の窓から、きれいな桜が見える。
周りの屋台街からは、ほんのり赤い提灯の光。
秘龍の国ならではの夜の明るさに、思わず外を眺めてしまう。
「そういえば、なんでここは”秘龍の国”なん?」
「もともとは、龍人が人間から逃げてきた魔人を保護するための国だったんだよ。当時は、今より龍人も魔人も差別が酷かったから、この見つかりにくい島に籠もっていたらしいよ。」
「まぁ、スタンダードな人型じゃないと端に追いやられてまうよな。」
「でも、ここにいるのは、ちょっとしたはみ出者たち。そんな俺らでも、楽しくやっていけてるよね。」
「そうだね、今はとても楽しい。」
僕達は長い廊下を進んで行く。
「ここさっき来た応接室だねぇ。」
中には、ソラさんとセンリさん、ダイヤがいる。
中から少し声が聞こえる。
「わかった。警戒しておくよ。」
「また、このことでお世話になるなんて。」
「仕方ないよ、誰が悪いとかじゃないからさ。」
ダイヤは、何を警戒すると言ったのだろうか。
”また”ということは、前にも同じようなことがあった。
「ニーニャ?どうしたん。」
僕は考え込んで、立ち止まっていたようだ。
「あぁ、気になるよな。
わざわざ、俺等を遠ざけて話してるってことは、知られたくない内容ってことなんちゃうかな?
それか、何らかの理由で俺等に教えられへんことなんよ。ダイヤから何か言ってくれるまで、待ってみぃひん?」
「…待ってみようかな。」
「じゃあ、散歩の続き行こか。」
テオに背中をポンと押され、僕は足を動かす。
その後散歩を終え、この日は幕を閉じた。
翌日、目を覚ますと、僕の隣にはダイヤが眠っていた。
昨日の夜の時点では、いなかったはずだが、僕が眠った後に来てくれたのだろうか。
僕はダイヤの髪に触れる。
ダイヤの黒い髪は、光の当たり方で少し違った色に見える。
蝶の羽のように柔らかい髪は、金属のように冷たい。
ふと、ダイヤの顔の方に目を向けると、大きな瞳がこちらを見ていた。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いや、大丈夫だ。そろそろ準備して、出かけるぞ。」
僕はダイヤの方に両手を伸ばす。
ダイヤは、僕を自分の方に引き寄せると、僕の頭を彼の胸に埋めた。
「昨日は良く頑張ったな。」
ダイヤは僕の頭を優しく撫でる。
彼の体温は低いが、やはり暖かい。
ダイヤに頭を撫でられ、ホッとしている間にテオが入ってきていてようだ。
いつもなら足音で気づくはずだが、今回は全く気づかなかった。
「親子で仲いいってのは、ええことやと思うてるで。」
「それは、俺も思う。」
ダイヤは僕を解放すると、ベッドから降り、支度を始めた。
最初はレンシンに推めてもらった博物館に来た。
植物や昔に生息していた動物の化石、骨董品や古い魔法書などがあった。
ダイヤは、これらのものに詳しく、ガイドの人も驚くぐらいだった。
ダイヤは長く生きている分、こういうものに触れる機会があったのかもしれない。
お昼を食べた後にに来たのは、大きな図書館。
一階から五階まで壁一面に本が敷き詰められている。
大きさは東の国の城くらいだろうか。
学校で使うような有名な魔法書から、少し珍しい魔法書。
子ども向けの絵本、小説や歴史書なんかも揃っていた。
今日のダイヤは、なんだかとても楽しそうだ。
帰りは、コクエンさんが車で迎えに来てくれた。
「今日は楽しめましたか?」
「はい、とても楽しかったです。」
「いやぁ、あんなデカい図書館があるなんて知らなかったな。」
「あの図書館は、特に最近できたものなんですよ。楽しんでもらえて何よりです。
明日は温泉街に行くとお聞きしていますので、送迎いたします。」
「ありがとうな、コクエン。」
「あなたにはお世話になっていますし、ニーニャさんは昨日ジン様を助けていただきました。テオさんも道に挟まってしまった僕を助けてくださったんです。」
「道に挟まったって…。それ、今初めて聞いたぞ。」
「言ってなかったのでね。」
ダイヤはクスッと笑った。




