表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/23

第九話 紫電一閃


初級火魔法ファイア


 魔法を唱えて火の玉を飛ばす。

 真っ直ぐに直進したそれは、しかし重なり合った札の盾に防がれた。

 事前情報の通り、霧彦に魔法や飛び道具の類いは通じない。

 符術の効果で無効化レジストされる。

 でも、その際、霧彦は必ず防御の姿勢を取り、その場から動かない。

 消費の少ない初級魔法を打ち続ければ、霧彦を縫い付けられる。


「今のうちに」


 魔法を連続して放ちつつ、ショートカット機能でエリクシールを呼び出す。

 瓶の蓋を歯でこじ開け、一気に飲み干した。


「ふぃー……これで全快」


 HPゲージがすべて満たされ、危険域を脱する。

 魔法を撃つのを止めて剣を構えると、符術の盾が散った。

 同時に扇子のように広げた札が燃え上がり、こちらへと投擲される。

 魔法のお返しとばかりに飛来する火の札を剣で撃墜すると、その隙に霧彦は深く腰を下ろしていた。


「またかっ」


 身構え、紫電の稲光を目にした瞬間、俺はその場から跳躍した。

 飛び上がり、空中に逃れ、直後に真下を紫電が通る。


「よっし」


 紫電一閃を躱した。

 そう思ったのも束の間、霧彦は切り返す。

 踏み締めた足でブレーキを掛け、反転して跳び上がる。

 紫電は突如として折れ曲がり、空中へと駆け上がった。


「マジかよッ!」


 瞬く間に目の前へと陣取られ、紫電を帯びた一刀を打ち込まれる。

 来るとわかっていたから防御は間に合ったが、そのまま地面へと叩き落とされた。


「ぐっ、野郎っ」


 背中の衝撃の余韻が抜けきらないうちに、見上げた空に鈍色が光る。

 即座にその場から転がると、刀の鋒が地面を貫いた。


「逃さぬ」


 引き抜かれた鋒が再び俺を狙う。

 何度も突き出され、それを回転して躱し、命を繋ぐ。

 そして。


中級風魔法ストーム


 魔法を詠唱して自らを舞い上げ、窮地から緊急離脱した。

 空中で姿勢を制御しつつ、地面に降り立つ。

 顔を上げると符術の盾を解いた霧彦と目が合った。


「このままじゃダメだな」


 紫電一閃を攻略しないとどうにもならない。

 猛スピードで移動して一撃を見舞う。

 なら、攻略法は定番なものがいい。


「やってみるか……強化魔法ライジング


 魔法で身体能力を強化し、霧彦の出方を待つ。

 この魔法の用途は移動時間の短縮だけど、戦闘にも流用できる。

 ほかの冒険者は現実では使えないから戦闘に用いないけど、俺は違う。

 これで紫電一閃を見切る。


「参る」


 刀が鞘に収まり、深く腰が落ちる。

 鞘に紫電が迸り、霧彦は構えを取った。


「紫電一閃」


 柄に手を掛け、霧彦は紫電と化す。

 真正面からの真っ向勝負。

 身に迫る紫電の閃きを目に写し、剣を握る手に力を込める。

 決着は一瞬。

 鞘から弾き出された一刀が風を斬って馳せる。

 紫の残光を引くその一撃を、この両目で捉えて見切った。

 紙一重で躱し、返しの一撃を霧彦へと見舞う。

 剣先で地面を浅く削りながら振り上げ、鎧ごと胴体に太刀傷を刻む。

 制したのは俺だ。


「ぐぅ……うぅ」


 カウンターで威力が増し、クリティカルヒットでダメージが増えた。

 ダンジョンをクリアしてレベルが上がったのも効いているだろう。

 俺が刻んだ一撃は霧彦のHPゲージを一気にゼロにした。


「見事」


 後退った霧彦は片膝をつき、地面に刀を突き立てる。

 そして賞賛の言葉と共に霧のように掻き消えた。

 後には刀だけが残っている。


「ふぃー……どうにか倒せたな。ははっ」


 勝利の余韻に浸っていたいが、今はそれより目の前の刀だ。

 柄に手をやり、引き抜く。

 刀身に微かに紫電を帯びた刀、その銘を鳴神なるかみ

 これを装備すると剣技、紫電一閃が使えるようになる。


「ふふん。早速、試してみるか」


 獲物を探して周囲を見渡すと、遠くにモンスターが見えた。

 それに狙いを定めて息を吐く。

 腰を深く落として、鳴神の入手に伴い現れた鞘に刀身を仕舞う。


「紫電一閃」


 瞬間、猛スピードで体が動き、俺は紫電と一体になった。

よろしければブックマークと評価をしてもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ