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chapter2-13


城の1室から外を眺める女の子がそこには居た。そして、そこからの景色には夜にも関わらず月明かりと、それ以上に目立つ地面に無数に見える火の明かり。戦の準備による松明が、城の3つの塀の内、2つには内側に無数に見える。



「久遠…みんなは大丈夫かしら…」



その女の子、捕らわれた結菜は外を見ながら自分の軍を、知り合いを、思い人を心配しながら、外を見つめる。



「そんなに外を気にしても、助けが来ないのは貴方様が一番わかっているであろう。我らの当主龍興様の手紙と共に、逃げろと一筆したのは何を隠そう、貴方様自身なのだからな」


いつからそこに居たのか、斎藤飛騨が部屋の入り口に立っていたが、結菜は振り向くこともしなかった。


「そんなの言われなくてもわかっているわよ。しかも、この状況を実際に見て判断ができないほど私も愚かではないわ」



そう、織田軍はすでに撤退準備にはいり、先駆けの隊の幾つかが移動していくのを結菜は目視しておるのだ。


さらに、結菜は城の下に目線を向ける。



稲葉山城を囲う3つの塀の内側に、無数の松明で照らされた大勢の兵が見て取れる。しかし、明かりがあるのは三ノ丸と二ノ丸のみである。つまり、結菜のいる天守閣を囲う塀の内側には松明が存在せず、真っ暗なのである。



真っ暗とは言ったものの、その黒が時折動いているのも、結菜からは確認できたのである。天気も悪くないので、時折雲から出てきたら月による明かりが照らすことでその存在がはっきりとする。



その蠢く黒とは鬼なのである。



「斎藤が鬼を支配するなんて噂にも聞いたことがなかったのだけれど?」



結菜は改めて目の当たりに現状に嫌な汗が流れるのを感じるが、臆せずに疑問を投げつける。



「さすがに我ら斎藤家でもそれは難しいな。あんな異形なんて私は嫌でしたけど、それを支配できるものが我らの下につき、その力を振るってくれると言うなら話は変わるものでな。龍興様も人の命令を聞く異形を見て大変ご興奮のようだったのでね」



「ふぅ~ん、その異形を操るものって言うのは一体何者なの?」


「それはさすがに言えぬな。彼のものが何者であったとしても、今は我らの手下であることは変わりないからな」


話の核心には迫れなかったものの、やはり鬼を操るものが存在し、現状は斎藤家に下っている。つまりは織田に敵対していることだけは、明白になったと結菜は確信できた。


「それで聞きたいのだけれど、斎藤家はどうして織田を逃がしたのかしら?鬼の力を知る私からしたら、どう見てもこの兵力の差は織田に勝機はないのだけれど。貴方達の狙いはなに?」



「もちろん、斎藤家としてはこの場で織田を打ち負かしてしまいたいところだったがな。どうやらその異形を操るものが龍興様に伝えたらしい。詳しくは我にもわからんが」



「そう…、じゃあどうして私を拐ったりしたのかしら?」



「それこそ斎藤家の知るところではないな。完全に彼のものが独断でやったことである」



つまりは、結菜を拐ったのは斎藤家ではなく、完全に彼のもの、つまり黒フードの独断であるのだ。結菜は黒フードの存在を知らないが、遼太郎が詩乃救出時に言われたことを統合するにそうなるのだ。



結菜も勿論、捕らわれた時点で織田の不利益になるようならば自分の命など捨てる覚悟はできている。しかし、思い浮かべるのは自分の夫となった大胆さと繊細さを併せ持つ優しき心の女の子と…、最後に再会を誓って囮になって別れた男子である。



(久遠…みんな、遼太郎…)





その男の顔を思い浮かべたのと同時に、眺めていた城下の動きがなにやら騒がしくなっていることに気がつく。



「なにかしら…」



結菜が気にするのと同時に、城の中でも慌ただし足音が聞こえ始めた。



「ええい!騒がしいな!いったい何が起こったと言うのだ!」



部屋の入り口にいた飛騨が足音の1人を止めて、不機嫌そうに訪ねる。




「そ、それが…、織田の軍と思われる少数500人ほどが大手門を攻めているのです!」


「「なっ!!」」


撤退したはずの織田軍がなぜか城攻めをしている。その事実の理解が追い付くまで時間を要した。




「撤退したんじゃないの…?いったい誰?」




結菜の呟いた言葉は、月明かり照す夜の戦闘音にかき消されていく…





またまた遅くなりました。完結目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。

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