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孤独な魔女と混血の秘薬  作者: 諸伏優
命命の日常
3/50

3瓶目 性病を患ったサキュバス

ご存じかしら?

魔法界にも風俗は存在するのよ。

まあ働いてるのは借金を背負った娘達…だけどね。

安女郎も高級女郎も揃ってるらしいわ。

美しくて危険な香りのする世界に立ち入れば二度と普通には戻れなくなるらしいの。

魔法界の高級な風俗にはカンビオンが少なく、サキュバス達が多く居る。

逆に安価な風俗にはサキュバスは少なく、カンビオン達が多く居る。

サキュバスは性病にかからないと思われがちだけれど予防薬を飲んでいるから。


「…っあ!最っ悪…!」

枕元に牛乳を置き忘れたせいか、変な時間に目覚めてしまった。

「あれれ?起きちゃった?」

横を見るとインキュバスが添い寝していた。

「あぁぁぁっ!不審者!」

蝙蝠の血液と骨粉、石炭で作った拘束剤をインキュバスにお見舞いした。

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!誤解だよ!」

ギチギチと絞め上げて、吊るした。

「インキュバスは皆そう言うんだ。私は300はとうに超えてるよ。食っても美味しくないからね!」

インキュバスは慌てているように見えた。

「サキュバスの館からの遣いで命命に会いに来ました。キュロトと申します!」

キュロトと名乗るインキュバスは何かを持っていた。

「サリー姉ちゃんから…預かったんだ。上着の内ポケットのなかだよ。」

サリーは確かに実在するサキュバスの風俗嬢だ。

でもわざわざ私を指名する必要はないはず…

疑いながら手紙を読んだ。だがやはり読めない。

解読薬を手紙にかけて解読した。するとサキュバス達の共通語ではなく、低級悪魔の訛りで書かれていた事がわかった。 


前略、命命様。

はじめまして、サリーと申します。

私の性病を治していただきたく、キュロトに手紙を運ばせました。突然で驚かれたでしょう。ごめんなさい。風俗街にいる医者にお手上げと言われ、命命様しか頼みの綱が残っていないのです。どうか助けてください。


「風俗街の医者は治療すらろくに出来ないのか…?」

魔法界の医者というのは面倒事を嫌うのが多い。

「サリー姉ちゃん…身体中に変な発疹があるんだ。ハート型とか星形とか…」

聞いたことのない発疹が出ている…命に関わる可能性があるので急いで風俗街へ向かうことに決めた。


使えそうな材料、性病を治療する魔法薬などたくさん鞄に詰め、風俗街へと急ぎ足で向かった。


風俗街には甘ったるい愛憎の匂いが充満していた。

だから来たくなかったんだ…

「ここです。うちの店…」

ファッションヘルス ShowDown(ショーダウン)

と書かれたネオンピンクの看板に私はクラクラとした。どうやらここの最上階にサリーは居るらしい。

店の中に入るとむせ返るほどの媚薬香の匂いがして

いた。

男達に声をかけられるが私は興味がない。

最上階につくとさらに強い香の匂いがした。

サリーの部屋は一際豪華だった。

部屋の入り口に花や宝石が飾られていた。

「こんばんわ。命命です。」

部屋の中に入ると状態の酷い風俗嬢が倒れていた。

発疹が彼女の肌を蝕んでいるように見えた。

「サリー姉ちゃん!どうしよ命命様!」

キュロトは店で人が死ぬよりサリーの事が心配なようだ。

「これ、性病だけどすごく稀な奴だ。」

ハート型と星形の発疹、初期段階でここまで悪化しているように見える症状… 

間違いない、昔一度だけ治療したことがある。

そのときのサキュバスは天使の混血と肉体関係を持った後発症していた。きっとサリーも天使(てんし)性感染症(せいかんせんしょう)だろう。

当時は天使性病の治療はすごく難しいと思われていた。実際は天使の免疫が悪魔の胎内に入ることによる感染症だった。稀な病だが単純な薬で治すことができる優しい方の病だ。

特効薬の材料は

・蝙蝠の血液

・人魚の鱗

・天使の涙

・魔女の血液

・きらめく水草の粉末

と簡単に作れる。

大釜(コルドロン)に魔女の血以外の材料を放り込み、

火にかけた。

「すぐに治してやるからな。」

材料をかき混ぜながら自分の指に傷をつけ、

血を5滴大釜の中に落とした。

怪しい煙がたちまち溢れだし、海の匂いがした。

「できた。飲みな。」

コップに薬を入れ、サリーに飲むように促した。

サリーは拒んだ。

「私…対価用意できてない…」

サキュバス達の共通語だ。この時、あの手紙は別の人物によって書かれたものだとわかった。

「対価はいらない。だから飲んで欲しい。」

対価を患者が支払うは必要はない。いつもは皆善意で薬草や材料を寄越すが元々貰ってはいない。


サリーは「ありがとう」と言って薬を飲んだ。

薬を瓶に詰めてサリーに手渡した。

「しばらく仕事はしない方がいい。命が惜しいなら療養に専念しなさい。」

と釘を刺しておいた。

「キュロト…あなた勝手に薬を頼んだんでしょ?」

薬を受け取りながらサリーはキュロトを叱った。

「だって姉ちゃん、こうでもしなきゃ仕事休まないじゃん!」

よくよく聞けばキュロトの言葉が低級悪魔の訛りに似ている。

「命命様、実はオレはインキュバスじゃなくてアンチエンジェルとインキュバスの混血なんだ。」

変身を解いたキュロトの頭に角、背中には黒い堕天使の羽がついていた。

「だから低級悪魔の訛り…」

訛っていた理由がわかるとキュロトは

「え?!オレ、まだ訛ってた?!」

自分が訛っていたとは知らなかったらしく、驚いていた。

「じゃ、私は帰る。」

と出ていこうとしたらキュロトが引き留めた。

「ケルベロスの仔犬を貰って欲しい。」

ケルベロスの仔犬。冥府の番犬と呼ばれるケルベロスの子供である。黒い毛並みで病気に強く、唾液には猛毒を込めている最強の犬である。

ちなみにめちゃくちゃ高い。

「そんな高いもの貰えない!」

私は受け取るのを拒んだ。

だがキュロトはどうしても私に仔犬を譲ろうとしていた。

「ケルベロスって飼い主を選ぶんだ。命命様。」

そういえば…私の使い魔は元気だろうか。

300年間連れ添った雄の白いポメラニアン。

あの子が居なくなってから一度も動物を迎えたことはない。

貰っても良いのだろうか…あの子にヤキモチ妬かれないだろうか。

命命は考えた

命命はケルベロスの仔犬を迎えるのか…?

次回に続く。

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