Chapter1-17
転子と別れた遼太郎とひよ子の二人は城の城下町まで戻ってくる。
(そういえば物資とか人手に必要となるお金はどうやって計算しよう…)
久遠の元で一作戦を遂行するのだから、ある程度自由に経費は使えるだろうと考えていた遼太郎だが、この世界の肝心な物や給料の相場をまったく知らないことに気が付く。
遼太郎は隣を歩くひよ子に尋ねてみようとすると、ひよ子が指折りしながら何かを数えているようだった。
「ひよ?何をしてるの?」
「これはですね。今回の作戦に必要となる経費諸々を計算しているところなんですよ。恐らくですが今回の作戦には二千二十貫ほどの費用がかかるかと…」
「へ?」
ひよ子の言葉に遼太郎は思わず変な声をあげてしまう。それもそのはず、先程まで転子との話し合いではのほほんとしていた雰囲気のため、遼太郎的にもまさかと言うことであろう。
「私、計算は得意なんですよ。だから今回の作戦概要から考えてみたんですけど……」
ここで先程のひよ子が言った"二千二十貫"と言う金額を考えよう。まず、一貫と言う単位は日本円にして十万から十五万円されている。加えて、この戦国の室町時代後期ほとんどの足軽と呼ばれる兵は専門職ではなく農作などと兼業して生計を経てている。
仮にだが、一般的な足軽の年収を出せば数貫から十貫が相場であろうか。これを円に直せば五十万から百万になる。もちろん、武将格になれば数千万になることもあり得るが。
つまり、今回ひよ子が出した計算しているによるとおおよそ二億円程度の費用となるのだ。安い金額ではないが、重要拠点制圧と言う作戦から考えるにそこまで高額と言うわけではない。
そんなことを、物の相場で悩んでいた遼太郎にはわかる筈もない。
「そうかー、ならこれからの部隊のお金計算はひよにお願いしようかなー」
などと、呑気なことをひよに肝心なしながら言うのであった。
一応公式の作戦と言うこともあるので遼太郎は、その費用一覧の作成をひよに頼む。
そして、二人は城にいる久遠のもとまで戻ってくるのであった。
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久遠はまだ評定の間にいるようで、遼太郎はひよ子と共に向かう。
「おお、遼太郎戻ったか。それで今回の作戦はどうなる?」
評定の間に入った遼太郎達に気が付いた久遠。遼太郎は、ひよ子にお願いして先程の見積もりを報告してもらうことにした。しかし、
「こ、こんかいのしゃくしぇんにひ、ひちゅようとなりゅ費用は、お、おおよそにちぇんにじゅうっかんになっ、なりましゅ!」
先程までの会話で遼太郎にはスラスラと言えていたひよ子だったが、久遠の前では緊張のあまり噛み噛みになってしまう。
「おい猿、そこまで緊張せんでもよい。普通にやれ」
そんなひよ子の様子を見て、久遠がが優しく声をかける。
「あわわわ、ふちゅう、ですか……。ふつう、ふつう……」
それでもひよ子の緊張は抜けないようである。
「まぁ久遠、そこは多めに見てあげてよ。今まで評定にも出られなかったみたいに身分がどうとかあるんでしょ?」
隣に立つ遼太郎もそんなひよ子を庇うようにフォローする。
「それはそうだが……。我は今までも心優しく接して来たつもりなんだがなぁ…」
ちょっと残念そうな困ったような顔を浮かべる久遠。
「上の立場からはそうでも、立場が変われば見方は変わるもんだよ。それにこんなひよも可愛いだろ?」
可愛いというか、微笑ましいというか。なんとなく心の中で応援したくなるような様子に、遼太郎は感じたものがあったのかこんなことを言う。
「………おい、遼太郎」
すると、そんな遼太郎に思うことがあったのか久遠が呼ぶ。
「ん?なんだ?久遠」
久遠に呼ばれ遼太郎は返事をする。
「…………………なんでもない」
少しの沈黙の後、目を閉じた久遠は若干尻萎みするように訂正をする。何か久遠の心中で葛藤があったようだ。
「あ、あうっ!ごめんなさいぃ!私がのろまなばかりにご気分を悪くさせてしまったようで……」
そんな遼太郎と久遠のやり取りを間近でみていたひよ子がペコペコと頭を下げる。
「怒ってはおらん。だが猿よ、こやつ遼太郎に接するように、我にも接してはくれてもよいのだぞ?」
そんなひよ子を落ち着かせる久遠。
だが、
「無理です!!!」
ひよ子即答である。
これにはさすがの久遠もびっくりしたのか傷ついてしまったのか、
「………」
まさに、唖然とした顔をしてしまう。
「……ククッ」
そんなやり取りに遼太郎は、思わず笑ってしまう。
「わ、笑うな、このうつけものめが!」
顔を赤らめながらポコンっと遼太郎を叩く久遠。
「叩くなよー、これまでの事の意趣返しだろー?」
遼太郎は先日の紹介の際のことで仕返しするのであった。
そんなこんなで話は進み、侮辱久遠から作戦と費用の許可をもらう事ができた遼太郎。野武士という傭兵を使うことで手が空いた正規の兵に囮をしてもらうことも可能になるなど、作戦の成功率もかなり高まったように遼太郎は感じていた。
「それとさ、後もうひとつなんだけど」
「どうした。今日は随分とお願いが多いな」
今しがた思い出したことを遼太郎は、久遠に告げる。
「作戦が終わってからでいいんだけど、この作戦の要の野武士を率いる棟梁の蜂須賀小六正勝って言う子の士官を認めてあげて欲しいんだ」
「え?お、お頭?」
遼太郎の口から幼なじみの名が出たことに驚くひよ子。
「ふむ、べつに構わない。しかし、そやつは我の直臣ではなくお前の部下と言うことにする。その方がそやつも気負うことないだろう」
「ああ、ありがとう久遠。それじゃあ行くよ」
報告書することをすべて言い終えた遼太郎はひよ子と評定の間を後にする。
「どうかよろしく頼むぞ。遼太郎…」
一人残された久遠の口からのこぼれた一言がだれもいなくなった評定の間に響き渡る…。
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