Chapter1-16
登場人物追加です。初見の方は参考にしてください。
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評定の間から退出した遼太郎は、作戦を練るためにひよ子とともに城を後にする。
「お頭!お殿様にあんなこと言っちゃって本当に大丈夫なんですか!?」
城門をくぐるとひよ子が堪らずに遼太郎に尋ねてくる。何も知らないひよ子にとっては、上司がいきなりの無茶ぶりをしたようにしか見えないのであろう。
「はっ!お頭のことですから何か策があるのですね!さすがお頭ですぅ!」
すると、遼太郎が答える間もなくひよ子が自分で納得してしまう。
「うーん、何だか凄い持ち上げ様だな。一応策って言うか考えはあるんだけど、それにはひよの助けが必要なんだよ」
「え?わ、わたしの助け…ですか?」
急に話を振られたひよが困惑した様子を見せる。
「そうなんだ。質問なんだけどさ、墨俣近辺の地理に詳しい知り合いっていたりしないかな?」
「墨俣の地理に詳しい知り合い……ですか…。うーん……」
遼太郎の言葉にひよ子は顎を傾げて思案に耽る。
「あ、一人いますね。幼なじみなんですけど」
しばらくした後、ひよ子がそう答える。
「へぇ、名前は何て言うの?」
「蜂須賀小六正勝、通称は転子って言います。今は何処にも仕えずに、野武士を率いて戦に参加したりしていますね」
(うん、野武士を率いる仲間となったが居るって言うのは知っている通りだな)
遼太郎は、名前までは覚えていなかったがうっすらと記憶に残ることと一致したことに安堵する。
「よし、それじゃその子に協力を要請してみよう」
「え?ころちゃんにですか?」
遼太郎の言葉にひよ子が驚きで返す。
「うん、野武士を率いているってことはそこそこ人数も揃ってるんでしょ?」
「ええ、それは支払うお金次第だと思いますが……。お頭、それは傭兵を使うってことですか?」
「ああ、そのつもり。正規の兵を使うと何かと面倒ごとが増えるだろうし、何より敵に動きを察知されにくくなるって言う利点が生まれるだろ?」
遼太郎は自身の考えていたことの一つをひよ子に伝える。
「なるほど……。ううううーーー…!」
ひよ子は納得したかと思えば、急に唸るような声を発する。
「ど、どうしたの?ひよ」
「さ、さすがお頭ですぅ!私にはこんなこと思い付きませんでしたよー!」
ひよ子が笑顔を浮かべ、思わず遼太郎に迫ってそんなことを言う。
「はは、ありがとう」
「あれ?でも、お頭どうして私がころちゃんと知り合いなことを知っているみたいだったんですか?」
「ふふ、さぁ?それは内緒かな」
ひよ子の問いかけに遼太郎はクスリと笑うもうまくはぐらかしてしまう。そんなやり取りをしながら二人は転子と呼ばれる子の元へ向かうのであった。
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ここは小さな家々が集まる農村の一画。
「ふぅー……」
首元にオレンジいろのスカーフを巻き、頭の横で髪を纏めた少女が、今しがた背負っていた薪を下ろすと額の汗を拭うようにして息をつく。
「最近、戦が少なくて稼ぎが少なくなって薪も足りなくなってきたなぁ。みんなもっと派手に戦してくれると助かるんだけど……」
少女が誰に言うでもなく、言葉をこぼす。
「やっぱり仕官しないとダメかなぁ?でも、堅苦しい所は苦手だしなぁ。何処か私がのびのびと仕官出来る所はないのかな」
少女が一人思案を巡らせているところだった。
「ころちゃーーーーん!!」
少女の姿を見つけたひよ子が叫ぶようにして少女を呼び、走ってやって来る。
「あれっ?ひよっ!?わぁ、久しぶりー!」
ころと呼ばれた少女がそんなひよ子に気が付き驚いた様子で答える。
「えへへ、久しぶり。元気だった?風邪とかひいてない?」
「元気ではあるよ。けど、最近最近稼ぎが少なくて困ってるんだよぅ。織田も斎藤も、もっと派手に戦してくれればいいのに……」
そんな話を皮切りに、二人はお互いの近況を報告しあいながら楽しそうに話を続ける。
しばらくした後に、転子が遼太郎に気が付いたようでひよ子に尋ねてくる。
「それで、ひよ。こちらの方は?」
「えへへ、こちらのお方はね、今の私の上司に当たる人でね。織田のお殿様の夫でもあるんだよ!」
「へっ?………ええええっ!!!?」
ひよ子と共にいた男がまさかそんな立場だとは思わなかったんだろう。転子は驚愕の表情をして、地面に片膝をつくようにして頭を下げる。
「お、おおぅ」
先のひよ子以上の対応に、さすがの遼太郎も思わず身を引きそうになってしまう。
その後、中々身分云々進展しないやり取りを繰り返す遼太郎と転子であったがひよ子の助力を得て、ようやく本題を話はじめるのであった。
「それで遼太郎様はどのような御用件でいらっしゃったのですか?」
話をすると言うことで、転子の家の中に通された遼太郎とひよ子がわけを尋ねられる。
「今回の織田家と斎藤家の戦で墨俣一帯の攻防に関してころちゃんに助力を頼もうとして……」
「なるほど。織田のお殿様が墨俣に城を築こうとしていることは耳にしています。それに先日家老である佐久間殿が築城に失敗して敗走を余儀なくされたことも情報として得ています」
遼太郎が軽く話題に触れただけで、転子は遼太郎が説明しようとしていたことをスラスラと口にしていく。
「ふわー、さすが野武士の棟梁だねー。ころちゃん」
先程の遼太郎の前の慌ただしい様子とは異なって冷静な対応をする幼なじみにひよ子が感心の音をもらす。
「これが私の稼ぎの源だしね。それで……遼太郎様。私達野武士の力が必要とのことですが美濃勢と戦をするのですか?」
「戦ってほど大事にするつもりはないんだ。これが俺の考えなんだけど………」
遼太郎はそう言って、ひよ子からも受け取った地図を開く。
「俺の考えとしては極力戦闘となることを避けながら築城をしようと思うだ。そのために、二本の川に挟まれた中洲にある墨俣に対してこれをを使って一気に物資を運ぼうと思うんだ」
遼太郎はそう言って、地図上の墨俣を挟んだ川の織田勢力圏に近い方をなぞりながら言う。
「なるほど。この川の上流、つまり斎藤家の勢力圏外から川の流れを使って物資を方舟というわけですね。確かにそれなら斎藤。に気付かれずに、素早い築城が出来そうですね」
遼太郎の説明に転子がふむふむと頷くようにして解釈を述べる。
「そう、それに加えて作戦の決行は、敵方勢力圏に入るのを夜になるようにずらしてやろうと思うんだ」
「夜に……ですか?」
更なる説明をする遼太郎にひよ子が首を傾げる。
「ふむ、これも斎藤家に見つかるのをかなり遅らせる事が出来そうですね。それでも遼太郎様、やはり城をしっかり完成させるには少なくとも丸一日は必要だと思うのです。ですから日が昇れば、やはり戦闘は免れないのでは?」
転子が遼太郎の考えに感嘆しながらも、一つの疑問を口にする。
「そこでだ。ここからは俺のオリジナル、つまり思いつきなんだけどさ。久遠が、織田の殿様が築城にこだわるのは要は美濃に攻め入る拠点が欲しいからだろ?必要なのはそこの土地を守りきる砦であって城そのものではないはずなんだ。だからさ……」
そう言った遼太郎は、今度は墨俣近辺に拡大された地図を開く。
「築城を土台とした砦跡地のような囲いは先日の家老の人の作業で作られつつあるみたいなんだ。敵さんも警戒してるから容易に今すぐ元通りとは出来ないらしい。だからここを突く」
遼太郎は言葉を続けながら、形だけの存在の囲い砦の、さらに外側をなぞる。
「要は一日、いや違うな。半日だ。半日敵を食い止められる物を作ればいいんだ。だからここ、囲い砦の外側に幅、深さ共にかなりの物の堀を作ろうと思うんだ。ころ子ちゃん、作戦に出せる野武士はどれ位いる?」
遼太郎が話をじっくりと聞く転子に借り出せる人手の数を尋ねる。
「そうですね、ざっと二千人位でしょうか?」
「それなら十分すぎるな。とにかく、人手の大半を使って一気に堀と囲い砦の修復を夜の間に一貫してやる。そして、朝方までには半分組み立て済みの城の資材を囲いの中に入れて、後は気が付いてやってくる敵を妨害しながら組み立てって感じなんだけど」
一通り説明を終えた遼太郎。無難に事実通りやれば上手くは行くだろうがやはり戦闘機は避けられない。遼太郎は戦闘を極力失くそうと己の考えを交えてみたのだ。
「ふぇー、お頭は色々とお考えになっていたんですねー」
熱の入った説明をした遼太郎に対して、ひよ子が少し気が抜けるようなことを言う。
「もう、ひよはもっと真面目に聞いてよ。まったく……」
「そんなことないよ、ころちゃん!ちゃんと聞いてたもん!」
呆れた様子の転子に、ひよ子が頬を膨らませながらプンプンと言った様子で否定する。
「それでどうだろう?何処かに見落した様なところはなかったかな。ぶっちゃけ土木建築の方はド素人だからさ」
「準備途中で問題が、なければ恐らく大丈夫だと思いますよ。それならこれで決行ですね。日取りはどうしますか?準備は七日程度あればできそうですが?」
遼太郎の言葉に転子が答える。
「そうだな、早さが命の作戦だから兵士の皆に詳細の説明や軽い練習なんかもやりたいから十三、四日後がいいかな」
「了解しました。それではこちらでは野武士達の参加を募ってきますのでまた後日に。ああ、それとお金の方も準備お願いしますね。きっと久しぶりの仕事に皆喜ぶと思いますから。それでは失礼します」
遼太郎から予定日日時を聞いた転子は、頭を下げて退出していった。これから仲間となる人達を集めるのであろう。
「それじゃあ俺達も、作戦の概要とかかる費用を久遠に伝えに行きますか」
「はいっ!」
遼太郎達も農村を後にして久遠のいる城へと戻るのであった。
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