邪神を封じている聖女の私は恋ができない……なのに口説いてくるこの男はなんなんですか?
「何回言えばわかるのですか? 私は邪神をこの身に封印しているので人を愛することができないのです。誰かを愛してしまうと心に隙間ができ、そこを邪神に突かれて封印がとけてしまうのです。理解できました?」
「全くわからんな! 私はそのままのシエラ殿を愛しているのだ。例え心の中に魔物を飼っていようとその全てを愛そうではないか!」
「ですから! そういった比喩的な事ではなくて本当に邪神がいるんですよ! この話を知らない人間が、私を知らない人間がこの世界にいるとはびっくりです!」
「……恋は盲目」
「話になりません! 帰ってください!」
私の名前はシエラ。遥か二千年前より邪神を封印し続ける聖女である。邪神が現世に顕現し破壊の限りを尽くしていた頃一人の勇者が立ち上がった。私はその勇者様に賛同し共に邪神討伐にでた。……苛烈を極める戦闘の末、勇者様は討ち死に。邪神に致命傷を与えることができたが討伐するには至らず、聖女として神の祝福を得ていた私に封印したのだ。……いつの日か私の中で弱体化していく邪神を討伐できる勇者様の生まれ変わりを待ちつつ……
それから、二千年。待てども待てども勇者様の生まれ変わりは現れなかった。自称勇者と名乗って会いにくる人間もいたが少し邪神の力を見せると腰を抜かして逃げて行った。
このことが世界に忘れ去られないように、各国の王族は一年に一度は私の元へ訪れ様々な話をしていく。まあそれは建前で私が死んでしまわないか心配で見に来ているだけだ……誰一人として私自身を見ている人間などいない。
なんでも私が邪神を封印している最中
「このままでは私は封印されるだろう……だがいつの日かこいつの中で傷を癒し必ず復活して貴様らを根絶やしにしてやる。それまでこの器を殺すことは許さぬ、もし殺せば私の力が暴走し全てを無に帰すだろう……まあ私はそれでも構わぬがな……」
と、言い残したらしい。その為私ごと邪神を殺そうとする輩に殺されなくて済んでいる。まあ邪神封印の副作用で死ななくってしまったからこうして二千年も生きているのだけど……
しかも、私が恋をして心にスキが出来ると邪神に体を乗っ取られてしまうといったおまけつきである。
その為この森には誰一人として寄り付かない。一応魔法で好きなだけ寝れるし、二千年掛けても読み切れない程の本を献上されてるからヒマにはならないんだけど……精神的にはそろそろ……
なのにあの、ケラーバとかいうチャラ男は私を口説きに何度も何度も来ている。各国の王族に見つかったから確実に殺されるのに……本当にどうかしている……
「シエラ殿、今日も実に美しい。恋人になってくれますか? ……ところで今日は巷で噂のケーキなるものを買ってきたので一緒に食べましょう」
「おなかがすいていないのでけっこうです。それにしれっと告白しないでください」
「おや? 心の声が聞こえてしまいましたか? やはり抑えきれぬ思いと言うのは言葉に出てしまうのですね?」
「……」
「今度一緒に海にでも行きましょう? 是非ともシエラ殿の水着姿がみたいです」
「……何を言っているのですか? 変態ですか?」
「ははは、ご冗談を。シエラ殿明日どこかに食事でも行きませんか?」
「はあー……何度も言っているでしょ? 邪神が私の中にいる以上この聖域である森からでれません?」
「なにをそのような細かいことを! ではその邪神とやらを私が倒して見せましょう!」
「いい加減にしてください! ……この力をみてもまだそのような軽口を叩けますか?」
……私はほんのちょっと邪神の力を解放した。
「……なんですか、この禍々しい力は……あり得ない……」
「そうです……邪神がいる限り私はなにもできないのです。わかったならもう二度とこの場に立ち入らないでください」
「……」
これでこの人も、二度と来ないだろう……
二度と……
――
あれから二ヶ月。ケラーバさんはやはり来なくなった。……それが当たり前、二千年そうだった、前も前も前も前もずっと前もそうだった、いつもよりちょっと粘ってただけ、誰だって邪神は怖い、当たり前……
……ただ、久々に人と普通に話せて楽しかった……
……早く、誰でも良いから邪神を倒せる人来ないかな……
「……」
「さみし……」
「シエラ殿! 長い間顔を見せずにすみませんでした! どうです? 私が来なくなって少しは寂しかったですかな? 恋人になってしまいますか? ところで、私の力はどうですか? この鍛えぬかれた力は! 凄まじいほど強くなってますよ! これなら邪神倒せそうではないですか?」
「え? なんでまたきて……」
「これは異なことを、思い人に会いに来るのは当然ではありませんか? ……ただ、修行していましたので会いにくるのに時間が空いてしまいました」
「……ははは、あなたは……」
「……」
「……なに……なにまたしれっと告白してるんですか! 私は恋ができないと言っているでしょ! まったく……」
「あ……りが……」
「ステラ殿! さっそく邪神を出してください! すぐに倒して見せましょう!」
「……ケラーバさん、盛り上がってるところ申し訳ないのですが……絶対に勝てません。確かに以前より格段に強くなってますけど、邪神の力はそんなものではないのです……」
「え? こないだでた邪神ならなんとかなると思いますが?」
「あ、あぁ。……あれはケラーバさんにわかってもらうためにほんのちょっと力を出しただけなんです。邪神の全力はあれの何千倍も強いです……」
「……」
「せっかく修行がんばってくれたのに、すみません……」
「では、ステラ殿はそれ程までの力を持つ邪神を封印しているのですか! それはどれ程大変な……」
「私は神の祝福を受けた聖女ですから、耐性がありますし、聖なる結界とこの聖域があるので封印するだけなら、なんとかなるんですよ」
「結界? では結界があればステラ殿は……」
「え?」
「ステラ殿、何日か空けます。ですが、必ずまた会いに来るので待っていてください! そのときは、『お帰りなさい』と言ってくださいね!」
「……言いません。ですが……もし……もし本当に……また来るなら……お土産でも持ってきてください……」
「かしこまりました。ステラ殿は食いしん坊ですからな、ケーキを山のように買ってきましょう。はっはっは」
「……」
――
ケラーバさんは何者なんだろう? 邪神には遠く及ばないにはせよ、あの短期間であそこまでの力を……
「ぐっ!」
(ステラよ……貴様もしや……あの小僧を……貴様の心からこの二千年感じたことのないものを感じるぞ……)
「うっ、……そんなわけ、そんなわけない! 私は貴様を必ず滅する! きっと、きっと、もうすぐ貴様を滅ぼせる人が、勇者様の生まれ変わりが現れるはず!」
(……)
「ステラ殿! もしや、私が来なくて寂しかったのですか! 遠くにいても尚聞こえる一人言を言っておりましたぞ! まさか、私への愛の言葉ですか!?」
「……はぁー、苦しんでるのがバカらしくなってくる……ケーキをください……」
「はっはっは、まったく食いしん坊ですな!」
「……」
「ステラ殿! 早速ですが、この結界の力をどうですか! ……はっ!」
「え! ……なにこの強力な結界は?」
「少し修行して参りました。この結界があればステラ殿も自由に動けるのではありませんか? 二千年もこの森に籠っていてはおつらいでしよう? 私と世界を旅しましょう! ハネムーンというやつです!」
「しません。ところであなたは結界士だったのですか?」
「いえ、全く違いますよ? 修行したのです」
「どれだけ修行すればこのような結界を……」
「あなたの為の修行になにが辛いことがあるでしょうか? 楽しくて仕方なかったですよ! これでデートができると思えばね? はっはっは」
「……」
「……私は恋はできないと言ったでしょ! ハネムーンもデートもできません! 無理なんです!」
「ですが、私の結界を強力と、ステラ殿も言ったではないですか?」
「確かに強力ですが……この聖域に張られている聖なる結界に比べたら……」
「仮に外に出れるとしても精々三十分程度が限界だと思います……ここに張られている結界は桁違いに強力なんです。せっかく修行してがんばってくれたのに……」
「ステラ殿……申し訳ない……」
「いえ、お気になさらずとも……」
「自由に外を歩かせてあげたかったのに……」
「ケラーバさん……」
「ですが! 三十分ですか! 二千年この森から出れなかったステラ殿が三十分も外に出れるようになったのですか!」
「え?」
「いやぁー頑張ったかいがありましたな。では、さっそく二千年ぶりにこの森から三十分のお散歩に行きましょう! ステラ殿も出たいでしょう?」
「ケラーバさん……ありがとう……私のために」
「……嬉しいで……ぐっ!」
「ステラ殿! どうされました! 血が! 血が出ていますぞ!」
「あなたが心に……いえ、……最近体調が良くなくて、邪神を抑えられなくなっているのです。少し安静にしています」
「ステラ殿……、かしこまりました! では、私が付き添い……」
「ダメ! あなたは帰ってください! しばらくは会えません! 来ないでください!」
「もう……もう来ないでください……」
「勇者様の生まれ変わりが邪神を滅ぼすまでは、もう……」
「ステラ殿! 勇者様の生まれ変わりがいれば邪神を倒せるのですか!」
「逆に聞きたいんですが、この話も知らないのですか? ……かつて邪神を討伐寸前まで追い詰めた勇者様の生まれ変わりを見つけることができたら、私の中で弱体化している邪神を滅ぼすことができるはずです……勇者とは私同様神の加護を受けた人間ですから……」
「ですが、この二千年一度も現れていません……この先いつ現れるか……」
「わかりました! では私が探してまいります! 今回はどれ程時間がかかるかわかりませんが、しばらくお待ちください!」
「は? なにを言っているのですか! 各国が血眼になって尚見つからないのに……」
「ははは、そんな些細なこと知りませんな! 必ずや見つけて参ります! ……ちなみに私と言う可能性は?」
「残念ながら違いますね……」
「これで一つ候補が削れましたな! 順調です! 順調な滑り出しです!」
「では行ってまいります!」
「ちょっと! どうやって見つけるつもりですか!」
「?」
「……この水晶を触ってもらい、金色の光がでれば神の祝福を受けている証拠です。以前ケラーバさんも触ったでしょ?」
「忘れてしまいしたな! ありがとうございます! ではまた!」
「いって……いってらっしゃい……」
「はい! 行ってきます! ステラ殿そのように寂しそうな顔をせずとも良いですよ。私は必ずやステラ殿にまた会いに来ますから! もちろん、勇者様の生まれ変わりを見つけてです! それまで、しばらくのお別れです! では、愛しいステラ殿お元気で!」
「……お気をつけて」
――
彼は、旅立ち二十年経ってしまった……
私は一年で待つことをやめてしまった。それ以上彼を待ってしまったら、私はきっと……彼を……
私はまた、自らに魔法を掛け眠りにつき、各国の王族が報告に来るときだけ起きるという生活を続けていた。
……もう辛い……もう寂しい……もう一人は嫌だ……誰か……
――
「……ス……ス……テ……ス……ステ」
「ステラ殿!」
「え? え! ……? もしかしてケラーバさん?」
「その通りでございます! 美しき寝顔をいつまでも眺めていたかったですが、なにやら苦しんでおられたので起こさせてもらいました」
「……」
「世界中を探し回っており帰ってくるのが遅くなってしまい申し訳ございません。すっかり年を取ってしまっていつの間にか四十を過ぎておりました。ですがどうです? 渋みが増していい感じではないですか?」
「なにを言っているんですか、本当に……あなたって人は……」
「ですが、ちゃんと見つけて参りました! このビロード少年こそが神の祝福を受けた人物であります! どうです、この金色の光は!」
「こ、こんにちは。聖女ステラ様」
「う、うそ、本当に、本当に見つけて……」
「ステラ殿に約束したではないですか? 好きな女性に噓などつきません」
「ありがとう……ありがとう……あり」
『ステラ! 貴様! 遂にこやつに心を奪われたな! その体を貰うぞ! ……そしてこの忌まわしい世界を滅ぼしてくれる!』
「ぐっ!」「ステラ殿!」
「ビロード君! 私を殺してちょうだい! もう限界です! 今すぐ早く!」
「ステラ殿なぜです! なぜ邪神だけでなくステラ殿も一緒に!」
「もう、もう私と邪神は魂の一部が混ざり合っているのです……ただの人間が私を殺せば邪神の力が暴走し世界を滅ぼしてしまうでしょうが、神の祝福を受けたビロード君が私を殺せば邪神も一緒に滅する事ができます……」
「ですから! 早く!」
「……」
「ケラーバさん! 僕は、僕はどうすれば?!」
「そんなこと決まっている! 別の方法を探すのだ!」
「は? ふざけないでください! 私はもう限界です! 世界を守るためには私を殺す以外もう方法なんて……」
「ふざけているのはあなただ! ……あなたは今まで二千年も世界を一人で守って来たのでしょう? そんなあなたがなぜこれ以上犠牲にならなければいけないのです? なぜ、当たり前の幸せを求めてはいけないのです? あなたが守って来た世界は美しく素晴らしいものです。なぜそれを守ったあなたが、それを感じる事ができないのですか! 私はあなたに幸せになって欲しいのです……例え、恋する相手が私でなくても……あなたには幸せになって……」
「ケラーバさん……ありがとう……」
『ステラ! こいつの事で心がみたされているな! 貴様もか……貴様も……どうせ誰も……』
『……滅ぼしてやる! こんな世界滅ぼしてやる!』
「ぐっ……ケラーバさんありがとう! あなたのその気持ちだけで私はこの世界を守ってきて良かったと思えます! ありがとう! ……ありがとう! 私に恋を……人を愛する気持ちを教えてくれてありがとう!」
「ビロード君! 私ごと邪神を殺してください! もはや邪神と私は一心同体。それ以外に方法などないのです!」
「そんな……ステラ様」
「え? 一心同体? ステラ殿と邪神が?」
「なにを惚けているのですか? 私はもう邪神と一体化していると言っても過言ではありません。早く私ごと!」
「うおー! なんたることだ! ステラ殿が邪神と一体化していたとは……なぜそんな……では私は今まで邪神を……」
「……そうですよね。ごめんなさい……そんな汚らわしい事を……邪神である私なんて……」
「すまぬ! ステラ殿の中にいる邪神殿よ今まですまなかった!」
「「は?」」
『は?』
「私はステラ殿の全てを愛すると言っておきながら、ステラ殿の中にいる邪神殿を無視しておった。ましてや滅ぼそうなどと……すまぬ! あれだけ大見得斬って全てを愛すると言ったくせに……」
「んー?」
『ん?』
「邪神殿がステラ殿と一心同体というなら、邪神殿の事も愛させてくれ!」
「なにをふざけているのですか!」
「私は至って真面目です! 邪神殿! 一度私の前にでてきてはくれぬか?」
『……』
「邪神殿!」
『うるさい! ……貴様、何を言っている』
「おお、この禍々しい力……邪神殿か! 何もかにもない! 先ほど言った通りだ! 今迄のこと謝罪させて欲しい! すまん! そして、邪神殿はすでにステラ殿と一心同体とのこと、即ちそなたは邪神であってステラ殿」
『まぁもはや混ざりあってはいるが……そこまでは……』
「私はステラ殿の全てを愛している! だから! 邪神殿も愛している!」
『ふざけるな人間など……』
「そのような事をいいつつ邪神殿も、ステラ殿に封印とはいえ受け入れられた事が嬉しかったのではないですか? それにステラ殿のなかは居心地が良かったのではないですか?」
『な、なにを!』
「ただ、人間を滅ぼしたいだけならステラ殿を誰かに殺させ暴走してしまえば良かった。恋をさせなかったのも、誰かにステラ殿の関心を奪われたくなったのではないですか?」
『うる……うるさい!』
「本当に人間が嫌いなら、そんな忠告する必要などなかったのです」
『だまれ! だまれ! こんな誰も私を必要としない世界など滅ぼしてくれる!』
「それはいかん! 邪神殿がなぜそこまで世界を憎むのか、それはわかぬ。わからぬが世界は美しい、世界は素晴らしいのだ! それがわかってくれれば……お! そうだ! 世界を一緒に旅しようではないか! そうすればその気持ちも変わるはずだ! ……いや絶対に変わるぞ!」
「先程邪神殿は自分を必要としない世界など! と申したが私はすでに邪神殿が必要になったぞ! ほれ! 状況はいつでもすぐにでも変わるのだ! 邪神殿も変われるのだ!」
『ぐっ、話にならぬ奴め』
「恋は盲目だからの?」
「ケラーバさん……なんか違う気がします……」
「邪神殿、名前は何というのですかな? これから旅する伴侶の名前を知らないなど失礼すぎますからな」
『……一緒に旅するなどまた決めておらんわ』
「よいではないか! 世界は広く、胸踊ることで溢れておるぞ! 世界中を二十年も旅した私が言うのだ間違いない!」
『しつこい奴……』
「あぁ私はしつこいぞ? 観念して一緒に旅をしようではないか? まぁすっかりオッサンになってしまったから長い時間は一緒にはおれんかもしれんがな? ……さぁ! 名前を教えてくれ!」
『……ラス。ラスだ……』
「ラス殿か……美しい名前です。ステラ殿と似てますな? 名前を教えてくれたということは、一緒に旅にでてくれるのですか?」
『……本当にお前以外にも私を必要とするものが世界にはいるのか?』
「間違いなくいる! 絶対だ!」
『そうか……それが聞けただけで充分だ……』
「ラス殿が一緒に来てくれるならこの聖域にこだわる必要はなくなりましたな?」
『そうだな……だが、私は貴様のようなおっさんは好かん……』
「お! これは手厳しい、ですが年齢ばかりはどうしようもございません、すみませんが……」
「え! ケラーバさん! 若返ってますよ! 僕と同じ位の年齢になってます!」
「おおお! これは! ラス殿のお力ですか?」
『……ふん、少しはマシになっただろう……だが、貴様はあまりタイプではない……ステラは貴様を好いているようだが……』
「こらー! なに勝手に話進めてんのよ! しかもなに勝手に告白……」
「ステラ殿、ついに私の気持ちに答えてくれるのですか?」
「……」
「……そりゃそうでしょ! 好きになっちゃいましたよ! ここまでされて……自分の人生を懸けて……本当に全部全部私のために、ここまでされて好きにならないわけないじゃない!」
「おお」
「世界も救っちゃうし……」
「世界を?」
「だってもうケラーバさんを好きになってるのに……心がケラーバさんで満たされているのに……ラスの力は暴走しない……」
『……』
「あなたが本当に世界を救ったのよ」
「……ステラ殿。……今まで世界を守ってくれてありがとう。あなたが守ってくれていたから私は生まれ、こうして愛する人を見つける事ができ、そのついでに世界を守れました」
「ついでにって……」
「ははは、愛の前には世界など小さい小さい」
「……」
「ささ! ラス殿、愛の前には世界は小さいですが、旅となると世界は大きいです、時間が勿体ない! さっそく行きましょう! 旅を通じてラス殿にも愛していただけるよう頑張ります!」
「ケラーバさん? あなたさっそく浮気するつもり?」
「え! いやこれは……ラス殿がステラ殿と一心同体ということなので……その……なんというか……」
『心配せずともよい、私はもう消える。私からでていけばなんの問題もない。……もちろんステラが封印を解いてくれたらの話だがな……』
「……一つ教えて、あなたが出て行ったら私はもう普通に年を取り、ケラーバさんと一緒に老いる事ができる?」
『ああ』
「ならいいわ……」
『……私を信じるのか?』
「何年一緒にいたとおもっているのよ? あなたの心境の変化くらいわかるわ……」
『ふん、生意気な……』
「なによ、寂しがり屋さんが……もっと早く気付いてあげれたら……」
『よい……これで良いのだ……ではさらば……』
「ちょっとまったぁ! ラス殿どこに行くというのだ! 一緒に旅する約束はどうなったのだ! 消えることは許さぬ! 例えステラ殿と別れ、別々になったとしても、一度は愛した人だこれからは友として旅にでようではないか! ステラ殿もそれなら良いでしょう?」
「……あなたは……まったく……ラスどうするの? 邪神の力があれば人化なんて簡単でしょ? ……一緒に行きましょう?」
『……そこまで言うならしかたない……付き合ってやるか……』
「ははは! では決まりだ! ビロードも共に行こうではないか! もしかしたらラス殿と気が合うかもしれぬぞ! 勇者と元邪神、案外良い組み合わせかもしれぬ。……だがビロードよ、ステラ殿はいかんぞ? 私の恋人だからな?」
「はいはい、ケラーバさんにベタ惚れしてるステラ様を口説こうなんて思いませんよ……」
「べ、ベタ惚れって! 私がいつ……」
「ステラ殿そこまで私を!」
「うるさーい! ラス! この二人を倒して! あなたなら楽勝でしょ!」
「夫婦喧嘩は犬も食わぬ……」
「……全員そこに並びなさい! 正座! 正座!」
「ステラ殿……愛しております」
「……少しは話を聞きなさい……」
「……恋は盲目」
「……」
恋しちゃいけない私を口説き落としたこの男はなんなんですか?
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひ感想、ブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただけると自分でもビックリするくらいモチベーションが上がります!
他にも短編書いてます。是非御一読お願いします!
来週また一本あげたいと思います。