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第十九話 遺跡


「そう言えばさー。結局、ハートは見れられなかったな」

「そうですね。何度も確認しましたが、見つけられませんでした」


 祝勝会にて、気になる言葉が聞こえてくる。


「ハート?」


 メロンソーダを机上において聞く。


「そうだよ。たしか都市伝説みたいなものだったよね?」

「そうそう。ミラーダンジョンの鏡に映ると、たまにハートが出てくるんだって」

「なんで?」

「噂で聞く限りでは、鏡の道化師が気に入ったプレイヤーにアピールしているのだとか。公式にそういった設定があるわけではないですけど」

「なるほど。でも、噂通りなら俺たちはお眼鏡に適わなかったってことか」

「なんかそう聞くとムカついてくるな。私も優子もかわいいのに」


 天音は不遜顔で鈴野の肩に手を回した。


「自分で言うのはどうなんですか?」

「だって可愛いだろ? な?」

「あぁ、うん。そうだね」

「なんで歯切れが悪いんだよ、双一ぃ!」


 そうしてまた天音を中心とした騒ぎが起こる。

 手に取ったメロンソーダのストローを咥えてそれを眺めつつ、ふと考える。


「ハートか」


 最近は都市伝説やら迷信やらジンクスに縁がある。

 もしかしたらこれも、本当かもな。

 そんなことを考えつつ、メロンソーダを飲み干した。


§


 カナンでミラーミラージュの魔法を修得した、翌日。

 今日は綴里たちとダンジョンに挑戦する日だ。

 初心者御用達のダンジョンはこれで最後、これを終えればチュートリアルは終了になる。

 意気込みは上々、自然と足も速くなった。


「ん? あ、よう。志鶴」


 ダンジョンへと向かう道すがら、志鶴の後ろ姿をみた。


「穂人」

「今日で初心者卒業だな」

「えぇ、無事にクリアできればの話だけど」

「自信ないか?」

「当然、あるわ」

「だと思った。今日のは足場がしっかりしてるしな」

「滑落することもないわね」

「嫌みで言ってるんじゃないからな、一応」

「わかってる」

「よかった」


 そんな会話をしつつ歩いているとダンジョンの前に到着する。

 すでに二人は待機しているようで、綴里と伊吹の姿も見えた。


「あー! 二人揃って来てる! やっぱりなんかあるんでしょ!」

「また、それ?」


 志鶴は呆れ気味だった。


「冗談。流石にしつこいもんね」


 それは伊吹もわかっているようで、どうやらこの前の続きにはならなそうだった。

 俺もほっとしている。


「私たちは準備ばっちりだよ、二人は? もう行ける?」

「私は大丈夫よ、綴里」

「俺も。じゃあ、行くか」

「レッツゴー! 初心者卒業だっ!」


 意気込みを新たにダンジョンへと足を踏み入れる。

 内部はこれぞダンジョンと言った風ないかにもな作りになっていた。

 石畳の通路に、一定間隔で配置された燭台、どこか遺跡を思わせる構造は、往年のゲームにありがちなダンジョンを彷彿とさせる。

 そしてこのダンジョンのクリア条件は、最奥に待つ魔物を討伐すること。

 ミラーダンジョンと同じ、ボス部屋形式だ。

 ただ最奥に到達するだけでいい断崖ダンジョンよりも、こちらのほうが難易度が高い。

 一つ目をクリアしているからと言って油断していると、足下を掬われることになる。


「慎重、慎重、慎重にー」

「なんだ? その歌」


 通路に響く、謎の歌。


「私のオリジナルソング!」

「即興で適当に歌っているだけよ。大層なものじゃないわ」

「オリジナルのソングだもーん」

「あはは、伊吹はいつもそうだよね」


 断崖のダンジョンと違って足場がしっかりとしているからか、みんなの雰囲気が明るい。

 ここなら志鶴のスキルも気にせず使えるだろうし、俺たちにとってはこちらのほうが難易度が低いかも知れないな。


「慎重、しんちょ……おっと」


 そんな風に考えていると、先頭を歩いていた伊吹が立ち止まる。

 警戒して通路の先に目をこらすと、仄暗い闇から獣の輪郭が現れた。

 燭台の明かりに照らされて、魔物の姿が明確になる。

 唸り声を上げ、鋭い目でこちらを睨み付けるそれは狼の魔物。

 その群れが通路の行く手を阻むように現れた。


「魔物か」


 腰の鳴神に手を掛ける。


「ちょっと待った」


 伊吹から待ったが掛かる。


「この前はあんまり活躍できなかったし、私に譲ってほしいな」

「そりゃ、もちろん良いけど」

「やった! じゃあ穂人くんに良いところ見せちゃおっかなー」


 前に躍り出た伊吹は、魔物の群れを見据えてスキルを発動する。


七変化メタモルフォーゼ


 伊吹の背に翼が生えた。

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