5瓶目 ハイエルフの血を引く子
魔女の命命が愛したハイエルフの青年。
その男が愛したのは魔力を持たない人間の女で、その女に愛を伝えるために命命に魔力を込めた指輪を作らせた挙げ句、この男は命命の元から逃げたの。
酷い男よね。
この小さなガーゴイルは私が愛したハイエルフの青年に連れていかせた使い魔のレイメイ…?!
「ひゅふる…ふるふ(手紙を渡しに来ました…主様)」
小さな小瓶を私に渡した。
手紙の差出人は
「リリアン・ルエルフ…?」
私が愛したハイエルフの青年と同じ姓の娘からだ。
たすけて
なんだ?この汚いエルフ文字…人間くさい…
「レイメイ…いたずらか?」
レイメイに問いただした。
「ふひゅるっ…ふるふ、ふひゅひゅるふ(実は主様が愛されたハイエルフの遺された曾孫様なんです)」
遺された曾孫?エルフは混血でも500年は生きるはずだ…愚かなハイエルフの青年よ、お前は妻選びを間違えたのだな。魔力を持たない人間の女を愛したばかりにハイエルフの血が薄くなっていく。
「私は人間の血を引く子を助ける気はない。しかも裏切り者の曾孫?反吐が出る」
レイメイは口を開いた。
「ふひゅるんっふひゅるっ!ふるふひゅん!(曾孫様は少しばかり魔力を持っています!人間の魔女狩りに捕まっています!)」
魔女狩りに捕まっている?放っておけ。そんな穢れた娘…
「どうする?命命の母親捕まってるけど…」
「魔女狩りに捕まってる?放っておけ。そんな穢れた娘…救う価値無しだ。」
お母さん…私のお母さんと同じ目に会う前に逃がしてやらなくちゃいけない。
納屋にしまっていた魔女の証である杖を引っ張り出してきた。
「スカルJr.!留守番頼んだよ!」
スカルJr.に声をかけて、杖にまたがり、すぐ人間界へ向かった。
イングランドの森の中に大きな建物があった。
イングランドにはエルフの伝承があるため、「エルフランド」と呼ばれることがあるんだとか。
大きな建物の中に10歳ほどの少女?がいた。
「お前か?この私、命命を呼び出したのは。」
少女?は小さく頷いた。
「お前の名前は?」
やっぱりこの娘は人間の匂いがする…
「リリアン・ルエルフ…」
だいぶ衰弱しているように見える。
ハイエルフの青年との出会いを思い出した。
名前はリリン・R・ルエルフ。
人間の世界の奴隷市でボロ布を着せられていた赤い目をした奴隷の青年だった。
なぜか彼は私と同じ目をしてた。
人間を恨んだ目、怯えた目、愛を知らない目…
私は彼に想いを寄せた。
そんな彼の面影のある子が…傷だらけで曾祖父と同じ目にあってるとは血の繋がりがあるのは間違いないようだ。
「私は魔女だ。君を助けに来てやった。」
やっぱり人間の匂いがする。半分以上人間の血が流れているのだろう…
「祖父から聞きました…魔女様は人間がお嫌いなのですよね…」
リリンの…子供から私が人間を嫌っているとしっかり聞かされていた事に驚いた。
「しかも僕の曾祖父に裏切られたからルエルフ家を毛嫌いしてるって…」
リリン…お前子供にそんなこと言ってたのか…
「魔女様は僕を人間だと思ってくれますか…?」
リリン、お前の曾孫は人間になりたいらしいぞ。
「僕はエルフなんですか…?」
エルフでいるより人間でいた方がこの子はきっと幸せなのだろう。
ダンッッ!!
聞いたことないような爆発音が鳴り響いた。
「俺の奴隷と好き勝手話しやがって…」
魔女狩りか奴隷商人か?
何か私の知らない武器を奴は持っている。
最悪の場合私は死ぬかもしれない…
リリン、お前ならどうする?
リリンの曾孫、リリアンに特別な何かを感じた命命。
目の前には知らない武器を持った敵がいる。
最悪死んでしまう状況を目の当たりにした命命は一体どうなるの?!