50瓶目 闇と月の雫の杖
命命は自分の屋敷があった森に戻り、秘宝を呼び集めた。
「そう言えば私は1度も子供を作ろうとも、結婚しようとも思わなかったな…。」
命命は惚れたドラゴンの青年を想い浮かべた。
永い永い生涯で相思相愛だったのは一度だけだった。
「花は実を結び 実は種となり新たな命となる
さあ 私の想い描く世界と繋ぐ扉になれ 」
紫陽花から小さな扉を造り出した。
「私の本棚に入れる本を作ろう…そうすればもう二度と恐ろしいことは怒らないだろう…」
魔法で偽りの鏡と真実の鏡、キセル、蛇玉、羽衣、聖剣、小太鼓を本に変えた。
「愛を語る季節よ この本に命を与えたまえ
その愛を本に閉じ込めよ 」
本に物語が刻まれ始めた。
黙示録や恋物語、青春の話までも存在する。
命命の望むまま…登場人物の物語が綴られていく。
「ルーヴァン…私は少しのあいだ世界を振り回すことになるかもしれない。そして世界を敵に回すことになる。そんな悪女を赦しておくれ。」
命命は自分がかつて身に付けていた『光と太陽の杖』と『月の水晶のペンダント』を取り出した。
「エキドナ…私の最期の願いだ。」
骨龍エキドナを召喚し、願いを託すことにした。
「何?って…あんた生きてる?!」
エキドナは命命が生きてることに驚いた。
死んだと思わせていた人物がたくさん居るから当然だろう。
「お前に私の子を預けたい。」
命命の発言にエキドナははいはいと返事しそうになるも子供が居ることに驚きを隠せなかった。
「アタシに?!というか父親は誰よ!!」
それもそのはず。命命はまだ結婚も性交渉もしたことがないのだから。
「今から造り出すんだよ。」
そう言うと命命は『月の水晶のペンダント』に魔力を注いだ。
「月の満ち欠けよ 太陽の訪れよ
このモノを魔法使いに変えたまえ 」
ペンダントは赤子に変わってしまった。
健康な赤子だ。
「…任せた。どうか私のように愚かな真似をしないように育てて欲しい。」
命命は『光と太陽の杖』と子供をエキドナに託し、小さな扉を独りで潜り、消えてしまった。