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Chapter1-3

浅い眠り眠りの中に遼太郎はいた。夢を見ているのか、それとも現実なのか、いまいちはっきりしない感覚はどこか二度寝に近いような状態だ。


(なんかいい匂いがする…砂糖菓子のような清涼感のある匂いは飴玉のようで、身近な人が好んでなめていた味で…)


(そうか薄荷飴だ、ばあちゃんが好んでなめてたな。俺は匂いは好きだけどあじは馴染めなかったな)


そんなことをぼんやりと思いながら、徐々に遼太郎の意識が覚醒する。まぶたを開けるとそこには…


「おお、起きた起きた」


遼太郎の目の前に黒髪の女性、久遠がいた。


「おわっ!?えっ!?」


遼太郎にとっては見知らぬ女性であるため動揺してしまう。


「貴様、3日も眠りっぱなしだったぞ?壮健なのか?まぁそれだけ騒げれば壮健であろう。それより聞きたいことがある。貴様はどのようにして落雷とともに現れた?まさか噂の通り落雷とともに落ちてきたとでも言うのか?他にも聞きたいことがあるぞ。貴様が入っていたあの光の球体だ。あれはどのような仕掛けなのだ?我は初めて見たぞ。貴様は仏教徒どもがいう大日如来の化身とでも言うのか?それにしては些か奇妙な服装をしているな。だったらやはり貴様は何者だと言う話に戻るが…」


久遠が怒濤の質問攻めをする。寝起きでこのいきなりの質問攻めに遼太郎は呆然としてしまう。まさに開いた口が閉まらないと言った感じか。


「何を呆けている。何か言ってみよ」

久遠がそんな遼太郎をみて問いかける。


「えっと、君は…誰?」

何とか言葉を喋ろうとした遼太郎は、自分の整理をつけるため思ったことを口にした。


「貴様こそ誰だ。」

久遠は少しムッとした顔で再度遼太郎に問う。


この久遠の発言で遼太郎はこのままでは繰り返しになってしまうことだけは理解できたので素直に質問に答えることにした。


「俺は及川遼太郎と言って、生まれも育ちも日本の東京で…」


「ふむ及川氏の生まれか。それにしても、とうきょう、とはどこだ?我はそんな地名聞いたことがないぞ。服装といい出身といい訳分からずなやつだな。我は知らんことがあるのは不愉快だ。皆言え。」


「言えって言われても……。」


東京や、服装を説明しろと言われても地図もない現状どうしたらよいかわからない遼太郎は、とりあえず体を起こしふと回りをみてみる。そこには現代日本と言うよりも、京都や奈良で歴史建築物を見学した時の様子にそっくりな部屋の作りが目に入った。


(何かおかしい…)


あたりの様子に遼太郎の心がざわつき始める。


「あの、ごめん。そこの障子を開けて外を見てもいい?」


「ん?まぁ構わんぞ。だが我の質問にはその後答えてもらうぞ」


遼太郎は久遠に一応許可を取り、障子を開けて外の景色をみた。そこはやはりと言うべきか部屋の古めかしい和室に合った日本庭園風の大きな庭だった。


「あの、ここって京都にある歴史的建築物の一室?俺って何でこんなとこに?確か倒れる前は東京の自宅にいたはずなんだけど?」


「貴様がここにいるのは、貴様が突如戦場に現れたのを、我が命じて外から連れてきたからだ。あと歴史的云々はよくわからぬが、ここは京都ではないぞ。ここは尾張の清洲である」


遼太郎は尾張、清洲と聞いたことのある地名が出てきたことに、若干安堵すると同時に、その単語からはとある人物が頭のなかに浮かんでくる。

とりあえず自分が名乗ったのだから相手にも聞いて良いかと思い遼太郎は目の前の女性に名前を問う。


「あのさ、よかったら君の名前教えてもらえるかな?」


「デアルカ。まぁ貴様も答えてたことだし我も名乗りのが通りか。聞いて驚け!我は織田三郎久遠信長!織田家当主にして夢は日の本の統一なり!」


久遠のその名乗りに対し遼太郎は一瞬ぽかんとしてしまう。それもそのはず遼太郎の知る織田信長は男性であり、男性であるはずの織田信長と言う名を女性である目の前の子が名乗ったのだから。


「さらに付け加えて説明してやれば、我は先日田楽狭間にて今川治部大輔を討ち取り、そこで雷鳴とともに現れた貴様を連れ帰ってきたと言うことだ」


今川、織田、尾張清洲、田楽狭間、これら全て遼太郎は知る単語であるが過去と現在と言う時間軸の不一致、さらに雷鳴とともに戦場に現れたと言う不可解な現象に遼太郎はあるワードを思い浮かぶ。


(これってタイムスリップじゃ…)


信長が女性である時点で現実の過去ではないので、もはや別世界への転移と言う方が正しくはあるが、今の遼太郎にはそこまで気がつけなかった。


「あのね、織田さん。俺いますごいことになってるみたいなんだ」


なんとか自己整理をつけ久遠に話す。


「すごい事だと?いったいどういうことなんだ。皆説明しろ」


「どうやらね俺、こことは違う所からやって来たみたいなんだ。時間が違うっていうか歴史が違うっていうか。そうだな、要約すれば違う世界からやって来たって言うのが一番しっくりくるかな?」


「なに?つまり貴様はこの日の本の人ではなく他の所からやって来たと言うことか?」


「まぁとりあえずはそれで正解かな?だからすごいことなってて混乱してるんだ」


「貴様の言い分はわかったがそれをどうやって証明する?」

久遠がそう問いかける。


遼太郎は考える。普段着のパーカーやジーンズなど服装以外に特出するものは特に持ち合わせていないようだった。ポケットを探したり枕元を見渡したりするが何か持ち合わせているようではなかった。


「ごめん、現状それを証明することは難しそうだ」

遼太郎は素直に諦めることにした。


「ふむ…」

久遠が少し考えるように顎に指を添える。しばらくした後だった。


「おい、遼太郎」


一瞬彼女の口から初めて自分の名前を呼ばれたことに驚愕するの遼太郎。


「我の目を見ろ、遼太郎。」


「え?」


「我の目を見ろと言っている」


久遠に堂々と言われ遼太郎は彼女のまるで煌々と光る炎のような瞳を、炎のような熱さの中に柔らかな優しさがある瞳を見つめた。


「…うむ。嘘のない瞳をしているな。良かろう。貴様の言うことを信じてやろう」


「ええっ!?」


「どうした?何を驚いている?」


「いや、だって怪しいだろ?この世界の住人じゃないだなんて。俺が言うのもなんだけどそれを信じるなんて…」


「なるほどお前の理屈も理解できる。だがな遼太郎、我は理屈のみで生きるにあらず。我のような立場のものであればその者の瞳を見ればその者が卑屈であるか、偽る者であるどうか位はわかる。逆にそれができなければこの下克上の世の中で常に上には立てないのだ」


「戦国時代の下克上か…」


遼太郎がポツリとこぼす。


「戦国時代がどのような時代であるかは知らんが、今は応仁より続く乱世。まぁ、あながち戦国の世であることには変わらんな」


久遠が遼太郎のこぼした言葉を返す。


「だがな、遼太郎……。貴様はいったいなんのためにこの世に来たのだ?」


(それを知りたいのは俺なんだけどなあ)


内心そう思いつつ考えてみる。がやはり思い浮かぶことはない。


「ごめん、お手上げだ」


「なに?わからんと言うのか?」


「うん」


ここで二人の間に沈黙が流れる。


すると久遠から遼太郎は質問を受ける。

「遼太郎、お前はいく宛はあるのか?」


「ないよ。言葉通り右も左もわからないし」


「だろうな。なら遼太郎、我の家臣となれ。そうすれば衣食住を満たしてやろう」 


「それは魅力的な提案だね」

遼太郎はそう返答をする。確かにこの提案はこの世での依る部のない遼太郎にとっては破格の提案であった。しかし、


「でもね、ごめんやっぱり遠慮させてもらうよ」

遼太郎は断ってしまう。


「ほほう、なぜだ?これはお前にとって魅力的な提案だったのだろう?断る訳を話してみろ」


「そうだね、織田さんの家臣になるってことは人と戦うってことだろ?けど俺がもといた世界では人殺しって言うのは理由があってもしてはならないことになってるんだ。だから俺自身できるかわからないから、君の期待にはたてないかも知れないからだってとこ」


「うむ…」


「これでも高校では部活、運動を生業にしていたこともあるから体力には自信があるんだ。だから…」 


「いや待て、ならば先ほどの提案は撤回する」


遼太郎がなにか職業を当ててもらえるように頼もうとしたときのことであった。


「ならば遼太郎、我の夫となれ」


「えっ?」

本日何度目だろうか、再度混乱に陥る遼太郎であった。













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