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Chapter1-5

「では、我は城へ行くが後でお前の話を聞かせるのだぞ。いいな?」


「あいよー」

仕事のため城にいかなければならないと言う久遠を見送りした。


(なんだか嵐のような展開だったな)

一人残された部屋で体をほぐしていると、自分の体に違和感を感じる遼太郎。別段外見が変化したとかではないが何かいつもと違うと言った感覚が遼太郎に起こる。

(寝たきりで筋力が落ちたのかな?)

それとない理由で納得する遼太郎だった。


その後、庭を見ながら世界を移動したことに思いを馳せていると襖の向こうに人がやってくる気配に遼太郎が気がつく。


「あの、お客様。よろしいでしょうか?」

凛とした女性の声が襖の向こうからする。


「あ、はいどうぞ」


極力音をたてないようにしながらあげられた襖の向こうには、三つ指を立てた女性が頭を下げていた。


遼太郎はこれをみて、なんとなく三つ指を立て頭を下げ返してしまったり、ゆっくりとした動作で女性が料理を運んでくるその所作の綺麗さに思わず息を飲んでしまったりしてしまう。


「給仕を承ります。織田久遠信長が妻、帰蝶と申します。よしなに」


「あ、どうも及川遼太郎です。はじめまして。お世話になってます」


「いえ、久遠より言い遣ってます。それでは給仕を……」


「いや、ご飯は自分で食べられるから、お気遣いなく」


「ですが……」


そんな問答無用を続けていると遼太郎の腹から久遠のときよりも大きな腹の音が鳴ってしまう。それを聞いた帰蝶と呼ばれる女性は遼太郎の側にお盆を置いた。


「ではいただきます」


食事を始める遼太郎。そしてそれを端からじっと見つめる帰蝶。そんな時間が遼太郎の食事の間ずっと続く。


「…………」


「モグモグモグモグ」


「…………」


「モグモグモグモグ(やりにくいなぁ)」


そんな風に遼太郎が思っていると帰蝶から問いかけが来た。

「久遠の夫になるんですか?」


「え?ああ、そうですね。お互いの利害が一致していたので」


「……あなたに久遠の夫が務まるとは思えませんが」


「……………(こう言うタイプニガテなんだよなあ)」


ストレートな敵意のある物言いに遼太郎は下手に出ることなく無視を貫く。


「あなたに何がわかるんですか?気楽な気持ちで受けたならすぐに撤回してこの国から出ていって貰えませんか?」

帰蝶が続ける。


「……モグモグモグモグ」

遼太郎はそれでも反応しない。


「あの、わたしの話聞いてます?」

しびれを切らしたのか帰蝶が催促をする。


「あの、」

遼太郎が初めて発言した。


「何ですか?出ていくつもりになりました?」


「えっとー、ご飯のおかわり貰えますか?」


遼太郎の口から出された言葉はまさかのおかわりの催促。これには敵意剥き出しだった帰蝶も、

「え?あ、は、はい」

しどろもどろな返答になってしまう。


帰蝶は遼太郎からお椀を受け取りご飯をよそっていく。

(茶碗の受け取りかたといい、よそいかたといい所作一つ一つが丁寧なんだよな、てことは一時的な感情で物を言ってるわけでは無いってことか)


帰蝶からおかわりを受け取りさらに食事を進めていき、やがて全てを平らげる。そして遼太郎が言葉を発した。


「そのですね、俺は織田久遠さんと直々に話をして二人で約束事を取り決めたんです。ここにいくら久遠の妻であるあなたが入り込んでその約束を反故にすると言うのはちょっと違うと思うんですよ。だからその話は久遠が戻ってきてからしていただけますか?」


遼太郎は自分なりの正論を帰蝶にぶつけた。そんな正論を返された帰蝶は分が悪くなったと思ったのか

「かしこまりました。では後程またお話致します」

といってお盆を下げていった。


(ふ~、せっかくの食事なのに全然味がしなかった……)

正論を返してしたやったりなのかと思いきや、ある意味敗北していた遼太郎だった。


帰蝶がお盆を下げてから遼太郎は今後のことを考えていた。


(とにかく俺の最優先事項は元の世界に帰るってことでいいよな。このために今やるべきなのは……飯も食べて暇だし体を休めるか)


案外マイペースな遼太郎は先程まで自分が寝ていた布団に再度潜り込みのだった。










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