序章
初投稿です。
自分の読みたいものが書きたくて、勢いではじめました。
婚約破棄してきた男にはせいぜい足掻いてほしいと思ってます。格好良い女性が好きです。
貴族や政治のあれこれはほんとのとこ良くわかってません。変なところがあってもそういう世界観だということで何卒ご容赦願います。
ーーどうしてこうなった。
アーリア・カトライズは、ちらと背後の様子を伺って、深いため息を吐いた。
男のわりに線が細く色白で、金髪碧目、いかにも王子様然とした青年が、ぜぇぜぇと肩で息をしながら歩いている。そのさらに半歩後ろでは、明るい茶髪に同色の目、筋肉質で体格もよい同年代の男性が、心配そうにその姿を見遣っていた。
歩き続けて3時間弱。
アーリアからすればまだまだ余裕の範囲内だと思うのだが、どうやら後ろのお坊ちゃんの限界は近い。とはいえ、夜までにこの山を越えて隣街までいかなければ、今夜もまた野宿だ。
「おい、アーリア……あとどれくらいだ」
「今ちょうど半分ってとこですかね」
なんてことないように返事をすれば、青年ーーレインハルト・ローベルは、わかりやすく顔を青ざめさせた。
「……そうか」
文句すら出てこない様子にほんの少しの同情を覚え、「休憩しますか?」と問えば、迷いながらも「…いや……大丈夫だ…」と強がりが返ってくる。
素直に言えばいいのに、と呆れたくなるが、もともととてつもなくプライドが高い男だ。いくら先だってその鼻っ柱をぽっきり折られたところとはいえ、弱音を吐くことには抵抗があるのだろう。
アーリアとしては、「そんな腹の足しにもならんプライドなど犬にでも食わせてしまえ」と何度も思ったことがあるが、しょうがない、『王子』という生き物は、そんなものなのかもしれない。
ヴィクトリア王国第一王子。
そう、顔面蒼白で全く頼りになりそうもないこの男は、まごうことなきこの国の王太子なのだから。
それが、
ーー……どうして一緒に、逃避行なんかしてるんだろうね。
本日何度目かの深いため息を、もう一度。
思わず遠い目で空を仰ぎ、アーリアは、こうなった原因である昨日の惨状を思い出していた。
あーあ、なんであんなことしちゃったかなぁ。そう、過去の自分を恨みながら。