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銃器使いの追放者  作者: 天樹一翔
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オリュンポスからの客人Ⅲ

「何が言いたいんだ?」


 パーシヴァル中将は神妙な顔つきになった。


「エレウテリアを追うと同時に、世界政府についてもっと調べる必要があるんじゃないですか? オリュンポス時代でもそうでしたが、アーサーでさえ知らない世界政府の実態があるのですから」


 俺がパーシヴァル中将を真っ直ぐ見ながら発言すると、パーシヴァル中将は一旦お茶をグッと飲んだ。


「君の悪い癖だな。いや、疑問を持つのは素晴らしい事か」


執行(デリート)とは人の命を奪う事。上の指示に従ってそのまま任務として執行(デリート)するのは俺の中ではやはり違うんです」


「確かにそうかもな。我々戦安官(チェイサー)は凶悪犯を捕らえる事であって、殺しを仕事にしている訳では無いからね――」


 そう。何よりこの教えはジェームズ(親父)が俺に耳にタコが出来る程言い聞かせてきた言葉だ。自分が納得したうえで執行(デリート)しなさいと――。


「正義執行。これが俺の口癖なのはパーシヴァル中将も分かっていますよね?」


「ああ。ストラーフさんの受け売りなんだろ?」


「ええ。これはお前を確実に殺すという意味が込められておりますし、勿論正義執行の正義は己が納得した上でお前をこの世から消さないといけないと判断した。という意味も込められています。ですので己が納得いかない事には執行(デリート)をしないのが俺のポリシーです」


「確かにそうだったね。であれば、どうするんだ?」


「俺達は俺達のやり方でエレウテリアを追います。勿論、世界政府についても調べようと思います」


「そうなるか――ただまあ協力はしてくれるって事でいいんだな?」


「ええ。勿論です。全力で支援致します」


「頼む。ランスロット司令官にも伝えておいてくれ」


「はい。この会話はいつものように録音しているんですよね?」


「規則だからな」


 パーシヴァル中将はそう言ってニッと笑みを浮かべた。


「連絡先教えておきますので、あとでその音声データ送っておいてもらってもいいですか?」


「勿論だ。これからはスマートデバイスでやりとりをしよう」


「ええ」


 俺とパーシヴァル中将はスマートデバイスを取り出して、互いの12桁のコードを見せ合った。すると登録している情報が全て分る。しかし、俺達は職業柄名前と電話番号くらいしか登録していない。普通であれば、名前、年齢、住所、電話番号、誕生日、職場、職歴などなど、様々な情報がこのスマートデバイスに登録されている。故に、スマートデバイスを初めて買った際に配布される12桁のコードをスマートデバイスに控えている人は少なく、紙などの原始的な方法で控えている人が多い。


「これで完了だな。ガレス。期待しているぞ」


「こちらこそよろしくお願いします」


 俺がそう一礼をするとパーシヴァル中将は席を立った。


「新しい子が入社したんだってな。新卒採用は初めてなんだろ?」


「ええ。フェロー村の女の子です。俺に憧れて銃を使い始めたらしいので、俺はオリュンポスにいたリストキーの双子の弟という事にしています。俺が本人だと色々ややこしそうなので」


「成程。君の素性はこの事務所だと新人の子だけが知らないのか」


「そういう事です」


「いずれは明かすつもりだろ?」


「明かすつもりはないですけど、バレる可能性はありますよね」


「違いない。それだと益々エルピーダは使えないな。俺が貰ってやろうか?」


 と、悪戯な笑みを浮かべてパーシヴァル中将は手を差し出してきた。


「メラーキと同じく俺の大切な愛銃ですよ? 誰が渡すものですか。鉛玉ならあげますよ」


 俺がそう言って愛銃のメラーキの銃口を向けると、パーシヴァル中将は両手を上げて「こりゃ一本取られた」と笑みを浮かべていた。


 俺とパーシヴァル中将は客室を出て、パーシヴァル中将を入口まで連れて行った。


「オリュンポスもくれぐれも気を付けて下さい。あとアーサーと皆に宜しく言っておいて下さい」


「ああそうしておくよ。とは言っても俺もアーサーと会う機会なんて滅多に無いからな。その約束は約束できないかな」


「まあ会ったらでいいので」


「ああ! それじゃあな。会えて嬉しかったよ」 


 パーシヴァル中将はそう言って街の中へと消えて行った。


「リストキー副所長。今のオリュンポスのフラーブルィ・パーシヴァル中将じゃないですか?」


 と、いきなりエリーの声がしたから驚いたものだ。思わず背筋がビクっと動いてしまった。俺が人の気配に気づかないなんて珍しい。エリー、実は 執行官(デリーター)の才能あるんじゃないか?


「ああ。そうだ」


「す――凄い! やっぱりお兄さんの繋がりでお知り合いなんですか!?」


「あ――ああ。まあそんなところだ」


 俺がそう言うとエリーは目をキラキラと輝かせていた。エリーってもしかしてオリュンポスオタクか何かか? うちの事務所に入ったのも 所長(兄貴)がいるからだしな。 


「一体どのようなお話をされていたんですか?」


「さっきマンバと戦っただろ? そいつ等についてだ。詳しい事は中で話す」


「かしこまりました」


「ただ、エリーにとっては何とも言えない感情になるかもしれない。けれども事務所の一員として協力してほしい」


「はい――何とも言えない感情というのが気になりますけど」


「覚悟しておいてくれ」


 そうだ。エリーに覚悟を決めてもらう必要がある。ヘラクレス・ヴァイナーが憎いのは俺だけではない。


 何せエリーは両親をヘラクレス・ヴァイナーに殺されているから――。

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