32瓶目 リリムの正体
「リリム…?」
ナベリウスも疑問に思った。
「とりあえず、リリムに会おう。」
命命はそう言った。
「というか命命嬢…王女様だったんですね。」
ナベリウスはそう言った。
「まあな。今はただの魔女の命命だ。」
命命はそう返した。
「命に変えてでも貴女をお守りします。公主様。」
ナベリウスは跪いた。
「私の方が強い。ひめ呼びは嫌だ。」
そして命命は妖精の里の長の部屋に入った。
「お前がリリムか?」
命命の声にリリムは笑った。
「私の気配も忘れたの?命命…」
リリムの聞き覚えのある声に命命は青ざめた。
「そんなあり得ない…」
命命は首を横に振った。
「命命嬢!落ち着いて!」
ナベリウスは命命を落ち着かせようとした。
「リリム…嘘だろう…?そんなはずない…だってお前は私の目の前で…」
命命は腰を抜かした。
「お前だなんて…実の母親なのよ?ちゃんと母上とお呼び。」
リリムの正体は命命の実母及び魔法界の女王リリスだったのだ。
「計画と違います!」
ナベリウスはリリスにそう言った。
「あらあら…オルトちゃん。いつからそんなに偉くなったの?」
ナベリウスを見下すようにリリスは言った。
「ナベリウス…?」
命命は怯えていた。
「命命嬢…ごめんなさい…。吾輩はオルト・ナベリウス。リリス様の部下です。」
ナベリウスの正体に命命は声も出なかった。
「オルトちゃんのおかげで命命の中に眠る大淫婦の覚醒も近い事がわかったわ。ありがとう…」
リリスは喜んでいた。
「大淫婦?」
命命は震えていた。
「黙示録の獣だって勝手に仲間にしちゃって…お利口すぎてママ感動しちゃった。自分から進んで大淫婦を呼び覚ますなんてねぇ…」
命命は理解した。
何故自分が暴走したのか、7体の骨龍の真実、全部自身の中に眠る大淫婦が関係していた。
「じゃあ…私が愛したり、私を愛した男が悲惨な末路を辿るのは…」
命命の震える声にリリスは笑った。
「おまじないよ。大淫婦の覚醒の邪魔になりそうな悪い虫を追い払うおまじない。」
命命は絶望した。
「嘘だ…皆死んだのは私のせい…?」
リリスは喜んでいた。
「そうよ。全部貴女を想ってしまったが故の悲劇なの。大淫婦には色恋沙汰が付き物よ。」
命命は戦意喪失してしまった。
「俺の妹に何をする!クソババア!」
ケインはリリスに飛びかかった。
「あら…誰かしら?」
リリスはケインを片手で止めた。
「ケイン!お前の最初の子供だ!」
リリスは少し考えた。
「私はお前のような子を産んだ覚えはないよ。私の子は命命だけ。」
ケインは怒りを見せた。
「俺と妹の兄妹関係を否定するなぁぁ!お前なんて命命の母親じゃない!!」
命命は泣いていた。
「ケイン!もうやめて!」
ケインは命命の声に力が抜けた。
「俺の可愛い妹に近づくな。たとえ母親でもな。」
泣きじゃくる命命を慰めるケイン。
それを見て立ち尽くすナベリウス。
リリスは喜んで夫のもとへ戻っていった。