第四話 折紙
「折紙」
複数の正方形の紙が瞬く間に折り曲げられ、いくつかの手裏剣となる。
宙に浮かぶそれらは回転し、風を斬って魔物へと向かい、切り刻んだ。
「へぇー、面白いスキルだな」
「でしょ? 大きくも小さくも出来るんだよ。ほら」
戻ってきた手裏剣の一つで実践してくれた。
ただの折紙だと思って侮ってはいけないみたいだ。
「でも彩原くんのスキルのほうが面白いよ。カナンの魔法を再現できるなんて」
「あぁ、長らく使い方がわからなかったけど、今朝ようやくな」
「今朝? すっごいギリギリだね」
そう話していると亡骸が魔石を残して掻き消える。
「よっと。あー、これ被ったな」
魔石の欠片に走る線がまったく同じものが出てきた。
「これ持ってる?」
被った欠片を山谷に差し出す。
「どれ? あ、持ってない」
「俺は被ってるから、いいよ」
「いいの? ありがとう。三人分集めなきゃだから助かる」
「いいってこと。どうせ使い道ないし」
「あ、ちょっと待ってね」
雑嚢鞄を探る山谷は欠片の束を取り出した。
「えっとね。ここにあるの、もう三つ以上あるからどれでもどうぞ」
「助かる。なんだか助かってばかりだな、俺たち」
「ふふ、そうだね」
欠片を受け取り、持っていないものを探して受け取った。
お陰で完成まであと少しだ。
「残り時間もあと二十分強か。はやく友達を見つけないとだな」
「うん。二人も欠片を集めてるから、合流すれば完成するはずなんだけど」
二人で道の先を見つめ、入り組んだ構造に焦りを覚える。
ダンジョンとだけあって迷う。
「そう言えば最初はどうやって合流したんだ? ランダムだっただろ?」
「あぁ、それはこれのお陰だよ」
雑嚢鞄から取り出されたのは魔導具の鈴だった。
銀色の小さな鈴が二つついていて、両方に亀裂が走っている。
「二人も同じ鈴を持ってて近づくと共鳴してくれるの」
「それでか。でも、今は」
「うん、壊れちゃった」
軽く揺らしてみるも音すらならないようだ。
それで合流もままならないか。
「ちょっと見せてくれるか?」
「うん、はい」
手渡された鈴をよく見てみる。
亀裂は走っているが、深刻なものではなさそうだ。
このくらいの破損なら。
「試してみるか」
アイテムボックスを開き、アイテム一覧をスクロールする。
「んん?」
山谷の不思議そうな視線を感じていると目当てのアイテムを見つけた。
指先で触れて取り出すのは鉄屑の光粉というアイテム。
武器の耐久値を回復するためのものだ。
袋に入ったそれを一摘まみして鈴に掛けると、輝く粉が亀裂を埋めるように修復した。
「これで大丈夫なはず」
軽く揺らしてみると、今度は綺麗な音色が響いた。
「わぁ! ありがとう。凄いね、彩原くん」
「凄いのはスキルとカナンだけどな」
悪い気はしない。
「これで合流できる。ほら、行こう」
「うん。二人と合流したら余った欠片を彩原くんに上げるね」
「そりゃありがたい」
鈴の音を頼りにダンジョンを進む。
道中に現れる魔物も二人で倒し、次第に音は大きくなっていった。
そんな折り、運の悪いことが起こる。
「見つけたぞ」
選んだ通路の先で、待ち構えていたかのようにそいつらは現れた。
にやついた表情の三人組。
今朝、ちょっかいを掛けてきた連中だ。
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