22瓶目 骸骨の花嫁
命命はエキドナに向き直った。
ツカツカとヒールを鳴らしてエキドナのもとに歩いた。
「分かってるワ。婚約破棄でしょ?」
エキドナはそう言う。
「それもそうだが違う。使い魔契約だ。」
命命は無理やりエキドナの魔法陣を我が物にした。
「キャー♡大胆ヨ!」
命命はティアラをエキドナに返そうとした。
「あげる。アタシを忘れないでね。」
エキドナは命命を本気で愛していた。
愛していた証としてティアラを贈った。
「これからは愛人としてたくさん呼んでちょうだい♡マイスイートハニー♡」
エキドナの急変に命命はドン引きした。
「い、行きましょうか命命嬢…?」
ナベリウスが命命に声をかけた。
「わかった」
命命はナベリウスに手を引かれながら式場を後にした。
(あぁ、アタシの可愛い花嫁。いつかその男がアナタに飽きたらその前にアタシが迎えに行ってあげるワ)
午前0時の鐘の音が夜の島に鳴り響いた。
「お前は黒を着た方が似合うんじゃないか?」
スカルJr.に言い聞かせていた時のような優しい声でナベリウスを叱った。
「ナベリウスがその色を着るって聞かなかったんだよ。面白いよね」
リリアンがそう言った。
「本当に紫が似合わないな…お前。」
ケインが言った。
「よく見たら命命の目の色と同じだ!」
カインは不満そうに言った。
「勢いで着たので…色なんて気にしてる暇がなくて…すみません…」
ナベリウスは恥ずかしそうにモゴモゴと呟いた。
「命命!無事だったんだね!」
アベルは勢いよく飛んできた。
「お前のせいだからな!」
ケインは右ストレートをアベルにお見舞いした。
「兄さん?どうして?」
アベルは理解していなかった。
「俺の可愛い妹を拐って!骨龍の嫁に…このままだったら命命はあの世行きだったんだぞ!」
ケインはアベルを叱った。
「そんなのどうでもいい。アベル、禁断の果実寄越せ。約束だろ?」
命命はアベルに詰めよった。
「あはは…そんな約束したっけ?」
アベルは白けた。
「エキドナ!!コイツを吹っ飛ばして!!」
エキドナを早速召喚した。
「ハイハーイ♡任せてぇ~!尻尾アターーック!」
骨の尻尾でアベルを殴った。
「私を怒らせると怖いよ!さっさと寄越せ!!」
アベルは禁断の果実の種を恐る恐る袖から出した。
「最初から素直に出してりゃ良かったのにね」
命命は不気味な笑みを浮かべた。
「母親に似て性悪…」
ナベリウスは呟いた。
「やっぱり私の娘ね…命命…」
何処からか聞き覚えのある声が聞こえた。
「!!」
命命は辺りを見渡した。
「命命嬢?」
ナベリウスの声に命命は反応しなかった。
「母の声がした気がする…」
命命は不思議な感覚のまま帰路についた。
骸骨の花嫁、それはどれほど不幸せな存在でしょう?
私は何があってもなりたくないわ。たとえ操られていたとしてもね。私にはあの人しかいないから。あの娘には永遠にわからないでしょうね。