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Chapter1-4

「えっ?夫?」


遼太郎が聞き返す。


「そうだ。我の夫となれと提案したのだ、遼太郎」


久遠は今回こそはっきりと夫となれと言った。



(ここで地雷を踏むなよ、及川遼太郎。これは何か訳ありで仮にとか偽りのって意味でいいんだよな?さすがに会って数分の男と婚約だなんて…。いや、でも織田信長って破天荒な性格だったって聞くし……)


首を捻りながら自問自答を繰り返す遼太郎。端から見ればかなり変人であるのだが、本人は気付かない。


「えっと、織田さん。それって仮でいいんだよね?」


「概ねそうとって構わん。この頃なんとか縁を持ちたい豪族どもからの者が多くてな。断る理由を考えるのでも気が滅入ってしまっているのだ」


「なるほど」

自惚れて地雷を踏み抜かなかったことに大きく安堵する遼太郎。


「ちなみに我には妻はおるのだかな」


「えっ?」

またしても遼太郎は驚愕してしまう。


(今、妻って言ったよな?てことは女性だろ?この子見た目めっちゃかわいいし、もしかしたら美少女×美少女の百合夫婦の可能性も…。なんと言うか、それも…ありだな!)


などと下衆な妄想をする遼太郎だった。


「まぁそれはおいておくとして遼太郎、お前この提案はどうする?」


「うーん、破格すぎる提案だよね。破格すぎて裏があるんじゃないかって疑っちゃうな」


お世辞のつもりで放った言葉であった。しかしこれが久遠に刺さる。


「…………。どうしてそう思う?」


少しの沈黙のあと久遠は遼太郎に問う。


(え?まじで?裏あるの?)


そう言われてたら考えざるを得ないので、遼太郎らとりあえずありそうなことを並べてみる。


「えっと、少し考えれば誰でもわかるかな。話を聞くに奇妙な登場をしたらしいし、正体も知れない自分をどうしてそんな重役に置くのかってね」


「ふむ…」


久遠はとくに何も言わないので遼太郎は続ける。


「一度目の提案なら拾った情けとか温情とかって思えるんだけど、二度目さらには内容がよくなるような話だよ?そりゃ何かあるって勘繰っちゃうよ。この考えは当たりかな?」


遼太郎は何とか話を自分なりにまとめてみる。自分で言っておきながら確かにと思うのだった。



すると、

「ふふ、当たりだ。聡いやつだな」


「ありがとう、じゃあその真意ってやつを聞かせてくれるかな?」


「ああ、いいだろう。まず我のことについて話さねばならん。我の家は元から大きいわけではなく最近力をつけてきた勢力のひとつであってな。だが例えば、先日の合戦の今川家のような名のある勢力に比べれば当時は弱小であるのだ。そんな織田が格上の今川を下したと言うわけだ。この戦で現れたのがお前であったと言うわけだ。」


「なるほど、つまりは格上相手に織田が勝った理由は何か別にあって、今回に限っては俺って言う格好の理由つけがあったって訳か」


「そう言うことだ。もちろん我らはお前の出現ではなく実力で倒したが、中には難癖をつけたいやつらもいるからな」


「ふーむ、それはわかるけど、それがさっきの提案とどうして関係してくるんだろう」

遼太郎がわからずに唸る。


「わからんか?実力で勝ったとしても、他勢力から勝利の御輿のように担げあげられたお前を手放すのも織田としては面白くないと言うわけだ。この世の戦はそんな御輿1つで士気が大幅に変わることだってある。そんなのを他に取られるくらいなら、初めから手の内に抱え込んでしまおうというわけよ」


「あー、なるほど。」

久遠の説明に遼太郎はようやく合点がいく。


「我にとっては縁談避けの当てにもできるから一石二鳥なのだがな」

久遠はしたり顔で言う。


「それを言うなら俺は衣食住が確保できるんだから一石三鳥だよ」


「ふむ、我の提案肯定的にとってくれるとするならば乗ってくれるか?」


「ああ、一方的な温情じゃなくてgive & takeな関係なら賛成だね」


「ぎぶあんどていく?」


遼太郎は思わず英語を口走ってしまい、意味のわからない久遠が問い返す。


「ああ、ごめん。一方的じゃなくて双方に利点があるっての意味のことわざみたいなものだ」


「なるほど、ならば我と遼太郎のぎぶあんどていくな関係としてこれからよろしく頼むぞ」


「ああ、よろしく織田さ…」

「久遠だ」

遼太郎が言おうとした言葉を遮り久遠がそう制す。


「ああ、よろしくな久遠」

「うむ」


これから進むべき道が決まった遼太郎はその相方となりうる少女と握手を交わしたそのときだった。


「グ~……」


「あ、」

遼太郎の腹から虫の音が鳴る。


「ふふ、そう言えば三日近く食わずであったからさぞや原が減っているだろう。すぐに準備させるさ」


久遠はクスクスと笑って、食事を用意させるため部屋を出ていった。


なんとも締まらない終わり方に、遼太郎は自身の頬をかきながら、その姿を見送った。






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