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Chapter1-7

抜き打ちを何とかかわし抜いた後のことだ。


「家中への披露は明日行う。遼太郎今日はゆっくり休め」

久遠が遼太郎に休むように明日に備えるよう促す。


「了解、けどもう結構眠ったからなぁ。少し外を散歩してきてもいいか?」


「構わんがもう夜だぞ?」


「あんまり遠くへは行かないようにするけど、ただ辺りを見て回りたいんだ」


遼太郎としては今、自分がどのような所にいるのか少しでも把握しておきたい気持ちであった。


「そうだな、ならちょっと待っていろ」


そう言うと久遠は部屋から出ていき、やがて黒塗りの大きめの盆を持ってきた。そこにはとある物が乗っていた。


「これを持っていくといい」


「これは………」

遼太郎は少し驚きながら久遠の持ってきたものを観察する。


「お前の持ち物ではないか?お前が現れた傍らに纏まって置かれていたのだ。見たところ見慣れない形をしているが刃物のようだが護身用か?とにかく外を歩くなら持っていけ。いくら我が治めている町でも夜は時折変なやからが出る。万が一ということがあるからな」


久遠から差し出されたものを遼太郎は受けとる。


それはかの有名なサバイバルシューティングゲームでお馴染みの、大型のサバイバルナイフにそっくりだった。しかもご丁寧に着脱しやすい保護カバーがついたショルダー式のホルスターとセットとなっている。


(これが俺の…?先程のコマンドといい、この時代には似つかわしくないサバイバルナイフ。いくら元いた世界で画面越しに見慣れた物だからって…)


遼太郎は少し考えたものの、物騒だから持っていけと言われては、それを持っていかざるを得なくなってしまった。


一応保護ケースからナイフを取り出して刀身を見てようとナイフを取り出したときだった。刀身のリーチ、形状は、なぜか初めて実物を見たとは思えないほど見慣れたような感覚に遼太郎は襲われた。


実際に構えてみれば、どうやって使うのかもなんとなく理解できるような気持ちにもなる。


(いくらゲームで馴染みあるからってこの感覚はどうなのよ)


遼太郎は回りに人がいることも忘れ1人で思考に耽ってしまう。


「ふふ、なんだか不思議な構えだな。草のクナイよりは大きいが刀ほど刀身が長いわけでもないようだ。そんなものそのように使うのか。やはりお前は面白い」


そんな遼太郎の様子を見ていた久遠が感心したような顔で見てくる。


「まぁ気を付けて行ってこい」

久遠が遼太郎を見送る。


「忠告ありがとう。じゃあ行ってくるよ」


久遠にそう返し、私服にショルダー式ホルスターを身につけた遼太郎は、外へ赴いていった。




ーーーーーーーーーーーーーー


遼太郎が出ていってからしばらくたった室内でのこと。


「やれやれ。落ち着かないやつだな」 


遼太郎を見送った久遠がそんなことをこぼす。


「殿、本気なのですか?」


壬月が遼太郎がいなくなったこともあり、再度久遠へと尋ねる。


「遼太郎のことなら決着したはずだぞ」

久遠は顔を引き締め、壬月に言う。


「それはそうですが…。やはりあやつは得体がしれません」


壬月の言葉に麦穂が添える。


「田楽狭間に突如雷鳴とともに現れた人の子。いったいなぜあの方はあの場に顕現したのでしょう」 


そんな二人に対して久遠はしたり顔で返す。

「そこだ。我が気になっているのはそこなのだ」


「というと?」

麦穂が思わず聞き返す。


「なぜあやつは我の前に現れたのか。我は神も仏も信じはしないがどうにも引っ掛かるのだ。縁があるのか、因となるのか……。しかし我々が切り開いた田楽狭間に現れたと言うことになんかしらの意味があるのかもしれん。まぁそんなあやつを他国に取られるくらいなら手元において管理した方がやり易かろう」


「なるほど。いざというときに、手元に入れば処分が容易ということですか。それならば賛同いたしましょう」


久遠の考えに壬月は若干主観が入った理解を示すが久遠は特に訂正はしない。


「しかし、あの方はいったい何者なのでしょうか」


結局はっきりしない遼太郎の正体に麦穂は疑問を口にする。


「それは追々わかってくるだろう。……それでは遼太郎しばらく我の屋敷に住まわすからな。よろしく頼むぞ」


久遠が誰とも言わずにそう言うと


「はいはい。全く、そういうことは予め相談してよね、もう。」


帰蝶が呆れた様子で言う。


「我も忙しかったから故な。すまぬ。それと奴が帰ってきたら風呂を馳走してやれ」


「はいはい、それも了解よ」


そう言って帰蝶は、準備のために部屋から出ていく。

残された三人から、麦穂がこんなことを言う。


「そう言えば、最近壱では怪事件が発生しておりますが、あの方は大丈夫でしょうか?」

麦穂が思い出したかのように言う。


「例の人肉を喰うと言われる鬼のことか。その後どうなっている?」


久遠の質問に壬月が返す。


「目明かしを使って調査しておりますが詳しいことは分かっておりません。しかも、その目明かしも次々と姿を消しておりまして……」


「殺された、ということか?」


久遠は思わず驚嘆の表情をする。


「恐らく…」


壬月はその言葉を肯定する。


「デアルカ。……麦穂。一応だが……」


「了解いたしました。それでは彼の人をお迎えに上がりましょう。壬月様もお願いできますか?」


「ああ、付き合おう」


「あら嬉しい。鬼柴田様が入れば百人力ですわね」


「抜かせ。お前との勝負は五分であろうに」


そう言って家老二人も部屋から出ていこうとする。


「それでは久遠様。行って参ります」


「うむ、我はもう休むゆえ遼太郎のことは頼む。明日の評定の間で会おう」


麦穂の挨拶に久遠が返す。そして壬月と麦穂は遼太郎の元へ向かっていった。





そこへいれ代わりのように帰蝶が戻ってくる。


「久遠。お風呂の準備出来たわよ」


「うむ、遼太郎が戻ってくるにはまだ時間があるか……。結菜、背中を流してはくれぬか?」


久遠が帰蝶に向けて言う。恐らくだが結菜とは帰蝶が親しき人に呼ばせる名だろう。


「ええそうね、忙しかったみたいだしそれくらいはしてあげるわ」


美少女二人が一緒に入浴をする。その場に遼太郎がいれば、さぞ下衆な妄想が捗ったであろう。


そんなこととはいざ知らず、遼太郎はこの世の敵と初めて遭遇する。それは二人が部屋を出ていってからほんの少し後のことで………。











※武器及び装備補足

・サバイバルナイフ:遼太郎が手に入れたものは、戦闘でも使えるほどの大型のタイプ(刃渡り40cmほど)


・ショルダー式ホルスター:遼太郎が手に入れたものは、背中にナイフやその他武器を取り付けられるタイプ。蓋付きのポケットも幾つか付属している。


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