婚約破棄宣言
「アーリア・カトライズ!お前との婚約は破棄させてもらう…!」
高らかと宣言したその声に、会場中の目がそちらを向いた。
視線の先には、傲岸不遜を絵に描いたような表情のレインハルトが、小柄な令嬢を傍らに置き、自らの婚約者を鋭い眼差しで睨んでいる。
王子の生誕十八周年を祝うこの夜会で、まさか本日の主役といえる王子自身から、祝いの席を台無しにするような言葉が飛び出しだしたことに、参加者たちは耳を疑った。
「殿下……わけをお聞きしても?」
睨まれた当の本人、アーリアは、唐突な申し出にただ目をぱちくりと瞬かせる。
冷静に問い返しながら、ふと「あれ、なんかこういうシーンって聞いたことあるな」と、どこか他人事のように思った。
ーーあれじゃない?乙女ゲームの断罪イベント……的な?
思い浮かぶのは、前世よく読んでいた転生者物の小説。
乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢として断罪回避のために必死に生きていく物語だ。
前世で乙女ゲームをしたことはないが、小説そのものは好きでよく読んでいたので、その王道パターンとも言うべき一連の流れについては知っている。
まさか、ここが乙女ゲームの世界だったりするの…?
なぜか生まれたときから前世の記憶があったアーリアは、そのまま十八年間ここで生きてきて、さすがに地球とは違う世界に生まれたんだなとは思っていた。前世にあった国は存在しないし、魔法を使うことができ、魔獣までいる。
おまけに自分は公爵令嬢で、王太子殿下の婚約者。
日本生まれ日本育ち、生粋の庶民だった前世とはあまりにも違い、異世界転生ってやつね…!とテンションはあがった。が、それだけだ。
もしかしかしたら乙女ゲームの世界か、とは、思ってもみなかった。
乙女ゲーム自体には興味がなく、そのパッケージすらまじまじと見たこともないアーリアには、本当にここが乙女ゲームの世界なのかという判断もつかなければ、当然シナリオもわからない。
ーーまぁでも、未来のことなんかわかんないのが普通だから、うん。とりあえず話聞いてみて、それから対策を考えよう。
もし嫌がらせがどうのと言われたところで、一応自分に心当たりはない。
断罪されても免罪だろうから、しっかり調査してもらえれば今からでも回避できるかもしれない。ゲームの強制力うんぬんに関しては、今足掻いてもわからないことなので、一旦考えないことにする。
そうマイペースに聞く姿勢を整えたアーリアに対し、レインハルトは目を怒らせた。彼の周りに陣取った男たちーー宰相子息や側近たちも、同じようにアーリアを睨みつける。
「とぼけても無駄だ!お前がこのリリア嬢に悪質な嫌がらせを繰り返した挙句、傷害、あるいは殺害の意図を持って彼女に危害を加えたことはわかってるんだぞ!!」
やっぱりそのパターン……。
お約束すぎてむしろ落ち着いた。
「…身に覚えがありません。いったいいつ、何があったのか、もう少々具体的にお話していただけませんか?」
「シラを切るつもりか…いいだろう。まずお前は、公爵令嬢という権力を傘に、リリア嬢を学園で孤立させるよう周囲の女生徒に促した。暴言を吐いたり、彼女を引っ叩くこともあったそうだな。裏ではならず者を雇い、彼女が1人でいるタイミングを見計らって監禁や暴行を行うように指示。その場で私や騎士がたまたま駆けつけたからことなきを得たものの、命の危険さえあった。そのならず者たちも、お前に指示を受けたと証言している。それがうまくいかなかったからだろうな、ついに三日前、お前はリリア嬢を階段より突き落とし、己の手で殺害を試みた……!」
「……………」
「何か申し開きはあるか」
あります、ありまくります。
え、それ本当にリリア嬢がされてたらシャレにならないけど、私がしたことになってるの?
どちらかというと殿下たちにくっつきすぎて女生徒から反感かっての孤立だろうし、暴言や引っ叩いた記憶どころか、挨拶した記憶すらない。(ああいう男ウケに己の持てる全てを全振りしたような女の子に関わってもロクなことにならないのは、前世ですでに学んでいるから、徹底的に避けていた)
ならず者はおそらく仕込み…?
たまたま駆けつけたっていうのがすでに怪しいし。
そう言っても信じてもらえるとは思わないが、とにかく免罪は勘弁願いたい。
言うべきは言わせてもらう。
大人しく泣き寝入りしてたまるかと、アーリアは鋭い眼光でレインハルトを見据えた。その強い視線に、びくっとレインハルトの肩が上がる。
「やはり、全て身に覚えがございません」
「なっ…!」
「何か証拠があるのでしょうか」
あまりにも平然と言ってのけたためだろう、レインハルトや宰相子息たちがわなわなと拳を握り、悔しげに顔を歪めた。
「………多数の目撃証言があがっている。リリア嬢自身も、そう証言している」
「あくまで証言のみ、ということですか?」
「……ぐっ…」
確固たる証拠とは言えないことをレインハルトもわかってはいるようで、苦虫を噛み潰したような表情になる。
「で、あれば、何者かが私に罪を擦りつけようとしている可能性もありますよね。ならず者の証言も、捕まったら私に雇われたと言うように指示された、あるいは私の名を騙って何者かが雇っていた、ということもあります。確実な証拠とは言えません。
より綿密な調査を希望します」
その言葉に、レインハルトが戸惑いを顔に浮かべた。王族のわりによく顔に出る男だ。
犯人ならば、より詳しく調べられると困るのではないか、とでも思ったのだろう。
ふざけないでほしい。
「私は、私がそれらの罪を犯していないと知っています。探られて困る腹などございません。王家主導の元徹底的な調査を行なっていただくよう、要求致します」
顔をあげ、背筋を伸ばし、堂々と。
アーリアのそのあまりに凛とした佇まいに、ざわめいていた参加者たちも思わず見入った。
後ろめたいことなど万に一つもないといったその姿に、彼女がやったとは到底信じられないとも感じ、怪訝な顔をレインハルトたちに向ける。
その居心地の悪い視線に、レインハルトたちが身動ぎしている中、アーリアは言葉を重ねた。
「一方的な証言などという不確実なもので断罪されることは、到底納得できるものではありません。私としても、それぞれの事態が起こったより正確な日時をお教えいただければ、そのときの行動を細かくご報告した上、信頼できる証人や証拠を探しましょう。
ただ、三日前のことに関してならば、今お答えできると思います」
「なに…?!」
前のめりになるレインハルトたちを一瞥し、隣で涙目になっている可憐な令嬢へ視線を移した。
ふわふわの薄ピンクの髪に、クリーム色のドレス。小動物のような動きで、レインハルトの服の裾をぎゅっと握っている。もう一方の手には、包帯がぐるぐると巻かれていた。それが、階段からつき落とされたときの怪我、というわけなんだろう。(本当に怪我をしているのなら、なぜ治癒魔法をかけないのかが疑問ではあるが)
「お初にお目にかかります、リリア・トーベルク様。突然のことに驚きました故、ご挨拶が遅くなり申し訳ございません。カトライズ公爵家が一女、アーリア・カトライズと申します」
まるで威嚇されたとでも言うように、あからさまに身を竦めながら、リリアが小さな声でアーリアに応える。しかしその目からは敵意が隠せていない。
「………ぞ、存じあげて、います。……学園で、何度も、お見かけしました…」
暗に、アーリアが暴言等のためにリリアに近づいたよう示唆したいのだろう。
アーリアはにっこりと優美な笑みを見せる。
「あら、そうですね。同じ学園ですからお見かけしたことはございましょう。けれど、直接お話しさせていただくのはこれがはじめてのことですから、改めてご挨拶させていただきましたの。よろしくお願い致しますね」
「……………」
事実、二人が話したことなどないということは、もちろんリリアにもわかっている。まごうことなきリリアへの嫌味だ。
「それで?あなたが階段から突き落とされたというのは、三日前の何時ごろにどこで、どのように?お聞かせ願えますか」
「………と、時計を見ておりませんでしたから、正確な時間はわかりません。おそらく十七時か十八時頃だと思います。三階の、屋上庭園前の階段で、後ろ、から、……突き飛ばされました」
放課後、ほとんどの人が帰宅しているかクラブ活動で校内に残っていない時間帯に、ただでさえお昼時が過ぎれば人が寄りつかない屋上庭園前。
なるほど、設定上ではリアルに人気のない場所と時間を選んだようだ。ちなみにアーリアはクラブには所属していない。
リリアは、意を決したというようにその怯えていた顔をあげ、キッとアーリアを見つめた。
「……気絶する前に、逃げていく犯人の後ろ姿をみたんです!……赤い御髪でした!アーリア様のように」
アーリアの髪は燃えるような赤い髪。
波立つようにウィーブがかかるそれは、あまりにも鮮やかで、学園でも類を見ないものだと言われている。
艶めく光沢と、陽があたればキラキラと透き通る透明度の高い赤は、おそらくカツラでも再現することが難しい。
だが、とアーリアは落ち着いて返す。
「なるほど。しかしそれは、見間違いでしょう」
「そんな……!」
「なぜなら私は、三日前のその時間帯、学園にはおりませんでしたから」
すぐさま、レインハルトが「身内の証言は認められないぞ」と口を挟んだ。すでに帰宅していた、と続くことを想定したのだろう。家族はもちろん、使用人の証言も、こういった場合は証言としての有効性は低いとして認められていない。
そんなことはもちろん、アーリアだってわかっている。
「その日、私は学園を欠席し、王都にいらっしゃった、オリエンテルト国のセレスタ・アリオール公爵令嬢様とともにおりました」
ざわっと会場中の声があがった。
「王都の街をご案内致しましたから、ご訪問させていただいた各店の方々や同時刻いらっしゃったお客様方にお尋ねくださいませ。きっと証言していただけます。
教会にて、聖女ラテンシア様にもご挨拶させていただきました。
隣接するロインハラ孤児院で、夕食もご一緒させていただきましたね。ちょうど、十七時か十八時頃だと思いますよ?そのまま陽が落ちるまで子どもたちとともにいたことは、子どもたちはもちろん、神父様も証言してくださるでしょう」
一息に言い切れば、リリアが目に見えて動揺している。
セレスタ・アリオール公爵令嬢とは、隣国オリエンテルト国王弟殿下の娘にあたる。つまり王族に連なる御令嬢だ。王弟殿下が王位継承権を放棄したのち、婿として公爵家に迎えられた、その娘である。
アーリアはかねてより親交があった彼女がお忍びでやってくると聞き、案内役をかってでたのだ。
その上、聖女ラテンシア様は、儀式によって導かれ聖女となって以降御年五十歳に至るまで、長きに渡って聖女のお役目を務めていらっしゃる清廉潔白なお方。
金銭や取引によって嘘の証言をするなどありえない。また、彼女を否定することは教会を否定することにも繋がる。
教会は王家と敵対こそしていないものの、一種の独立機関として設立されており、その影響力は平民から貴族にまで渡る大きなもの。
真っ向から対立すれば内乱にすら繋がりかねない。
重ねて、街中の不特定多数の目撃者。
馬車で移動していたとはいえ、その乗り降りする姿はおそらく多くの人々に目撃されている。教会からの帰宅時も同様だ。
偶然の産物ではあるが、これは三日前の事実。
おそらく男爵令嬢にすぎないリリアには伝わっていなかった情報なのだろう。
父親であるトーベルク男爵が知っていたとしても、わざわざ娘に話すようなことでもない。こんな狂言を起こすなど、知っていなければ。
目の端でトーベルク男爵を捕らえると、真っ青な顔で震えている。彼自体は比較的善良な人間として評価されているため、おそらく娘の愚行を予想だにしていなかったのだろう。
善良が故に娘に甘すぎたのか。少々気の毒でもある。
リリアの浅はかな考えでは、人気のない時間帯と場所、学園内であれば、通常学園に通っているはずのアーリアがやっていないとは言い切れない、そういう思惑だったのだろう。
たとえ帰宅していたとしても、身内の証言が認められないことを加味して。
まさかこれほど多数かつ有力な証言を提示されるとは、思ってもみなかったに違いない。
「以上のことから、私が三日前に学園であなたを突き落とすことなど不可能です。
見間違い、もしくは………あなたの自作自演では?」
フッと妖しげに微笑む。
もちろんそんな確証もない。確証もないことを代々的に話しているのはお互い様のことだ。
ひとまずこの場は、周囲の人間にリリアへの疑いをもたせればいいとする。
「うそ……うそよ、そんな……」
「ど、どういうことだ、リリア」
フリフリと涙目で頭を振るリリアに向けて、レインハルトも困惑した顔で尋ねている。
「……とはいえ」
はぁ、とため息をひとつ吐き、アーリアが続ける。
「真偽のほどは後ほど早急に調査していただくとしても……殿下は私をもう信用することができない、だからこの場で婚約破棄をお申し出になられた、ということですよね?不確実な証拠で私を断罪することが目的ではなく、ただ婚約を解消なされたかったと」
「………いや、まぁ、そういうことだが……」
きっと、元々レインハルトは、ただリリアを好きになっただけなのだ。
惚れた女を正妃として迎えたい、その術を探したときに、リリアに唆された。
学園の卒業も間近であり、その後すぐ結婚という流れがあったことも、きっと焦りに拍車をかけた。
確たる証拠がなくとも、疑いある行動をとるものは国母としてふさわしくない、もうお前は信用できないと突きつけて、たとえ断罪することがかなわなかったとしても婚約破棄だけはせめて認めさせたい。…そういう心算だったのだろう。
ならば、その思惑に乗っかってやることは、アーリアにとっても藪坂ではない。
レインハルトが完全に冷静になってしまう前に畳みかけよう。
「正直、このような場ではなく、きちんとお話してくださればよかったのに、とは思います。私とて、想い合う二人を無碍に引き裂くような真似は致しませんから」
「……は?」
レインハルトは訝しげに眉を潜めた。
アーリアは決して婚約解消を認めないと考えこの場を用意したんだろうが、アーリアからしたらそう思われることの方が不可解だ。
元々、王妃の席にこだわりなどない。
父母や兄も、アーリアが望まないのならば、本当なら婚約を受けさせたくはなかった。それを、王からのご指名だったからお断りできなかったというだけで。
むしろカトライズ公爵家の後ろ盾がほしかったのは、王家の方だ。
父に目配せすれば、アーリアがこれから言わんとすることがわかったのだろう、仕方ないなというように頷いた。
この一件で傷物扱いされることになろうが、アーリアには一向に構わない。そんな彼女の気性もわかってのことで、さすがは実の父親、と思う。
ーー王妃教育自体は、私のためになると思って受けてたけど、本当は王妃になんてなりたくなかったんだよね。
前世庶民の私からしたら、荷が重いっていうかさ。自由ないし。
「殿下のお心はわかりました。婚約は解消致しましょう」
「……構わないのか、お前はそれで…」
「はい」
これ以上なく晴れやかな気分で、心からの笑顔を浮かべた。
レインハルトやその側近たち、宰相令息、リリアまで、目を瞠ってアーリアを見つめる。
それは、これまで公爵令嬢として貼り付けてきた笑みとは、全く別物のように見え、あまりに美しかった。
会場中の視線を一身に集めたが、アーリアとしては自然と浮かべてしまった無意識の代物。ただ、「これで自由になれる!」という気持ちが、つい公爵令嬢の仮面を一瞬剥がしてしまったのだ。
「いわれのない罪で裁かれるのは納得がいきません。ですが、ただ婚約を解消するということであれば、謹んでお受けいたします。
……私としても、婚約者を蔑ろにし、他の令嬢を、公の場で、エスコートする殿方と、今後いい関係が築けるとも思いませんし」
「うっ…」
『他の令嬢』と『公の場』の語幹を強くして言えば、レインハルトが目を逸らして呻いた。
恥をかかされたのはアーリアなのだ、嫌味の一つ二つくらいは言わせてもらいたい。
どうしようもない男だとは思うが、ここで「不敬だ!」と逆切れしない程度の良心はある、と見越して発言だが。
「………国王陛下は、今公務をお休みになられている故、後日手続きを進める」
「承知致しました」
レインハルトの言葉に殊勝に頷く。
そういえば、陛下が病に伏せっているとの話は聞いた。
同時に、おそらく陛下に邪魔立てされないことも鑑みての今日だったのかと思い至る。
が、至ったところでどうでも良い。
陛下が後日何を言おうが、これだけ大勢の前での出来事であるし、こちらとしても発言を撤回する気はない。
話は、双方にとって望む結果に帰結したとして、幕を閉じようとしていた。
と、そのとき。
「っ……なんだ……!?」
「え……っ?」
レインハルトの足元に、青白い魔法陣が浮かびあがった。
すぐさま気づいた護衛騎士が駆け寄るが、手を伸ばすよりも早く魔法陣から鮮烈な光が迸る。
「……っ………!!!」
レインハルトは、咄嗟に傍らにいた令嬢を突き飛ばし、魔法陣の範囲外へ押し出した。そうしている間にも足元から頭へ向かって電撃のような青い光が立ち上り、レインハルトの全身を絞めつける。
「がぁっ……ぁ、ぁぁああああぁあぁあああああぁああッッ!!!!!」
途端、頭が痛くなるような悲鳴が響き渡った。
「殿下!!!」
「レインハルト様…!!!!」
側近や令嬢たちが狼狽、レインハルトに向かって叫ぶ。
「拘束魔法?!でもあんなの、人間につかうもんじゃ…!」
アーリアも思わず焦りを口にだしていた。
レオンハルトにかけられた術は、高位の魔獣にしか使わないような上級魔法にみえる。人間に使えば、死にこそしないものの精神が崩壊する可能性が高く、そこらの魔術師に使用できる術ではない。
ましてや厳重に警備され、魔法の使用制限と結界がかけられたこの王城で、防御魔法をこれでもかと重ね掛けされている王族に対し発現させるなど、並大抵の術者ではない。
騎士たちがレインハルトを助けようとあがくも、魔法陣に弾かれ近ずけず、宰相子息が「貴様、何をやった?!」とアーリアに対してあらぬ疑いの声をあげた。
「私ではありません…!」
「嘘をつくな!!!貴様以外に誰がっ……」
ーーえ、うそ、まさか王族殺しで断罪?!今話終わろうとしてたじゃん!これがゲームの強制力ってやつ?!
普段は滅多にマイペースを崩さないアーリアだが、さすがにこれには動揺が顔にでた。宰相子息は、今にもアーリアを捕らえようという勢いだ。
そのとき、バンッという大きな音とともに広間の扉が開かれ、反射的にそちらへ振り返る。
突然のことに混乱してばかりだった周囲の参加者たちも、つられたように扉を開いた人物へ目を向けた。
そこには、流れるような金髪と碧い瞳、ーーレインハルトそっくりの青年が、至極にこやかな笑顔で立っていた。
「やぁ、兄さん!久しぶりだね」
不自然なほど明るい声が会場に響き、レインハルトが苦しみながらも、驚愕に目を見開いた。
「……………ロ………イ……?」
ツッコミどころがあっても、どうかそっとしておいてくださいね……。
免罪の釈明って難しいですね…。