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孤独な魔女と混血の秘薬  作者: 諸伏優
蜘蛛の都
9/50

9瓶目 童話 強欲とウシュムガルと孤独の魔女 壱

私達の魔法界に伝わる古い童話を1つ聞かせてあげる。


1000年以上昔のお話。

昔は人間も魔族も仲良く人間界で暮らしてました。

あるところに美しく優秀な魔女見習いの少女、命命がいました。いつも独りで行動をしている命命はある日、森でドラゴンの少年に会いました。

ドラゴンの少年はウィッチ・ザ・ゾンビマッシュルームを口にしてしまい、毒に侵されていました。

命命は習ったばかりの治療薬でドラゴンの少年を助けました。

ドラゴンの少年はルーヴァン・ウシュムガル・グリム1世と名乗りました。彼はドラゴンの王子だったのです。

命命は不思議な気持ちになりました。

それはルーヴァンも同じでした。

2人は年が近く、共通点も多かったのですぐに仲良くなりました。

命命とルーヴァンは2人ならどんなことでも乗り越えられると信じていました。

ある晩に上級悪魔のマモンがやってきました。

どうやら美しく優秀な魔女の見習いの命命を見に来たようです。

命命はそれをお腹が空いているのだと勘違いして、

自分の晩御飯を分け与えました。

マモンは命命が自分に気があるのだと勘違いしました。

ルーヴァンはマモンを良く思いませんでした。

マモンもルーヴァンを良く思いませんでした。


少しの時間が経ち、命命は誰もが振り向く美しい下級魔女へと成長しました。

彼女が作る魔法薬はどんな医者が作る薬よりも効き目が確かなものになりました。

彼女が造る魔法道具はどんな職人が造る道具よりも優れたものとなりました。

彼女が錬金術で産み出した青いダイヤモンドはとある王様に献上されるほど評価されました。


そんな命命をあの2人は放っておく訳もなく、

ルーヴァンは紳士的に、マモンは雑に命命にアピールをしました。


どちらの告白にも答えなかった命命は密かに

ルーヴァンを愛していました。

ルーヴァンはそれに気づいていました。

でも時間は二人を待ってはくれませんでした。

マモンはウィッチ・ザ・ゾンビマッシュルームの虜に、ルーヴァンはシーサーペントのエルザ姫を妻にしました。

結婚式の前夜にルーヴァンは命命を呼び出し、

彼女と最初のキスをしました。

「君を心から愛してる、命命。これは嘘じゃないよ僕は君が好きだった。もっとちゃんと伝えるべきだったね。ごめんね。」

命命は酷く後悔をしました。

何でもっとちゃんと彼を見なかったのだろう。

何でもっと素直にならなかったんだろう。

自分の気持ちを理解していたら…どんなに良かったんだろうと沢山後悔しました。


その後すぐにルーヴァンの妻のエルザ妃は 卵を1つ遺して呆気なく死んでしまいました。

その頃、人間は魔獣狩りを始めました。

それで人間と魔獣は戦争を始めました。


ルーヴァンは命命を後妻として迎えようと

太陽の水晶のペンダント、闇と月の雫の杖を

命命への贈り物として渡しました。

ルーヴァンの前妻であるエルザ妃の遺言には

「命命を後妻として迎えて欲しい、あの人には可哀想な事をしてしまったから」

と話していたらしい。

命命は後妻にはなりませんでした。


命命は魔女としてルーヴァンや卵に尽くしました。

ルーヴァンも命命や卵に尽くしました。


その頃、命命の母であるリリスは戦争が激しくなる前に魔植物と魔獣たちをまだ生まれたばかりの魔法界に逃がしました。

リリスはこの時、魔法界の初代女王になりました。


戦争が激しくなるとルーヴァンは命命を先に魔法界に逃がそうとしました。

「僕の命命、もし僕が戻らなければこの子をよろしく頼む。きっとエルザに似た男の子が生まれるに違いない。優しくて強い男の子がね。」

ルーヴァンは卵を最後に強く抱きキスをしました。

「お前を置いていけるわけがない…ルーヴァン。私はお前を失いたくない。私のルーヴァン…。」

命命は泣きました。

「命命、例え僕が死んでもその子がいる。君が愛する僕の子を愛せないわけがないだろう?」

ルーヴァンは命命を抱きしめました。

ルーヴァンは涙を流していました。

「死ぬとか言うなよ…ルーヴァン。必ず生きて帰ってくると言って。ルーヴァン。」

命命はルーヴァンの腕の中で幼子のように泣きました。

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