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お前が前に出ろ

作者: ヒロイセカイ

 またオーディションに落ちた。

 これで5回目だ。声優の専門学校を出てガヤ以外で作品に関われたことがない。


 今回は一生懸命演技したつもりだ。しっかりイメージして自分では良くできた、と思った。

 でもあれから1週間後の今日、役はもらえなかった。


「じゃあ、自己紹介からどうぞ」

「はい!ヤツガタケ事務所から来ました山下智樹です!よろしくお願いします!」

「じゃあ5ページのシーンお願いします」

「はい!」


「ワン!ワワン!ワンワン!キャン!」


「ありがとうございます。追って連絡します。今日はありがとうございましたー」


 チワワの役だった。主人公の友達が飼っている愛犬の役。いろんな動画で研究したり、公園で不審者扱いされながらも観察を続け100%ものにできたと思っていた。


 事務所で不合格の連絡を聞き、帰ろうと出口に向かった時


「おつかれさまでーす。ファンレター受け取りに来ましたー」

 事務所の看板声優木村咲隆也が入ってきた。


「えーと、智くんだったっけ。久しぶり!」

「あ、木村咲さん。お久しぶりです」

「智くん最近どーよ!」

「えっ……と。この前犬役で落ちちゃいまして、犬になりきれなかったのかなー、なんて」

「あのさ、そもそも犬になりきれんの?てか、犬の気持ちていうけどさ人の気持ちだってわからないこと多いじゃん」

「そ、そうですね」

「演技てさ、そのものを知ることは大事だけど、それをそのままなぞっても意味ないんだぜ。演じるお前が前に出るんだよ」

 木村咲さんはそう言って僕の左胸を人差し指で押した。


「演じる自分が前に出る」

 そうか、僕はチワワを追い続けるあまり「モノマネ」を極めてようとしていて「演技」ができていなかったんだ!


「木村咲さん!ありがとうございます!なんか僕次はいけそうです!」

「おう!がんばれよ!」


 数日後のとあるスタジオ

「それでは課題のセリフお願いしまーす」


「ニャー!ニャニャーニャー!キシャー!」

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