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とある文字書きのエッセイシリーズ

とある「もじをかく生物」の嘆き

作者: がみひろき

フリーライターは文章を書く生き物だ。


だけど、突然文章が書けなくなることがある。朝食をとって、コーヒーを淹れて。少し冷ましている間にシャワーを浴びて髪型を整える。歯も磨く。猫舌だからコーヒーはすぐ飲めない。


本当はだめだけど、歯を磨いた直後にたばこを吸う。両切りの、缶ピースだ。


そうして「さあ、仕事するぞ」とキーボードに手を置く。


その瞬間に、手が震えて心臓がバクバクと脈打って呼吸が荒くなった。そのとき「書けない」と悟る。目が見開いているのが自分でもわかるほどに焦る。エアコンの音。アパートの前を通り過ぎるトラックの音。トラックの衝撃で揺れる床。アパートの前を笑いながら通り過ぎる女子高生たち。


それらすべてが書けない自分を笑っているように感じる。


「書けない」けど、フリーライターは文章を書く生き物だ。


書かなければ生きていけない。


生活するためには書かなければならない。


書くしか無いのだから。


フリーライターという生き物は、ただ文章を書くのが好きなだけではダメなんだと思う。フリーライターという生き物は、苦しくても血反吐を吐いても書き続けることができなければダメなんだと。


文章を書く生き物は孤独だ。


文章を書くとき、そこには必ず読者がいる。仕事の場合は編集者やクライアントもいる。


だけど、文章を書くときは孤独だ。自分に対して問いかけて、自分でそれに答えなければ文章は書けない。読者へ問いかけているつもりでも、結局その答えは自分自身で探さないといけない。それが正解だという保証はなくても、とりあえず答える必要がある。


これからフリーライターになりたいと思っている人に問いたい。


あなたは、書けなくなっても書けるか。


孤独な自問自答マラソンを続けられるか。


これは、僕自身にも常に問いかけている。答えは常に「NO」だ。だけど、僕はフリーライターという生き物に固執する。違う仕事をしたほうがいいのかもしれない。それでも固執する。


苦しくても血反吐を吐いても書き続ける覚悟はないし、孤独なマラソンなんて知るか。


僕はただ、「文章を書く人間」「文章を書いているクズ」「もじをかく生物」であり続けたい。

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