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銃器使いの追放者  作者: 天樹一翔
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ようこそイレーネ事務所Ⅲ

「次はここだ」


 そう言って案内された場所は二階にある射撃訓練場だった。的が合計で二つあり、的と構える場所からの距離は20m程だった。


「一回撃ってみろ。勿論自分の愛銃でな」


「はい!」


 リストキー副所長に言われるがまま私は愛銃セレネを構えた。そして体の中に感じる武氣(ぶき)を手に集中させる。


「いい武氣(ぶき)だ。流石主席だな」


 そう言われて喜びたいところだけど今はセレネと的に集中よ。


「行きます」


 セレネのトリガーを引くと弾丸は的の中央に命中。


「お! そのまま撃ち切ってみろ」


「はい」


 リストキー副所長に言われた通り、私は6発の弾を撃ち切った。私のセレネはいわゆるハンドガン。装弾数は6発。


 私の弾は最初の3発が中央に入った。それ以外はほんの数mmズレているけど、中央の的に収まったみたいだ。


「ほう。なかなか凄いな」


「ありがとうございます! あの――リストキー副所長の腕も見てみたいのですが」


「いいぞ」


 私と交代してリストキー副所長が銃を構えた。そして何故か目を瞑った。


「目を瞑ったらできないんじゃ――」


「まあ見てろ」


 そうして信じられないスピードの早撃ちをした。ダンダンと連続で聞こえる音はもはや適当に撃っているようにしか思えない――。


 しかし――驚くべきなのは弾丸が一発ど真ん中に入ったと思えば、次の弾がその弾を壁に埋め込むように押し付けていた。その繰り返しでリストキー副所長の6発の弾丸は、全て同じところに釘のように壁にめり込んでいた。


「まあこんなモンだろ」


 愛銃をクルクルと回して手遊びをしながらホルスターに仕舞うリストキー副所長。私はあまりにも凄い射撃技術に見惚れてしまった。ここまでの銃の精度は私が憧れているオリュンポスのリストキーさんと全く同じだ。兄弟そろって銃の腕はピカイチだったのね。


 あのリストキーさんはエルピーダは銃把(グリップ)が黒色で、その他の部分が金色なのが特徴的なハンドガン。対してリストキー副所長の銃は銃把(グリップ)が黒色で、その他の部分が赤色となっているハンドガンだった。形は似ているけど色は違うから、兄弟銃みたいな感じなのかしら?


「やっぱりお兄さんに銃を教わったんですか?」


 するとリストキー副所長は一瞬何か考えてから答えた。一体何の間だったんだろう。


「まあ、兄と所長だな」


「やっぱり! 凄いですね! 目を瞑ってあんな事ができるなんて!」


「経験を積めばそのうちできるさ。十分見込みあるぜ」


「ありがとうございます! でも不思議なんですよね。リストキー副所長の武氣(ぶき)が、銃を撃った時も微量しか感じれなかったです」


「ああ。それは武氣(ぶき)を制御しているからだよ。それに武氣(ぶき)を抑えないと敵に気づかれるだろ? 昔のクセで普段は武氣(ぶき)を0にしているのさ」


「そ――そんな技術があったなんて――」


「これはなかなか難しいからな。まあ、この技はオリュンポスの執行官(デリーター)がよく使う技だ。執行官(デリーター)は何の仕事か分かるよな?」


「はい。執行官(デリーター)はオリュンポスの中でも暗殺の任務を任される戦安官(チェイサー)の事です。テロ組織や汚職をしている要人を標的にする事が多いと習いました」


「その通り。暗殺を成功させるには敵に気付かれてはいけない。標的を殺す前に行う事は潜入する事だろ? 標的に気付かれる前に殺すのが暗殺だから、執行官(デリーター)武氣(ぶき)を抑えて標的に近付くんだ」


「成程――言われてみればそうですね」


「それに武氣(ぶき)はその場面によって使う量を決めればいい。射撃訓練場なんて別にターゲットに当てるだけで、凶悪犯と戦っている訳じゃない。少ない量でいいんだ。エリーは少し無駄が多いな」


「それも教えてもらえるんですか?」


「勿論だ。うちの事務所は中途採用ばかりだったんだけど、今年からは新卒採用もしようって事でエリーを迎い入れた。だから君の事は大切に育てるつもりだ。君が今後豊かな人生を歩めるように全力でな。一人前になったら別に退職して独立してもいい」


 リストキー副所長は嬉々とした表情を浮かべていた。何より武氣(ぶき)の抑制――それどころか武氣(ぶき)を0にして気配を消す事なんて考えた事もなかった。


 この世界では人であれば誰でも武氣(ぶき)は持っている。そして、ある程度の訓練を受けた者なら、微量の武氣(ぶき)を感じ取ることができるようになる。達人になればなる程武氣(ぶき)で相手の強さを測ると聞く。それを0にする事ができるのであれば、相手からするといない存在になる訳だ。そう考えるとリストキー副所長も凄いし、執行官(デリーター)も凄い。


「まあ、正直何が出来て何が出来ないのかは分からないから、しばらく俺の仕事についてきたらいい。そこで疑問に思った事は迷わず質問してくれたらいい。始めのうちは見る事が仕事だ。そこで感じた疑問だったり、さっきの技は

はどうやったのか? なんて質問があれば何でも答えるし、戦闘技術も教える。見て覚えろ――なんて古い教え方は俺はしないさ。できるようになるまでトコトン付き合ってあげるよ」


「そんな事言ってくれる人は養成学校ではいなかったですよ。本当にありがとうございます」


 私はそう言ってつい一礼をしてしまった。


「じゃあ次は演習場に行くか。武氣(ぶき)で何となく強さは分かっているけど、動きもみてみたい」


「演習場? ここの奥には刀の稽古ができるような所しかないようですけど――」


 するとリストキー副所長は「ノンノン」と言って右人差し指を振っていた。


「ここにあるんだ」


 そう言ってリストキー副所長は射撃場と鍛錬場の間の細い通路を通り抜けた。そこには扉と壁にはモニターが付いていた。


 リストキー副所長は何やらパスワードを打ち込んだ後、何やらマップを選択しているようだった。モニターに出てきたのは、山、海、溶岩、森林、荒野、街などの地形の名前だった。そこでリストキー副所長が押したのは草原だった。


 モニターにOKという文字が出てくるとカウントダウンが始まった。10、9、8と0に近付いていく。そして0になると扉が自動で開かれた。


「入るぞ」


 リストキー副所長が入った後、私も続くように入った。そこに広がっていたのはこの事務所内にあるとは思えない程の広さ。南の国の大自然のような広大な草原だった。


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