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孤独な魔女と混血の秘薬  作者: 諸伏優
命命の日常
2/50

2瓶目 蝙蝠の獣人

ねえご存じ?

あの命命に友人が居たみたいよ。しかも疎遠になってたみたい。


この世界にはいろんな生物がいる。

純血も混血もみーんな仲間!

私だけ仲間外れされてる気がするんだ。


それは若い頃の話

私には蝙蝠の獣人の女の子の友達がいた。

彼女も微量だけど魔力を持っていた。

彼女のためならなんだってした。

魔力を増やす薬だって、魔法道具だって、なんだってあげた。

なのに…なんで私は何も貰えないの?


お前なんて消えてしまえ。


知らぬ間に居眠りしてたし、酷い悪夢だった。

蝙蝠の獣人の女の事はしばらく忘れていたいな。

ふと窓を見ると鳩が手紙を持って窓を叩いていた。

「カインのとこの…どうした?」

窓を開けると鳩は手紙をおいて飛び去った。

手紙には血の跡がついていた。

人魚文字で何かが綴られているように見えるが

何となく違うとわかった。

「きらめく水草と真珠の粉、マンドラゴラを混ぜたて作った解読薬で…」

手紙に解読薬をかけて言語を解読するとサラマンダーの言葉だった。間違いなくカインの文字だった。


命命、この手紙が君のもとに届いたということは

僕は何者かに襲われているということだ。

絶対に森に来るな!

君を狙ってる奴がいる!そこから逃げろ!


ガシャーーーンッ

窓ガラスが何者かに割られた。

黒いマントを身に付けている不審者の手にはカインが握られている。

「命めっ…にげっ…」

カインが声を絞り出して私に逃げるように促している。だが私はカインの姿に亡き母の姿を見ていた。


私の大切なもの奪っておいて…逃がす(生かしておく)わけにはいかない。


私は人指し指の先を歯で傷つけて血を出し、空中に円を描き、中に逆さ星を描いた。

「我の欲望に火をつけ 我に力を与えたまえ

 ルメラャキ・ツブウコ・イメイメ!」

呪文を唱えると不審者目掛けて炎が吹き出した。

不審者は炎に包まれ、カインを投げ飛ばした。

私はとっさにカインを受けとめた。

「人魚の渇きを癒し 我に力を与えたまえ

マンダー・サーサー・スイスイム!」

癒しの呪文を唱えるとカインの身体の傷は癒えていった。

「命命っ!やりすぎだ!」

カインに叱られたので流石に炎を消してやることにした。踠いてて面白いのに。

「はいはいやればいいんでしょやれば。

スイスイム・スイスイム」

水を不審者にかけてやるとなんと燃えたのはマントだけで、不審者は無事だった。

「久しぶり元気だった?命命。」

昔仲良くしてた蝙蝠の獣人ライアーだった。

着ていたマントは私があげた闇夜のマントという代物だった。

「何のよう?」

大切な客を痛めつけて何が久しぶりだ。本当図々しい。

「見てわかるでしょ?若返りの秘薬が欲しいの。作ってくれるでしょ?お友達だもの。」

若返りの秘薬

それは禁忌の魔法薬。

材料集めが非常に困難で作るのは不可能に近い。

・純血種の人魚の生き血

・魔女の女王の血

・ガーゴイルの牙

・悪魔の角

・ドラゴンのクリスタルの欠片

・きらめく水草

・禁断の果実

・ケルベロスの唾液


「知ってるでしょ?材料を集めるのが困難で作るのは不可能ってこと。」

するとライアーはカインを指差して

「だから人魚を取ってきたんでしょうよ!」

流石にイラッときた。

「カインは混血。サラマーマンだよ。」

ライアーは「は?」と言いたげな顔をしていた。

カインは申し訳なさそうにしていた。

「あと色々足りないから作れないわ。」

人魚やドラゴンは見つかっても

魔女の女王もガーゴイルも悪魔もケルベロスもどこにいるのか誰にもわからないから。だから不可能だとされている。

「禁断の果実だってこの世の植物じゃないもの。取ってこれるわけないでしょ?」

そう言うとライアーは私につかみかかってきた。

「ふざけんな!なんでアンタは若いままなの?!秘薬余ってるんでしょ!頂戴!アンタだけずるい!」

欲望にまみれた女ほど醜いものは存在しない。

「アンタの生き血…吸い付くしてやる!!」

私の服の近くを無理やりライアーはめくった。

眩い光がライアーの目を攻撃した。

「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!目がっ!」

吸血鬼避けにと前に客として迎えたドラゴンの青年から貰っていた太陽(サン)水晶(クリスタル)の欠片が役に立った。

「吸血蝙蝠だったのね。だから日の光を恐れてたの?」

ライアーは顔を上げた。

さっきまでの女の顔はなく、獣の顔をしていた。

「アンタの才能を利用してやったんだから…感謝しなさいよ!」

どこまでこの獣人は欲に汚ないんだ。

「……ありがとう。材料になってくれて。」

私は彼女の首の動脈に針を刺して血液を抜いた。

「かはっ……」

欲に溺れた蝙蝠の獣人の血液…やっと手に入った。

カインの傷口から採取していた血液をライアーにかけてやると

「アンタ…許さないんだからね…」

呼吸を荒くしてそう言うが

「よく言うよ。私を利用しておいて感謝も出来ない能無しを生かしておいてやったんだから。感謝してね。バイバイ、ライアー(嘘つき)。」

カインの血液は青い炎を出してライアーと一緒に燃えた。ライアーの骨が残ったので粉末にして薬の調合に使うことにした。

「それ使わないよね?」

カインは心配そうに聞いてきた。

「この骨は飲み薬には使えないよ。」

本当は使うけど…

カインは何も知らない。


私は蝙蝠の混血でもなかった。

欲に溺れた汚い蝙蝠の末路、

それは殺されて魔法薬の材料にされてしまう。

魔女とは時に手を汚さなくてはならないのです。

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