魔力探知
僕は、ダイヤからもらったキーホルダーに手をかける。
すると、小さなキーホルダーは僕の身長よりも大きな如意棒に変わる。
この如意棒は少し前から練習していたものだ。
奥の茂みから、話し声が聞こえる。
「ジンと子どもがもう一人。やるなら今だ。」
かすかな金属の音と火薬の匂い。
これは、まずいのでは…。
「後方に三人、前方に二人。」
「え、」
「敵?の数。これは、よろしくないね。」
ジンがそういったとき、ジンの頭に向かって一発の弾丸が飛んできた。
僕はジンの背中を押した。
ジンは地面に倒れ、弾丸は木の幹に突き刺さる。
「まだ来ますよ。」
「了解。」
このまま、弾切れを待っていても仕方がない。
どうにかしないと…。
僕は次々に打たれる弾を如意棒で弾きながら、ジンを守る。
「ジンさん、具体的にどこに敵がいるかわかりますか。」
「そりゃ、もちろん。」
「僕に教えてください。銃声で他の音が聞き取りづらいんです。」
「わかった、合図する。」
”ニーニャが向いている方を十二時として、二時の方向に二人”
ジンは声に出して話してはいないが、頭の中に声が届いている。
どういう仕組なのかは全くわからないが、ジンの指示通りに二時の方向に素早く進む。
茂みに隠れていたのは、ジンが言った通り二人。
僕は二人を倒し、そのうちの一挺の銃を拝借した。
”九時の方向に一人”
頭にまた流れてきた言葉に従う。
意思の像の後ろに一人、如意棒を足にかけ、地面に転がす。
銃を向けると、相手はすぐに手を上げた。
銃を遠くに蹴り飛ばすと、次の指示が流れてくる。
”六時の方向に一人”
僕は体を百八十度回転させ、走り出す。
すると、大きな銃声が聞こえる。
その弾は、ジンの後頭部に向かってまっすぐ走っていた。
僕にはジンのところまで間に合わない。
そう思った瞬間、一本の稲妻が小さな弾丸に当たる。
弾は、雷に打たれて木っ端微塵になってしまった。
魔力の方向に目を向けると、そこにいたのはレンシン。
「…レンシンさん。」
「次は、打ったやつの頭上に落とす。」
レンシンの後ろから、何人もの軍服姿の大人たちがやってきた。
軍の人たちは、僕とジンを速やかに回収すると、残り二人の敵を倒した。
僕達は階段を降り、黒い大きな車に乗った。
車の中には、テオとコクエンさんがいた。
「ジン様、大丈夫ですか。目を話してしまって申し訳ございません。」
「謝らないでよ、今回のは俺が悪いんだ。ニーニャは怪我してないか?」
「はい、僕は大丈夫です。」
「なら良かった…。また、レンシンに助けられちゃったな。」
「ジンはいつも危ないことをする。外出禁止になってもしらないから。」
「レンシン〜、そんな事言うなよ。」
ジンはレンシンの方を揺さぶる。
「今回は、二人とも怪我なく済んだけど、本当に危ないんだから。
稽古と違って実弾だし、相手は本気で僕らのことを殺そうとしてる。僕は、君たちが死んでしまっては嫌なんだよ。」
レンシンの声が少し上ずる。
「そうだよな、ごめんな。レンシン。」
ジンはレンシンを抱きしめた。
その時、テオが咳払いをした。
「あの、”そこの自分関係ないです”みたいな顔して聞いてる黒髪のお兄さんも、おんなじこと言えるからね。
ニーニャが怪我したり、死んでしもうたら、俺はダイヤになんて説明したらええんかな。」
「ゔ、それはごめん。今後気をつけます。」
「よろしい。」
テオがくすっと笑いだし、それが車内のみんなに伝染する。
黒い車は、小さな笑いに包まれた。
城に戻ると、正面玄関に入ってすぐの暖炉の前で、ソラさんとセンリさん、ダイヤが待っていた。
「ジン、怪我はないか。」
「うん、大丈夫。」
ソラさんは、ジンと目を合わせるためかがむ。
「ソラ様、申し訳ございません。」
「いや、いい。お前は十分な働きをした。」
ソラさんは、コクエンさんの肩をぽんと叩く。
ダイヤは僕に近づき、キーホルダーを指差す。
「それ、ちゃんと使えたか。」
「うん。でも、まだもう少し練習が必要かな。」
「そうか、それはまた帰ってからだな」
「そうする。」
僕とダイヤの会話にセンリさんも入ってきた。
「それ、面白いもの持ってるんだな。」
「トヤヘリノには、魔法ツールや魔法石を取り扱っている、有名な店がいくつかあるんだよ。
これは、その中の掘り出し物。」
「なるほど…。興味深いですね。」
「まぁ、今回世話になるし、次にトヤヘリノに遊びに来たときにでも案内するよ。」
センリさんとダイヤは、楽しそうに話す。
そうしていると、奥の廊下からメイドさんが一人、ソラさんの方へやってきた。
メイドさんはソラさんに、そっと耳打ちすると、ソラさんは立ち上がった。
「センリ、ダイヤ、ちょっといいかな。」
「また、お仕事?」
「うん、ごめんね。みんなで遊んで待ってて。」
「…わかった。」
ソラさんとセンリさん、ダイヤは、どこか別の部屋に移動してしまった。




