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第十八話 ドッペルゲンガー


「フフフフフフフフフフフフ」


 自分たちの分身が暴れる中、鏡の道化師もじっとしてはいない。

 鏡の破片が雨のように降り注ぎ、ドッペルゲンガーごと俺たちを襲う。


「ひぃー! どうすればいいんだー!」


 鏡の破片を躱し、ドッペルゲンガーの対処に追われる。

 俺はどうにか対処できているが、アシスト頼りの三人は苦戦気味。

 どうにか現状を打破しないとクリアは遠い。

 鏡の破片で消滅したドッペルゲンガーも、即座に補充されている。


「ダメージ覚悟で範囲魔法でも撃ちますか?」

「良い考えだけど、もっと安全な方法はないかな?」

「なんでもいいから、なんとかしてくれー!」


 三人が悩む中、俺はふと気になることが浮上する。

 このダンジョンの人数制限についてだ。


「たしかに一人じゃ、このギミックはなりたたない……」


 ドッペルゲンガーは味方がいてこそ真価を発揮する。

 一人ならただ敵が増えただけで大した脅威でもない。

 これが厄介なのは、味方と見分けがつかなくなるからで、そのための人数制限。

 でも、このダンジョンの人数制限は三人から五人で、二人でも挑めない。

 二人で挑まれるとギミックが成り立たなくなるからだ。


「そうか、わかった。みんな、自分のドッペルゲンガーだけ攻撃するんだ」

「え? あ、あぁ、わかった!」


 周囲を取り囲むドッペルゲンガーの中から、自分と同じ顔をした者だけを斬る。

 三人も俺と同じように自分のドッペルゲンガーだけを攻撃した。


「うわっ! 危ないっ!」


 そんな中、天音が剣崎からの攻撃を紙一重で躱す。


「おい! 話を聞いてたのか、双一! 攻撃していいのは自分のドッペル――あぁ、そういうことかぁ! お前、偽物だな!」


 常に自分のドッペルゲンガーだけを狙うようにルールを設ければそれでいい。

 そうしておけばルールを破った者がドッペルゲンガーということになる。

 このダンジョンが二人でも挑戦できないのは、この対策に気がつきやすくなるから。

 味方が多いほど混乱するし、冷静な判断力を失うから三人以上なんだ。


「なるほど」

「考えてみれば単純なことでしたね」


 剣崎が剣崎を切り捨て、天音が天音を貫き、鈴野が鈴野を打ち抜く。

 そうしてドッペルゲンガーは消滅し、同時に鏡の道化師のHPも減少する。


「ドッペルゲンガーを倒しきれば勝ちだ!」

「よーし! そういうことならどんどんこーい!」


 攻略法がわかれば、あとは楽勝だ。

 ひたすら自分のドッペルゲンガーを倒し、鏡の道化師のHPを削る。


「これで最後だ!」


 攻撃するたびに総数は減り、ついに最後の一体に剣が振り下ろされた。

 剣崎のドッペルゲンガーは断ち切られて消滅し、HPゲージはゼロになる。


「アハハハハハハハハハハハ」


 最後の最後に大笑いして、鏡の道化師は透明になって消えた。

 これでミラーダンジョンクリアだ。


「やったー! 倒した、倒した!」


 天音が鈴野の手を取ってはしゃぐ。


「はいはい、倒しました倒しました」

「大変だったけど、どうにかなったね」


 その様子を一歩離れた所から眺めていると、頭上にアイテムが現れる。

 ダンジョンクリアの報酬、特殊な魔法が込められた欠片シャードだ。

 手元まで降りてきたそれを入手して、早速力を込めて握り潰す。

 そうすると中に封じ込まれていた魔法が体に取り込まれ、新たな魔法を修得する。


「鏡魔法、ミラーミラージュか」


 新たな魔法の修得と共に、足下に魔法陣が現れる。

 ボス部屋のすべてに広がるそれに転移されて、俺たちはダンジョンの外へと帰還した。


「よっと」


 転移を終えて、地に足を付ける。

 達成感と新たな魔法を手に入れたことで、気分はすごくいい。


「彩原くん。今回はありがとう。お陰で楽しかったよ」

「どう致しまして。機会があればまた一緒に戦おう」

「あぁ、その時はよろしくね」


 剣崎と握手を交わす。

 一期一会だ、別れはあっさりなほうがいい。


「あれ、もうお別れ? なんか予定とかあるのか?」

「いや、特にないけど」

「だったらこれから祝勝会しよう! このまま終わりなんて寂しいし!」

「それはありがたいけど、いいのか?」

「私も朱音に賛成です。あなたがよければですが」

「だね。どう?」

「じゃあ、もうすこし仲間でいさせてもらおうかな」

「よし、決まり! そうと決まればカナンに行こう! 良い店、知ってるんだー」


 あっさりなほうがいいと思ったけど、これはこれでアリだ。

 明日は綴里たちとダンジョンに挑戦だし、今日は羽根を延ばすとしよう。

 そう思いつつ、俺たちは揃ってカナンの街へとワープした。

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