龍人と魔人
「お客さんが来るのは、随分久しぶりだよね。」
「そうだね。」
僕はジンに手を引かれ、どこかに向かっている。
テオとレンシンも、その後ろについてきている。
「ここだよ。」
ジンはそう言って、大きな扉を開く。
「俺とレンシンの部屋なんだ。そこ座ってよ。」
僕とテオは言われたとおりに、ソファーに座り、その向かいにレンシンが座った。
ジンは、大きな棚から何かを取り出し、レンシンの隣に座った。
「こんなに広い城なのに、二人で一つの部屋なんだな。」
「最初は別々だったんだけどね。警備の都合で一つになったんだ。」
「警備?」
「そう。この城には、何かすごいものが隠されているらしくて、この国の国民の約半数を占める非純血の魔人たちの中に、それを狙っている人がいるらしい。」
「じゃあ、その”すごいもの”を守ればいいんじゃないか?」
「僕らを誘拐して、その”すごいもの”と交換しろ。なんて、言われたら困るでしょ?」
「確かに、そうですね。」
「そうそう。てことで、君たちはどこに行きたいの?」
ジンがさっき棚から取り出していたのは、この国の地図。
「大きいね。」
「この国は三つの島から、できているんだ。今いるのは真ん中にある、この島だよ。」
ジンは、三つの中で一番大きな島を指す。
「国民の九割はこの島に住んでいるよ。繁華街や商店街、寺院や大きな図書館が有名な観光地かな。」
レンシンも、うんうんと頷く。
「レンシンさんは、どこかおすすめの場所、ありますか?」
「え、…僕? そうだな。」
レンシンはじっと考えると、再び口を開く。
「この島には、大きな博物館があるよ。植物や、骨董品の展示があって僕は好き。」
「博物館いいですね。ダイヤも楽しんでくれそう。」
「みんなにお土産買いたいし、商店街とかもええな。」
「お土産なら、ここもおすすめだよ。」
ジンは中くらいの大きさの島を指す。
「この島は温泉街があるんだ。」
「温泉?」
「大きなお風呂だよ。ここも人気だよね。」
レンシンは、また頷く。
「そこも行きたいな。」
「美味しいご飯屋さんがたくさんあるから、後で教えるね。」
「ありがとうございます。この島には何があるんでしょうか。」
僕は最後の小さな島を指す。
「あぁ、この島は許可書がないと、入ることができないんだ。
この城よりも大きな神殿?みたいなのがあって、よく歴史研究家の人たちが許可書をもらいに、この城にやってくるのを見るよ。」
「…正直、この島に何があるか、僕達もわからないんですよ。」
「立入禁止の秘密の島…。なんか面白そうやね。」
「だよね!俺も行ってみたいんだよ。」
「あ、危ないよ。ここはやめとこう。」
「大丈夫だよ。レンシンは待ってたらいいじゃん。
せっかく、テオたちが来てくれたんだから、これがあの島に入るチャンスだよ。」
「で、でも…。」
「まぁ、この島に行くかどうかは、ダイヤと相談してからにしましょう。テオもそれでいいよね。」
「ええよ。行きたいって言えば、行かしてもらえるやろ。」
その後も色々話しながら、僕達の旅行の計画を立てた。
「ねぇ、ダイヤってどんな人?」
「ダイヤ? んー、普段は学校の先生をしてるね。あとは、お城の警備かな。」
「ダイヤさんも、純血の方でしたよね。」
「さっきから出てるけど、純血って何?」
「質のいい魔力を、たくさん持っている種族だよ。尖った耳が目印だよね。」
「じゃあ、レンシンさんとセンリさんも純血の方なんだね。」
「そう! レンシンはめっちゃ強いんだよ!」
「そ、そんなことないよ。お父様は、伝説の魔法使いシルファー・ブラック様と、共にこの国を守った英雄ですが、僕はまだまだです。」
「そうだね、俺達はここから! 次のリーダーとして、もっと頑張らないとね!」
「…そうだね。」
気持ちが高ぶったのか、急に立ち上がったジンにレンシンが驚く。
廊下の向こうから底の高い革靴の音が聞こえる。
扉がノックされ、静かに開く。
「どうだ? 行きたい場所、決まったか?」
「決まったよ。」
僕はダイヤに決めた場所を、一つずつ説明する。
「なるほど。ジンもレンシンもありがとうな。車を頼んでおくよ。」
「ありがとう!」
「旅行中は、この城で寝泊まりさせてもらえることになったから、お前ら仲良くしろよ。」
「ダイヤさん、今日はこの城にいるんですか?」
「そうだな。」
「では、このプランにないところを、二人に案内してもいいですか?」
「いいじゃないか、気をつけていってこいよ。」
「ダイヤはいいの?」
「年寄は、長旅で疲れちまったからな。コイツラの父親達と話したいこともあるし。」
「じゃあ行こう!」
ジンが僕とテオの手を握る。
「じゃあ、お願いしますね。」
「任せといて!」




