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Chapter2-5

chapter2はここからオリジナル展開していきます。

稲葉山の麓にある井ノ口の町を、西へと向かうある森の中



長い前髪の少女の進路を塞ぐように、十人近くの足軽とそれを指揮しているであろう少女が武装をして待っていた。


「竹中殿、あれほど大層なことをしでかしておいて、更に逃げようなど何たる恥知らずか。まぁ、美濃の痩せ武士のそなたが、良くもこんな風下まで逃げ切れたと褒めるべきだろうか?」


足軽達の前に立つ少女、斎藤飛騨が馬鹿にしたような口調で話す。その言葉に、同伴している足軽からも笑いが起きる。


「風下ですか…。それならば城から離れようとする私の進路を塞ぐ貴方たちは、更に風下にいると言うべきですね。主君に道を誤らせる武士にはさぞお似合いで滑稽極まりないことです」


そんな大勢と対立する一人の少女、詩乃はそんな状況でも臆することなく、強気で言葉を発する。


「くっ!減らず口を!」


「減らず口とは、自分勝手な理屈を捏ねると言う意味。そう、飛騨殿のような仰りようなどまさに減らず口といえるでしょう」


さすがは、美濃で出来人や麒麟児と呼ばれるだけあろうか。詩乃はこの状況で相手を口論で滅多打ちをする。


「くっ、まぁいい。私は龍興様より可能ならば生きたまま捕らえよと上意を受けている。が、私はそこまで甘くはないので、抵抗するならばここで切り捨ててやろうと考えている」


「上意…ねぇ…」


斎藤飛騨の言葉に詩乃が呟きで返す。


「上意とはすなわち、神の御心。可能ならばなど曖昧なことを仰る龍興殿も龍興殿ですが、飛騨殿はそんな上意すらも己の私情で反故にしようとする。いったいこれのどこに神の御心があるのか…」


「なっ」


怯む斎藤飛騨に対し、詩乃が言葉を緩めない。


「そもそも今回、私が稲葉山城乗っ取りを企てたのは、武士と言う立場のの寵愛を受けながら、やりたい放題であった者たちの炙り出しと龍興様へのお諌めのため。この竹中半兵衛重治、私利私欲のため動いたのではない」


「私利私欲でないとしても、これを許せとでも言うのか!」


稲葉山城乗っ取りの意図を初めて露にする詩乃。しかし、斎藤飛騨には逆に煽ってしまったかのようである。


「許す必要はないでしょう。しかし、部下の諫言を聞き入れて下さらない主君などに、もはや命を賭ける武士などいないでしょう」


この詩乃の言葉は、恐らく彼女自身の代弁でもあるのだろう。言葉で諌め申し上げても全く聞き入れてくれない、それならばと行動で示した今回の稲葉山城乗っ取り。詩乃はこの騒動で主君に最後の望みを賭けてお諌めをしたのだろう。


しかし……


「何がお諌めか!龍興様は、今回のことで酷く心をお痛めになっているのだ。しかもよりによって尾張の織田との戦の最中に…」


斎藤飛騨の言葉より察するに、稲葉山城当主斎藤龍興は詩乃の意図を汲み取ってはくれなかったのだろう。


「はぁ、これで美濃も織田に落ちたも同然ですね…」


やはり駄目であったか、そんな詩乃の言葉が込められた言葉である。


「語るに落ちたり竹中重治!すでに織田と内通してると見た!貴様、遂に裏切ったか!」


「全く、織田に内通していたのなら占拠した稲葉山城を龍興様に返したりせず、そのまま織田に受け渡していたでしょうに…。そのくらい少し考えればわかるはずでしょう」


斎藤飛騨の的外れな言葉に詩乃がやれやれとした様子である。


「えぇーい!うるさいうるさい!このまま織田の元に走らせて堪るか!貴様はここで捕らえる!皆のもの、やれ!」


斎藤飛騨の掛声に、足軽達が動き出す。


(くっ、ここで束縛されたらどのみち処刑されることは免れないでしょう。だったら辱しめを受ける前にこの手で……)


いくら武将格とはいえ、文官側に特化した詩乃のである。彼女は足軽十人を相手取って勝てるなど思わない。素直に諦めてこの場で自決しようと護身用の小刀を抜いて自身の胸には刃の先を当てようとした、まさにそのときであった。






「詩乃っ!!!」



小刀の刃が胸を突き刺す寸前で、彼女の手を取って止めたのは、いつぞやの胸をときめかされた青年その人であった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



遼太郎はひよ子と転子と合流し、武装をした一団が目撃された場所まで走っていた。


(どうにか、間に合ってくれ…)


街道を逸れ、森の中を突き進む遼太郎。その後ろに遅れてひよ子と転子が追う。幾ばくか走ると森を通る街道が見える。そして遼太郎はそこで、十人程の足軽に追い詰められた詩乃が小刀で自身の胸を貫こうとする場面に遭遇したのである。



「詩乃っ!!!」


邪魔になった足軽を後ろから突き飛ばして、小刀を握る詩乃の手を掴む。間一髪でその刃を止めることに成功する。


「あ、あなたは…!?」


前髪が揺れ、あの時と同じ綺麗な瞳が現れる。


「はぁはぁ、また会えたね、詩乃。約束通り君を迎えに来たよ」


回りを警戒しつつ息を切らせながら、遼太郎が詩乃へ答える。心の片隅で待っていた青年が来てくれたことに、思わず顔が綻んで涙を浮かべる詩乃。


「すぐに、邪魔物を片付けるから。ひよ!ころ!詩乃を連れて先に下がってくれ!」


「「はいっ!」」


遼太郎を追いかけて現れた二人に詩乃を依頼する。そして遼太郎は、ようやく乱入者の衝撃から立ち直りつつある足軽たちと相対する。



「なっ、なんだ!貴様らは!我らを知っての狼藉か!」


斎藤飛騨が遼太郎に声をあげる。


「知ってるさ。俺たちは竹中さんを奪いに来たんだ。悪いけど彼女が離れるまで時間稼ぎをさせてもらう」


そう言って、遼太郎はホルスターからハンドガンを抜く。


「えぇい!敵は一人だ!さっさと討ち捨てて、竹中半兵衛を追うのだ!」


斎藤飛騨が足軽たちに向けて吠える。


「だから、ここで足止めするって言ってるだろ!」


"パァンッ"


斎藤飛騨の叫びで我に帰って、ようやく動き出す足軽たちの足元に遼太郎が威嚇射撃をする。銃撃音と足元に放たれた弾丸で彼らの動きは再び制限される。


「あんたら、今ので分かったと思うけどこれもれっきとした銃、鉄砲なんだ。しかも連射が可能なね。撃たれたくなかったらこの場から動かないでくれよ」


「「くっ…」」


遼太郎の言葉に皆石のように動きを止める。連射可能な鉄砲など彼らは知らないが、現実それが起きているので下手に動けない。


お互いがにらみ合いながら、ジリジリとした攻防が水面下で行われる。


遼太郎が武力で優れていたとしても、敵方は多数である。森の中の街道で向き合っている状態であるので、遼太郎も脇から突破され後ろから挟み撃ちにされるのだけは注意する。


そんな状態のまま、時間だけが過ぎていく。






しかし、ここにさらなる第三者が現れた。


「やはり、貴様が出張ってきたか……。その少年相手では少し分が悪かろう…、手を貸してやろう…」



じりじりと距離を取っていた遼太郎と足軽たちの間に暗灰色の布を頭から被った者が現れる。


「なっ!?貴様はだれだ!?」


敵方の斎藤飛騨が、突然現れたものに対して驚きを示す。


「我の願いの成就のため、竹中半兵衛は良き駒となる。このまま、斎藤家が回収してくれるのなら黙っていようと思ったのだが…。だが、少年、貴様自ら現れてくれるならばその手間も省けると言うものだ!」


そう言って、その謎の者が指を鳴らす。



すると、その者の後ろから鬼が降ってくるように次々と出現してきたのだ。


「「なっ!!?」」



これには斎藤飛騨だけでなく遼太郎も、目を見開いて驚愕する。すぐにハンドガンの照準を鬼に対して向け、対処しようとするも幾分数が多すぎる。


(くそッ、無理だ!)


何発か撃っていちばん近くの鬼を怯ませると同時に遼太郎が逃走をはじめる。



現状の残弾数と一対多数と言う不利な盤面を総合し、圧倒的に残弾数が足りていないのだ。


「追え!逃がすと思うか!少年!」


暗灰色の布を被った人物が鬼を指図して、遼太郎を追走させる。今回の相手は一番初めに遭遇したほぼ人丈と変わりない大きさのタイプ。その俊敏性は前回倒した巨大な奴より明らかに早い。


威嚇射撃しながら猛追を防ぐも徐々に追い付かれ始める。


(くそ!情けなねぇ…)


もう厳しいかと思われた時、遼太郎の横の森の草木の中から声が掛かる。


「遼太郎、伏せなさい!」


その言葉に遼太郎は前方へ勢いそのまま飛びながら伏せる。それと同時に遼太郎の頭上をバチバチと青白く光る無数の蝶が鬼に向かっていく。



"ドォォォォォーーーン!!!"



そして、その蝶達が爆発を起こす。

爆発に巻き込まれたその勢いで後ろに倒れたり、膝を付くなどしてしまう。鬼を一撃で倒すほどではないが中々の威力である。


(な、何が起こったんだ!?)


遼太郎が目の前に起きた現象を理解しようとすると同時に、森から出てきた女性に手を引かれる。


「ほら、早く起きて!逃げるわよ!」


なんと、その女性は遼太郎を先に行かせた結菜であった。


「き、帰蝶!?一体…、いや今は逃げるのが先か」


一体何をしたのか、そう遼太郎は尋ねたくなるものの、いつまでも鬼が怯んでいてくれるかわからない。遼太郎は結菜の手を借りて起き上がり、再び走り出したのであった。

















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