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近くて遠い

作者: 神城

レジを挟んで君と僕。

この25cmはとても近いようで、驚くほど遠い。


レジを打つ君。その手際は手慣れたもので、もう見慣れたものだ。

「いつもお買い上げありがとうございます」

薄く微笑む君。それだけで僕の脳内はパーティ状態。我ながらなんとも気持ち悪い。

オシャレなパーティのようにキザな言葉の一つや二つで彼女を街へ誘えたらどんなにいいだろうかーーと考えて内心首を振る。自分はそんなキャラ「あの……」じゃないし、そもそも今は真昼間だ。……しかし、彼女は意外とそういうのが好きだったりするんだろうか。所謂乙女脳という女性は案外いるらしいがもし彼女がそうであるなら、いやはや世の中見かけにはよらないものだ。いや、それとも…「あの!お客さん!」

「っ!あぁ、すいません。なんですか?」

彼女の大きな声に思考を中断する。

 

「はい、もう終わってますよ。」

と袋を渡される。中には今日買った本が入っている。どうやら考え込み過ぎていたようだ。

 

「ああ、すいません。ありがとうございます。」

少し恥ずかしさを感じながら受け取る。

 

「いえ、ずっと立ったままでしたので……」

心配そうな目をされて申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちに挟まれる。

 

「いやぁ、仕事柄ちょっと深く考え過ぎる癖がありまして…」

苦笑混じりにそう返すと、彼女はより心配そうに

「信号とか気をつけてくださいね?」

と言ってきた。

「はい、気をつけます。」

これは反省しなければ、と思っても恐らく治らないのだろう。

 

「はい、それじゃあまたお越し下さい」

笑顔の彼女に僕も笑顔で返す。

「はい、また……」

 

“気をつけて”、“また”。僕はきっと彼女の優しさに甘えている。

社会に出ればヒトの優しさに触れる機会が格段に減る。……大げさかもしれないが、レジでの数分の会話は僕にとっては至福の一時なのだ。彼女は渇いた僕の世界に潤いをもたらしてくれる存在なのだ。

僕は君からたくさんのものを貰っている。

それなのに僕は何も返せていない。………正しくいえば『売り上げ』しかーー客と店という関係上それで良く、かつ中々に傲慢ではあるがーー返せていない。それも微々たるモノだ。

ココに立っている時は晴れているのに、外に出れば途端に曇る。

『彼女は僕にとっての太陽みたいなものかもしれない』

なんて、巫山戯た妄想をしながら店を出る。

外は晴れていた。雲ひとつない、快晴だ。

眩しさに目がやられる。

……先程の妄想は案外的を得ているかもしれない。

手を伸ばしても、きっと届かない。

あぁ、彼女は正しく、太陽だ。


続きは書ける気がしません。書いて欲しいという要望も多分来ないので

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