6瓶目 良縁の魔女
「お前…俺の先祖を騙した性悪魔女だな?!」
人間を騙した覚えは有りすぎて誰の事だろうか。
「エルフ奴隷を全部買い占めて石炭とイモでできた宝石で支払ってきた悪党め!」
あぁ、あの奴隷商人か。
リリンを助けた時の…確かあの時は
魔封じの魔法道具を使って変装し、男として奴隷を助けに行った。
「私にその赤い目の男を売ってくれ」
若い金持ちに化けた私を奴隷の彼は嫌悪の目で睨み付けてきた。
「おぉ!お目が高いぜ若旦那ぁ。こいつは上玉のハイエルフだ。簡単には壊れねぇ。どんな乱暴をしても、どんな労働をさせてもな!」
彼は凄く怯えていた。彼の足の骨は折られていた。
「じゃあ、ここのエルフの奴隷すべて売ってくれないか?皆美しくて私好みだ。」
性の悪い顔をすると奴隷売りはすべての奴隷を売ってくれた。
エルフは唇を読み取る術を使えるものが多い。
「お前達、走れるか?」
声を出さずに唇をエルフ語で動かした。
エルフ達は驚いていた。
「私は魔女だ。エルフ達を助けに来た。」
そう伝えると皆喜んでいた。
だが彼は喜ばなかった。
「前にそう言った奴が俺に乱暴した。」
彼は声を出さずに唇を動かした。
「私を信じて……」
彼は黙った。
「お金はこれでもいいかな?」
と石炭やイモが詰まった袋に幻覚魔法をかけたものを手渡した。
「まいど。奴隷はあんたのものだ。」
命命はニヤリと笑うと変装を解いて
「エルフ達!西へ走れ!!」
と叫んだ。同時に彼を杖に乗せて空高く飛び上がった。そしてエルフ達全員無事に魔法界に逃げることができ、私は安心した。
「あのマヌケの子孫か!私は魔女の命命。人間め!懲らしめてやる!」
呪文を長々と唱える時間がないので炎の紋章を描くと青い炎が男を包んだ。
「リリアン、ここに入れ!」
魔法で空間に穴を空け、リリアンをそこに隠した。
人間の血を引いた子に救いの手を出すなんて300年前ならきっとしなかっただろう。
「美しいエルフも醜い人間に恋をすることがある。例えそれが味方を裏切る行為だとしてもね。」
青い炎が商人の肉体を永遠と焼き続けている。
「魔女も馬鹿だろ?人間の進化も知らずに…」
拳銃をこちらに向けてきた。
「馬鹿なのは魔力を恐れる人間のお前達の方だ。」
そのまま商人の子孫を焼き殺してしまった。
奴の持ち物は拳銃だけ残った。
「貴金属かな…使えそう。」
ジャキッと構えて、誤って発砲してしまった。
「……魔法より危ないな。」
杖にまたがり、魔法界へと帰った。
「リリアン、出ておいで。」
空間に再び穴を空け、リリアンをそこから出した。
リリアンは怯えていた。
その姿はかつての彼によく似ていた。
「約束通り、お前を助けたぞ。」
リリアンは魔法界に来た。
リリンが人間を魔法界に入れた時ほどは驚かない。
私が自分で招き入れたからだろうか?
「ようこそリリアン。」
リリアンは私を見上げた。
その眼差しはかつてリリンが連れてきた人間の娘が私に向けた憧れと尊敬の目に似ていた。
「人間になりたいんだったね。すぐに普通の人間にしてあげるからね。」
魔力を完全に消し去る呪いをリリアンにかけようとした。リリアンはそれを拒んだ。
「命命、僕をあなたの弟子にしてくれますか?」
「俺をあんたの弟子にしてくれないか?」
リリンの声が聞こえた気がした。
その時のリリンよりもっとずっと若く幼いこの子に魔法の修行ができるだろうか?
「ハイエルフの末裔よ、私の修行は厳しく危険なものだ。お前の曾祖父がよく逃げ出したほど恐ろしいものもある。人間になった方が良いのではないのか?」
リリアンは覚悟していた。
「…死んだ曾祖父がそれを望んでいると思うか?」
その問いかけにリリアンは頷いた。
「バカなエルフの子…」
どこまでもあの男に似ている。
あいつは何て者を遺したんだ…
リリン、私はお前を愛してたのに。
なんでお前は人との間に災いの忌み子を撒いたんだ。いつも面倒事を起こす。だからお前にガーゴイルを連れていかせたんだ。
「命命?」
リリアンは私の頬を撫でた。
私の頬には涙が伝っていたようで、少し冷たくて、
ほんのりあたたかく感じた。
命命にとってリリアンは人間の血を引いた忌み子。
果たしてリリアンは命命の弟子になれるのだろうか。