第09話 久しぶりの人間(?)
俺は今、まさに死に瀕している。
久しぶりの人間(?)としての死だ。
森の中、生い茂る木々の間から差す光を見上げ、人生を振り返る。
遥か前に精神世界で死んだ後、しばらく人間として転生できなかった。
すぐ死んでしまう生物とか、すぐ食われてしまう確率の高いものに転生すると
1回あたりのスパンが短いから何とかなるけど
いやね、世界樹っぽい大樹になった時はどうしたもんかと思った
自分じゃどうにもできないし、なかなか死ねないので、考えるのをやめた。
と言うか、今回も人間ってよりは所謂エルフで200年生きてたんすよ200年
しかも例によってブサメンっすよ。
エルフって言うと男女共に容姿端麗で云々ってイメージ強いけど実際のところそんなことなくて
人間から見たらそう区別つかないかも知れないけど、エルフ同士だとやっぱり違いがわかる。
逆に言えば、エルフの中でブサメンでも、人間から見たらそこまでブサメンじゃないかも?と思い
「エルフの男性は人間の女性との交流を禁ず」と言うエルフの掟を破り人間の街に向かったところ
やはりと言うか、わりかしモテた。
人間の街で暮らすようになってしばらくの後、一人の女性と付き合うようになり
何度かデートを重ねて、いざ宿屋へ!と言う段になって、突然黒ずくめのエルフの集団に取り囲まれた。
すぐさま彼女が眠らされ、続けて俺も当て身を食らい気絶した。
目覚めたのはエルフの里から少し離れた森の中、処刑場。
「死ぬ前に一つだけ、質問することを許そう」
ロープで木に縛り付けられた俺に、長老が近づく。
「なぜあんな掟があるんですか?なぜ男は人間の女と付き合っちゃダメなんですかっ!?」
事ここに至って、質問することはこれしかない。
「質問は一つだけと言ったはずだが?まぁ良い。理由は二つある。」
そう前置きして長老が語った理由。
どうやら、エルフの男性と人間の女性では子を成せない。
種族的にサイズが合わないらしく、奥まで届かないしスカスカで
付き合っても人間の女性を満足させることができず、確実に破局を迎えるとのこと。
ちなみに、男女逆なら「とても良い」らしい。
二つ目の理由は、政治的な問題。
エルフの男性と人間の女性との恋愛・結婚は確実に破局することが人間側に知れ渡ると
尾ひれ背びれ付きまくってエルフ排除の世論が形成される恐れがある為
厳しく掟を定め「掟を破る者、死、あるのみ!」としているとのこと。
長老が掟の理由を一通り話した後、俺は5人の執行人が放つ矢を受け、倒れた。
・・・・・・
そろそろ俺は死ぬ。
試したいことがあったんだが、今回はそのシチュエーションはなかった
次の転生に期待しよう。