38瓶目 敗北の大淫婦
「全く、独断でこんな目に逢わされている命命が可哀想で仕方ない。」
サタンは娘の中に宿る大淫婦を追い出そうとした。
「自分勝手な男。」
サタンはその言葉を待っていたと言わんばかりに姿を変えた。
「自分勝手?最っ高の褒め言葉だ!傲慢の悪魔だからな!」
ルシファーへと姿を変えた。
「ああ、そういうこと?多重人格なのね?!」
大淫婦の高笑いが響く中ケインが駆けつけた。
「混血流奥義・秘薬」
ケインは呪文を唱え命命から託された小瓶を開けると中の魔法薬が命命にかかった。
「ああっ!!熱いっ!焼ける!私の美しい顔がっ!器がっ!!」
命命の肉体が焦げ始めた。
ルシファーは瞬時に出来事を把握し、手出ししなかった。
「ケイン!!何をしたの?!」
リリスは最高傑作を失うことになるのがよほど嫌なのかケインに掴みかかった。
「黙って見てろ!」
命命の肉体は黒焦げになり、中から大淫婦の魂が抜けたのが見えた。
ケインは黒焦げになった命命の肉体を抱き抱え、人魚の入り江に向かって飛んで行った。
人魚の入り江には治癒の泡が出る場所があるため、そこに命命をつければもとに戻ると考えたからだ。
ケインは治癒の泡に命命をつけようとしたその時、カインが現れた。
「ケイン、命命はこれじゃ元に戻れないよ…。」
カインは治癒の泡では命命が完全に治癒しないことを告げた。
「ダメでもやってみる!」
命命の肉体をつけようとした。
ボロボロと命命の肉体が崩れ始めた。
「クソッ!しっかりしろ命命!兄ちゃんがついてる!」
騒ぎを聞きつけた人魚達が集まってきた。
「王女様よ!」
「崩れてるわ!」
「大変だ!」
「医者を呼べ!」
「王女様は魔女だ!医者じゃ助からない!」
命命は完全に崩れてしまった。
「…命命?」
ルシファーは娘の変わり果てた姿を見て、唖然とした。
「ごめんなさい…義父さん」
ケインは命命の一部を持って泣いていた。
「心配ない…だって永遠の生命の呪縛がかかっているから!」
ルシファーは娘の復活を期待している。
リリスが駆けつけ、ルシファーの肩に手を置いた。
「あれは肉体が焼かれることを想定していなかった。当時の私では若すぎて扱える呪縛ではなった。」
ルシファーは絶望した。
「娘の最期をこんな形で見ることになるとは…」
ケインは泣き叫んだ。
「馬鹿な兄貴でごめん…命命。」
人魚達は王女・命命の死を悲しんだ。
亡骸は真珠で飾られた壺に入れられた。
椿の島から鬼の夫婦と弟子達がこちらの人だかりを見ていた。