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第三話 ダンジョン


「あ、おーい、穂人」

「よう、育人」


 試験が行われるダンジョンへと到着する。


「遅かったんじゃないか? あとすこしで始まるぞ」

「あぁ、ちょっと……ギリギリまで粘りたくてさ」

「まぁ、たしかにな」


 適当にごまかしていると今回の試験の試験官がスキルで飛び上がる。


「全員、揃っているな。これより試験を開始する。知っての通り、仮免の君たちが正式な冒険者になれるか否かが決まる大事な試験だ。心して掛かるように」


 滞空する試験官を見ていると、不意に視線を感じる。

 そちらに目をやると、あの三人組がこちらを睨んでいた。

 迷信だなんだって言ってもジンクスは気になるらしい。

 ダンジョンで会わないことを祈ろう。。


「このダンジョンは内部に入ると同時にランダムな位置へと転送され、出口にはたどり着けなくなる。脱出手段は一つ、魔物を狩り魔石の欠片を集めること。魔石が完成すればそれがダンジョンの外へと転移させてくれるはずだ」


 視線を試験官へと戻す。


「制限時間は一時間だ。では、覚悟が出来た者から中へ」


 そう言って試験官は地上に降り、仮免冒険者たちは次々にダンジョンへと入っていく。


「落ちるなよ」

「そっちこそ」


 俺と育人もダンジョンへと足を踏み入れた。


「っと」


 瞬間、別の場所に転送される。

 凸凹とした岩肌に覆われた洞窟のような光景が広がり、天井では鉱石が淡い光を放っていた。

 ダンジョンの内部であることに間違いはなさそうだ。

「さて、やりますか」

 まだカナンにログインしているような感覚になりながらダンジョンを突き進んだ。


§


中級火魔法フレイム


 左手に灯した火炎を放ち、前方の魔物を焼き焦がす。

 焼死体が転がり、それを飛び越えて更に複数体が迫る。

 牙を剥くそれらになじみの剣で立ち向かい、すれ違い様にすべてを断つ。

 背後で亡骸が倒れる中、刃についた血を払い一息をつく。


「ふぃー……なんとか戦えてるな」


 現実と仮想で感覚にズレはあるものの、すでに修正されつつある。

 もう何度か魔物を倒していれば直に馴染むはずだ。


「えーっと、これが魔石の欠片か」


 魔物の死体はカナンのように消滅し、後には欠片が残されていた。

 それを拾い上げると曲線が描かれているのに気がつく。

 ほかのも集めて欠片同士を合わせてみると線が繋がった。

 部分的にしか構造はわからないが、恐らくは魔法陣の模様だろう。

 これが完成すれば魔法陣が起動してダンジョンの外に出られる。


「まだまだ欠片が必要だな」


 とりあえず魔石の欠片をアイテムボックスにしまう。

 現実の物体を入れて大丈夫かどうかはすでに確認済み。

 ほかの魔法やら何やらを試すついでで、二時間があっという間だった。


「しっかし、誰にも会わな――」

「だ、誰かッ!」

「くもないか」


 誰かの声がした。

 それも切羽詰まったような声音だ。


「無視するのもな」


 目覚めが悪い。


強化魔法ライジング


 瞬間、地面を蹴って駆け抜ける。

 この魔法の効果は移動速度のアップ。

 閃光のように通路を進み、声の元へと駆けつけた。


「いた」


 一人の少女が魔物の群れに追われている。

 その様子を視界に納め、前方から彼女と擦れ違う。


「――っ」


 一瞬、目と目が合い、そのまま魔物の群れへと突っ込んだ。

 猛スピードで剣を振るえば、魔物はあっという間に死にいたる。

 それでも囲まれれば危ないし、何度も剣を振らなければならない。

 だから、群れの中心まで斬り進むと、その場で範囲魔法を唱える。


中級範囲魔法アローレイン


 頭上から振る矢の雨に射られ、魔物の群れは壊滅した。

 亡骸が次々に横たわり、魔石となって掻き消える。

 弱い魔物ばかりで助かった。

 助けに入って苦戦してたら格好悪いしな。


「わぁ。あ、ありがとう、助けてくれて」

「どう致しまして」


 そう言いつつ振り返る。


「あぁ! もしかして彩原くん?」

「あー、初対面、だよな?」

「うん、そう。でも、割と有名だよ。コピー……」


 そこまで言って、しまったという顔をする。


「コピー機?」

「ご、ごめんね。そういうつもりじゃなくて、えっと、その」

「悪気はないってわかってるから平気だ。それにコピー機はもう卒業したからな」

「卒業? あ、そう言えば」


 先ほどの戦闘を見て、気づいたらしい。


「噂って当てにならないんだね」

「そういうこと。ところで一人なのか?」

「うん、今はね。友達と合流できたから三人で一緒に行動してたんだけど、はぐれちゃって」

「そっか。大変だな」


 ここでさよならバイバイも出来るけど、助けるなら最後まで、だ。


「なら、手伝うよ。その友達捜し」

「助かる、けど。いいの?」

「あぁ、乗りかかった船だし。そのほうがスッキリするから」

「じゃあ、お願いしようかな。よろしくね、彩原くん」

「よろしく……えーっと」

「あぁ、そうだね」


 改めて自己紹介される。


「私、山谷綴里やまたにつづりだよ」

「じゃあ改めて。よろしく、山谷」

「うん、よろしくね」


 握手を交わし、一時的にだけど仲間が増えた。

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