Chapter1-1
バンッ!バンッ!バンッ!
ズドドドドドドッ!
ここはとある艦船の倉庫内、四方から度重なる銃声が鳴り響く。
この銃声は遼太郎の手元、背中を合わせる人物からの物、そしてそこに敵対するように群がる人、いや元人間であった異形の物たちが操る銃器によるものだ。
「クソッ!弾がなくなりそうだ!お前マシンガンの弾余ってないか!?」
遼太郎の背後の人物から焦りの混じった声が投げられる。
「俺はマシンガン使わないから拾ってないんだ!ショットガンなら多少余ってるからそれでいいか!?」
と後ろからの声に反応したところ
「構わん!とにかくここを突破しないとどうにもならないからな!」
遼太郎は弾を渡すための間を作るため、とっておいた手榴弾を前方に投擲する。そして流れるような手捌きで後ろの相棒にショットガンの弾一ダースを譲渡する。するとお礼と言わんばかりか回復薬がお返しに渡された。
「もうひと踏ん張りだ、これが終わったら区切りもいいだろうし一息つこうぜ」
後ろの相棒が弾をショットガンに装填しながらそんなことを呟いた。
「そうだな、そろそろ俺も集中が続かなくなってきたところだしな」
遼太郎がそう返答すると同時に、先ほど投げた手榴弾が爆発をおこした。多くの銃器を持った異形がその爆発に巻き込まれはじけ飛ぶ。
爆発の煙が退けばそこにはもう片手で数えられる程度の敵しか残っていない。
「よし!こっちはもうカタが付きそうだ!前に出るぞ!」
遼太郎はそう後ろに言う。
「了解だ!なるべく早く終わらせて加勢してくれよ!こっちはまだ掛かりそうだから」
「おうよ!」
後ろからの声に返答すると同時にハンドガンを構えて前に出る。爆発に怯んでよろけている異形の顔面に拳を叩きつけ止めを刺す。
弾丸を節約するために、時には体術を交え敵を減らしていく遼太郎。
前方の敵はラスト1体となり、その頭にハンドガンの照準を合わせる。
(これで終わりだ!)
ハンドガンから放たれた銃弾は、運が良くクリティカルとなり異形の頭がはじけ飛ぶ。油断することなくハンドガンに消費した分の弾丸を装填し直し、後ろを振り返った時だった。
そこには先ほど離れた相棒の背中から大きなナイフで今にも切りかかろうとする異形がいた。
対する相棒の方は目の前の敵の対処で精一杯で気が付いていない。
(しまった!1体見逃したか!)
「後ろだ!」
遼太郎はそんな叫びを上げながら慌てて戻るが、異形持つナイフの切っ先は、無情にも標的とした相棒の首元へと切り込まれていく。
一撃だった。
致命傷を受けた相棒は、構えていた銃を落とし、体が脱力し膝から落ちうつ伏せに倒れていった。
倒れていった相棒の首元から出る血が瞬く間に倉庫の床に血溜まりを作っていく。
"Your partner die"
目の前が赤黒く染まりそんな文字が浮かぶ。
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遼太郎はコントローラーを置き、ふぅと一息をつく。
「おいおい、背中は任せたんだからしっかり一掃してくれよー」
ヘッドホンからは先ほどまでの切迫した雰囲気とはまるで違う声が聞こえる。
「悪い悪い、まさかあの乱戦で物陰にひっそり隠れているやつがいるとは思いもしなかったんだよ。けど久しぶりにミスしちゃったよ。悪いな」
遼太郎は言い訳混じりだが一応返答する。
「いいって、気にすんなよ。元をたどれば俺が未熟なせいなんだからよ。にしても、あと少しでチェックポイントだったのに惜しかったよな。あそこの敵一掃できてればもう目と鼻の先だろ?」
相棒からの返答に遼太郎は少し残念がりながらこう言った。
「そうだな、もう少しだったけどあそこがあのチャプター最大の難所だからな。あそこを突破口できるかどうかは大きいさ」
もちろん先ほどの戦場は現実などではなく、世界的に人気のゲームの一幕である。遼太郎とその友人は先ほどまでオンラインで協力プレイをしていたのだ。
遼太郎は学生ながら、このゲームのシリーズをすべてやり込んでおり、ソロプレイならば初見でも最上級の難易度からプレイしていけるほどの腕前である。一度クリアしたものならば、今度は最速クリアを狙うタイムアタックや、今回のようにオンラインで他人のプレイを補助したりクリアに導いたりするのだ。
「んじゃ俺は飯食うから休憩にしようぜ。さっきの続きはそのあとだな。一時間位かな?連絡いれるからよろしく」
遼太郎の友人はそう残してチャットを切った。
「俺も軽く食べてちょっと休もうかな。久しぶりのオンラインで少し集中し過ぎて目が疲れたな」
そう決めて何か食べるものあったかなと立ち上がろうとしたところ、急に目眩がしてしまった。
(あれ?何か体が…)
久しぶりに長時間ぶっ続けで夢中になってやり込んだ無理が祟ったのかな、遼太郎は倒れる寸前そんなことを思ったが間もなく顔から倒れこんでしまうのであった。
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