はじまり
「元の世界に帰るために本探してみた!」本編が本日で100話目となったので、番外編「ニーニャからの手紙」の1話を投稿します。
本編のネタバレにならないよう、並行して投稿しますので不定期投稿となります。
最初に覚えているのは暗いどこか。
視界が暗い、空気が暗い、音が暗い。
眼の前にあるのは、なんだろう。まだ少しあたたかい。
左手に持ってるのは…冷たい布に包んだなにか。
ドンドンと腹に響く音がする。
大きな音を立てて大柄な男が入ってきた。
あ、ここは僕の家だ。
男がドアを蹴破り、部屋の中に痛く眩しい日がさす。
僕の前に寝ているのは弟?左のこれは…わからない。
男たちに連れられて、外に出た。
何年ぶりだろう。太陽で目が燃えそうだ。
手首と足首になにか付けられた。
車の後ろに乗せられ、車が動き出す。
僕の家が遠く小さくなっていく。
特に何もなかった家のはず、でもなぜか浮いた助骨に響くものがある。
車の中には僕以外にも何人も人がいた。
みんな何も話さない。みんな下を向いている。
僕達はどこに連れて行かれるのだろう。
車が止まり、さっきの男たちが車から人を降ろす。
みんな次々とおりていく。
車にしがみついてなかなかおりない人。たくさん怪我をしている人。…。
暗い車内では見えなかった色々なものが目に入る。
遠くから声が聞こえる。頭が痺れるような悲鳴が。
ここはどこなのだろう。
僕の手首と足首についているものはなんだろう。
歩くと、とれてしまいそうだ。
男に言われてみんな歩き出す。
どうやら、手首についているものは前の人につながっているらしい。
暗い一本道を進んでいく。
悲鳴がどんどん近づいてくる。
道の隅でたくさんの人が寝ている。みんなどうしたのだろう。
道を進むと広いところに出た。
そこには青い布をまとった細身の男と、さっき僕達を連れてきた男と、似たような体型をした男がたくさんいた。
「前に来い。」
細身の男が言った。
僕の前の人はガタガタと全身から音を立てている。
どうしたのだろう。歩き方を忘れたのだろうか。
僕は前の人の背中をポンと押した。
前の人は躓いたように一歩前に進んだ。前の人は僕の方に振り返った。
前の人の目には涙が溜まっていた。
流れずに目の半分くらい涙をためていた。
お腹が空いているのだろうか。
妹はお腹が空くと泣いていた…気がする。
前の人は進まない。
後ろから大柄な男が来て前の人を引っ張っていった。
僕も前の人につられて、細身の男の前にやってきた。
僕と前の人…その他にも何人もの人が細身の男の前に来て正座させらされる。
どうしてこんなところに座らないといけないのだろう。足が痛い。
大柄な男が何人も道具を持って僕達の後ろに立った。
「やれ。」
細身の男が言うと大柄な男たちが静かに笑い出す。
なんだろう。
そんなことを思っていると、僕の首の後ろに感じたことのない痛みが走る。
両隣からは、さっき聞いたような悲鳴が聞こえる。
何が起こっているのかがわからなかった。
初めて感じる、人の肉が焼けるにおい。初めて感じる、悲痛の音。
次に覚えているのは、暗く寒い洞窟の中。
僕は地面に寝ていた。
僕の周りにはたくさんの黒い石。…。
あ、そうだこれを上に運ばなければ。
起き上がろうとすると、大柄の男に腹を蹴られた。
僕の胃には何も入っていないはずなのに、吐き気が止まらない。
息が苦しい。立ち上がれない。
男は僕が倒れているのを見ると、どこかに行ってしまった。
僕は落ちてしまった黒い石をかき集め、上に運ぶ。
ここでのミスは許されない。少し間違えてしまえば、この黒い石と一緒に大きなかまどに入れられてしまう。
そういう人を何人も見た。
ここの道で横になっているのは寝ている人じゃない。
みんな働いて、力尽き、息絶えてしまった人たちだ。
僕もいつかはこうなってしまうのだろう。
この洞窟に来てからどれくらい時間が過ぎたのだろう。
毎日火がついていた大きなかまどの火がつかなくなってしまっていた。
僕ももう立てない。足に、腹に、力が入らないのだ。
道の隅に横になる僕に男が近づいてくる。
また、蹴られてしまう。また、殴られてしまう。
どうにかして、どうにかして立たなければ…。
僕が体を起こそうとするのを見て、男はヒョイと僕を持ち上げた。
僕は困った。こんなことは、今までになかったからだ。
そのまま僕は、ここにつれてこられた時と同じ車に乗せられた。
車の中には僕と同じくらいの歳の子が何人か乗っている。
次はどこに連れて行かれるのだろうか。




