33瓶目 色が違くても
「お前は俺の妹に嘘をついた!酷い悪魔だ!」
ナベリウスを侮辱するケイン。
「……」
ナベリウスは黙って立ち尽くした。
「とにかく大淫婦をどうにかしないとな…お兄ちゃんに任せなさい。」
ケインは命命を抱きしめた。
「魔法界の伝説によるとな…」
リリスと命命の父によって大淫婦を黙示録の獣もろとも業火で焼いてしまった。
「いつかもう一度この地に現れてやる…」
怨み言をいいながら大淫婦は死んだ。
その際、大淫婦はリリスによって魂を奪われた。
そして大淫婦の魂はリリスの娘の肉体に宿った。
大淫婦が乗っていた黙示録の獣は7体の骨龍に、その記憶も全て書き換えてしまった。いつかこの2つが再会したときに大淫婦の永い眠りは醒め、娘を大淫婦に変えて人間界を滅亡へと導くだろう。
「7体の骨龍…」
命命はエキドナを思い浮かべた。
「もともと運命で引かれ合ったのか…」
ケインは伝説を漁った。
1度目の復活を遂げた大淫婦は骨となった黙示録の獣に乗り、水によって娘に戻る。
2度目の復活は赤い月の日に、悲しみのあまり娘の自我を乗っ取るだろう。そして己の両親を改心させ、大淫婦は魂を成仏させるだろう。
その娘は×××の真実に気がつくだろう。
そして娘は×××と結ばれるだろう。
「何の真実に気がつくんだ…?」
命命は疑問に思った。
「こそだけ虫食いになってるんだ。」
ケインは言った。
「虫食い…」
命命は絶望した。
「次の赤い月はいつだろう…」
ケインは赤い月を気にした。
「今日だ。」
命命はそう言った。
「ヤベぇじゃん!慌てるな!お兄ちゃんが何とかしてやるからな!」
ケインは命命を屋敷に連れて帰った。
「私に何かあったらこの薬を頼む。あんたにしか頼めないんだお兄ちゃん。」
命命は紫色の魔法薬を3本ケインに託した。
「なんだこれ…毒々しいな…」
ケインは魔法薬の見た目に少々引いていた。
「××××の秘薬」
命命はその薬をいつ使うか教えなかった。
命命の右手から青い液体が滴っていた。
「…この秘薬の色が毒々しいのはお前の血液が入ってるからか?」
ケインは優しく問いかけた。
「生き物のなかには紫色の血液を持つ奴だっているんだよ。」
命命の答えにケインは自分の左手を傷つけた。
「お兄ちゃんには赤い血が流れてる。それでもお前とオレは兄妹だ。何百年何千年先だってそれは変わらない。」
命命の血とケインの血が地面に落ち、そこから紫色の薔薇と桔梗が咲いた。
「美しい紫色の花に誓ってお前がどんな姿になろうとお兄ちゃんは守ってやるからな…」
空には真っ赤な月が登っていた。
「あらあら…イイ男じゃないか…」
命命は命命では無くなっていた。