第十六首『イヤーーーッッッ! 衝撃の真実!』
全身が真っ黒に染まった人型の怪異、口は横に裂けたかのように大きく、目は充血して真っ赤になり、全身からは鋭いトゲがハリネズミのように無数に生えている。
口からは白い蒸気を吐き、そして、手に持っているのは……、
「心矢の……鎌……?」
そう、いつも心矢が振るっているあの大きな鎌を、なぜかあの怪異は持っている。
「ちょっと! 心矢をどこへやったの!?」
怪異は棒立ちのまま何も答えない。
「つむぎさん! あなたここでずっと見てたのよね!? 何があったか教えてよ!」
しかし、つむぎさんも俯いたまた何も答えない。
「ねぇ、つむぎさん! ねぇってば!」
すると、怪異があたいの叫びに反応して、顔をこちらに向けた。そして次の瞬間、怪異がものすごいスピードでこちらへ斬りかかってきた。
「わっ! いきなりなんだっていうのよ!」
あたいは咄嗟にミッドナイトブラスターのダガーナイフモードでそれを受け止める。刃と刃がぶつかり、競り合い、キーーーンという音が響く。
「ツ……ムギ……」
「喋った!?」
ありえない。喋る怪異なんて初めてだ。まさか、コイツがあの伝説の怪異とでも言うのだろうか。
「ツ…………ギ…………マ……モ……」
怪異は再び鎌を振り上げ、そして振り下ろした。あたいはそれを素早くミッドナイトブラスターのダガーナイフモードで弾き返す。怪異は何度も鎌を振り上げては振り下ろし、振り上げては振り下ろし、その繰り返しだ。
あたいはそれに合わせて、何度も何度も鎌を弾き返す。しかし、小さなダガーナイフの刃では、大きな鎌の刃を弾くのにも限界があった。
――パキン!
「しまった!」
ついにダガーナイフの刃が折れてしまった。折れた刃はふっ飛ばされ、地面に突き刺さる。
あたいはその衝撃で尻もちをついた。
目の前で、怪異は鎌を思いっきり振り上げる。
「駄目! 止まって! 斬っちゃ駄目!」
つむぎさんが枯れそうな声で叫ぶ。もう無理だ。今度の今度こそ助からない。
しかし、つむぎさんはそれでも必死に叫び続ける。
「斬らないで! やめて!」
(もう、無理よ……どれだけ、叫んだって……)
怪異が思いっきり鎌を振り下ろす。
「やめて! 心矢!」
「……えっ?」
怪異の動きが止まった。怪異は鎌を取り落とし、頭を押さえてもがき苦しみはじめる。
「あ……あ……うわぁぁぁぁぁぁ!」
怪異の姿がみるみる内に心矢の姿に変わっていく。
「俺が……俺は……あぁぁぁぁぁ!」
心矢は叫びながら、逃げるように去っていった。つむぎさんはその様子をただ黙って見つめている。
(どういうこと? 何がどうなって……)
あたいは理解できなかった。いや、正確には理解できなかったのではなく、理解したくなかったのかもしれない。
「ベロたんさん……大事なお話があるの……」
つむぎさんがいつになく神妙な面持ちにこちらに話しかけてきた。
あたいはその場で唾を飲み込む。
「心矢は……、私を……私を殺した怪異なの」
次週は更新お休みです。申し訳ございません。