10瓶目 童話 強欲とウシュムガルと孤独の魔女 弐
「約束するよ。生まれ変わったら犬になって会いに行く!必ずだ。」
ルーヴァンは命命と約束をしました。
「絶対死んだら許さないから!」
ルーヴァンは命命を魔法界に逃がしました。
そこから命を賭けてできるだけ時間を稼ぎました。
しばらくして命命が託された卵から男の子のハーフドラゴンが孵化しました。
そして命命はその子を子供のいないドラゴンの夫婦に託し、再び人間界に戻りました。
最愛のヒトと過ごした城は廃墟となり、暮らしていた日々は夢のように感じました。
城の入り口に瓦礫の山がありました。
瓦礫を退かすとそこに埋もれていたものが姿を見せました。
ルーヴァンの変わり果てた姿でした。
彼は命がけで城の中へ人間は誰独りとして入れませんでした。
命命はルーヴァンの亡骸を抱きしめ、泣きました。
やがて悲しみは恨みや憎しみに変わり、
命命が産み出したすべてのものが呪いへと変わりました。それを所持したものは呪い殺されました。
命命が錬金術で産み出した青いダイヤモンドは持ち主を不幸へと導く呪物としてどこかに存在したままになりました。
それから命命が悲しくて泣いた姿を見たものは居ません。
それからおよそ700年後、人間は魔女狩りを始めました。
リリス女王は命命を守るため、人間達に処刑されました。
リリス女王の亡き後、命命が事実上の魔法界の女王になりました。ですが命命はリリス女王が生きていることにしました。
そしてドラゴンの王族が存在したことも、魔女狩りが行われたことも人々の記憶から消えていきました。
命命は童話も8つだけ残して他はすべて燃やしました。
残りの8つは
蜘蛛の都、悪魔の国、ドラゴンの島、妖精の里、獣人の町、エルフの村、人魚の入江
とそれぞれのエリアの図書館に置かれました。
残りの1つは行方不明になりました。
「でもなんでお姉さんがこのお話知ってるの?」
城下町の蜘蛛の娘が聞きました。
「それは私がリリスだからだよ。」
と命命そっくりの女が微笑みながら答えた。
「そんなの嘘だよ。リリス女王は旅行に行ってるんだよ!」
蜘蛛の娘は言った。
「そうね。」
そう言うと女は森の中へ消えていきました。
「命命はまだ純潔の処女だからね。」
と不気味に微笑む先に
「そうだな。あの子は純潔過ぎて女王に相応しくない。」
大きな角の生えた上級悪魔がいました。
「私の可愛い娘だもの。そうでしょう?」
女は悪魔に抱きつきました。
「そうだな。あの子は愛い。」
このお話はいつかまたお聞かせしよう。
どうだったかしら?
この童話が真実だとは限らない。
命命の母が亡くなったとも限らないし、生きているとも限らない。
そんなこと誰も知らないんだから。
私の気が向いたらまた聞かせてあげるわ。