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第六話 ジンクス


「あぁ、くそっ、いってぇ」


 三人のうち一人の目が覚める。


「おい、起きろ。おい」


 残りの二人も意識が覚醒し、周囲を見渡した。

 そして俺を見つける。


「よう、目が覚めたか?」

「お前ッ」

「待った」


 掴みかかろうとするのを制止する。


「時間がないから手短に言う。お前たちが眠っていたのはだいたい二十分くらいだ」

「それがどうした」

「もうすぐ制限時間がくるってこと」


 そう言うと現状を理解したようで青ざめる。


「寝てる間にお前たちの欠片からいくつか拝借させてもらった。俺はこれで完成」


 最後の欠片と、ほぼ完成した魔石を見せる。


「残りはそこに散らばってる。この二十分で何体も魔物を倒したから、集めれば三人分くらい完成するかもな」


 意識のない三人を守るのは癪だったけど、死なれても困る。


「チャンスはやった。時間がない、俺はもう行く」


 奴らに背を向けて歩き出し、最後の欠片で魔石を完成させた。

 するとすべてが繋がった魔法陣がその機能を発揮し、淡い光を放ち始める。

 転移まであと数秒。


「どけッ! そいつは俺のだッ! 手を離せッ!」

「ふざけろ! だいたいお前が喧嘩売らなきゃこんなことにはッ」

「はぁ!? お前だって乗り気だったろ! 俺のせいにすんじゃねぇ!」


 あの様子だと誰も合格できそうにない。


「ジンクスは本当だったな」


 その言葉を最後にダンジョンの外へと転送された。


§


 転送が無事に完了するとどこまでも高い空が見えた。

 視線を下げるとすでに合格した人たちも見える。


「そういや、合流できたのか?」


 その中に山谷の姿を探していると、軽く肩を叩かれる。

 振り返ると嬉しそうな顔をした山谷がいた。


「よかった! ちゃんと合格できたんだね!」

「あぁ、ちょっとギリギリだったけど」

「ホントだよ。私までそわそわしちゃった」


 お互いに笑い合っていると、山谷の後ろに二人組を見る。

 こちらを遠巻きに見ているあの女子二人が、はぐれてしまった山谷の仲間なんだろう。


「合流できたみたいでよかった」

「うん、彩原くんのお陰。今度、なにかお礼するね」

「いや、いいよ。そんなの、気にしなくて」

「ダメだよ。こういうことはきちんとして置かなくちゃ。すっきりしないよ?」

「あぁー、それを言われると弱いな」

「ふふっ、ちゃんと憶えてるんだからね」


 まさか、自分の言葉がこんな風に帰ってくるとは。

 そんな風にしていると、試験終了の合図が鳴る。

 結局、俺を最後にダンジョンから出てくる者はいなかった。

 そして試験官が再び空を飛ぶ。


「現時刻を以て試験を終了とする。この場にいるすべての者は仮免を卒業だ。たった今より正規の冒険者として扱われることになる。君たちの活躍を期待している。以上」


 こうして俺たちは冒険者になった。


「約束は守れたな」

「うん。私たち冒険者だよ!」

「冒険者だ!」


 俺たちはハイタッチを交わして喜びを分かち合った。

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