母さん!いいお墓を見つけたよ!
母に電話をかけた。
コール3回で母が出た。
「母さん。お墓を建てるいい場所見つけたよ」
「あら。ありがとう」
「きっと母さんも気にいるよ」
「ありがとうねぇ」
母が余命半年を宣告されて3ヶ月。
なんとか間に合った。
私は母の終活という息子としての最後の仕事を終えた。
母と父が出会った村……今は廃墟だが、山奥だからか、空気がうまい。
ここに母が眠るのか。
『お父さんと同じお墓に入りたい』
母は父にベタ惚れだったが私は父が嫌いだった。
私の父の記憶は、酒を飲んでいるか母か私を殴っているものしかない。
私が中学生になる頃には女とどこかに消えていた。
それでも母は父を愛し続けた。
我が母ながら健気なものだ。
「いつまで掘ればいいんだよぉ?」
懐中電灯を穴の中に向けた。
私の拷問を受け、全裸にヘッドライトという奇妙な姿の父が情けない声で何やらほざいている。
「これ以上掘ったら俺も出れねぇよぉ」
無視した。
爪は全て剥がし、片目をえぐり、上半身には大量のボールペンが突き刺さっているが、両手両足は無事だ。
まだ掘れる。
父は私が何も言わないのでまた地面を掘り出した。
口答えした分ボールペンを体内にねじ込まれるのを理解しているからだろう。
まるでパブロフの犬だ。
情けないな。これがあの怖かった父か?
父が私の組がバックに付く闇金に金を借りに来た時は驚いた。
「おぅい」
ボーっとしていたら結構な時間が経っていた様だ。
父の声が随分下から聴こえる。
「ロープか何か垂らしてくれぃ」
私は返事をせずに靴で土を穴に流し込んだ。
「わっぷ!お前なにするんだ!?おうえっ!土が口に!」
何度も何度も土を穴に流し込んだ。
やがて父の絶叫が聞こえなくなった。
金原家の墓の出来上がりだ。