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王国最強と聖女の危機



 ミシェルは、相変わらず、魔獣との戦いに参加していた。

 騎士団長ルシェロは、今度こそミシェルを守り抜くと、精鋭を周囲に配置している。

 そして、大神官サイラスは……。


「あの、大神官様自らが、こんな場所に」

「はぁ。あなたは、ご自分の立場を理解されておられますか? 聖女様は、大神官など足元にも及ばない尊い御方なのですよ?」

「…………え?」

「はぁ。だから、大人しく守られていなさい」


 そう言ったサイラスは、何のことなしに、魔獣に触れる。

 それだけで、魔獣は倒れて動かなくなった。


(もしかすると、王国最強は、サイラス様なのでは?)


 破壊の恩恵を持った人間は、長い王国の歴史の中には、何人か登場する。

 時には、暗黒の魔王として、時には救国の英雄として。


 なぜ、サイラスは破壊の恩恵があまり関係ない、大神官をしているのだろうか。


 それについては、先代聖女が深く関係しているのだが、ミシェルはまだその事実を知らない。


「おお! すごいな! サイラスに負けるのは、悔しいな」


 続いて、ルシェロが、勢いよく魔獣を切り裂いた。

 周囲に赤いしぶきが舞い散る。

 派手な戦い方だ。


 サイラスの破壊の恩恵は、あまりに強い。だが、恩恵は魔法の力だ。

 だから、ルシェロには効かない。そして、大神官として精霊王に与えられた力は、精霊の力で魔法とは違うが、癒しの力がほとんどで、戦いには向かない。


(やっぱり、最強なのはルシェロ騎士団長?)


 少しだけ意識を二人に持っていかれていたミシェルは、深呼吸して結界を張り直す。

 それだけで、王都全部が包み込まれた。それを見たルシェロが、口笛を吹く。


「傷つけられる気が、しないのに。ミシェル様がしょっちゅう危機に陥るのはなんでだ?」

「…………人を疑うことを知らないからでしょうね」

「違いない!」


 今回の討伐戦は、サイラスの参加もあって、危なげなく終わるかに見えた。

 けれど、ミシェルが、急に耳を押さえてしゃがみ込む。


「ど、どうした?!」

「大丈夫ですか?」


 しばらく、うつむいて無言のままでいたミシェルが、泣きそうな顔を上げる。


「なんでも……。なんでもないです」

「なんでもないって、顔じゃない」


 ブンブンと首を振るばかりのミシェルの姿に、もう少し問い詰めなければと、ルシェロとサイラスは思う。しかし、急に大量の魔獣が沸き上がり、続けようとした言葉を遮る。


 討伐戦は、誰一人欠けることなく、終了した。

 けれど、全てが終わったときに、ミシェルは二人の前から姿を消していた。

 

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