第04話 また俺か
俺は今、まさに死に瀕している。
大きな屋敷の地下深く、冷たい石造りの牢の中
もはや何も見えぬ眼で天井を見上げ、人生を振り返る。
この世界に転生して21年
元の世界で言うところの中世ヨーロッパ風の世界で
俺は大きな国の侯爵家の長男として生を受けた。
それはそれは立派な家柄ではあったが、転生して愕然としたことがある。
またも元の世界での俺と、全く同じ顔だったからだ。
それでも何とか、家柄に恥じぬよう努力を重ね、学校でも常にトップの成績を収めてきた。
3つ年下の弟に対しても良き兄であるよう、また同時に良き教師であるよう努めてきた。
しかし、18歳
つまり成人して侯爵の跡取りとして正式に宣言する予定であった誕生日を迎える前日
俺は突然、屋敷地下深くの牢に閉じ込められた。
なぜ!?と理由を訊ねる俺に対して向けられた言葉は、あまりにも非情であった。
「お前が優秀なのは認める。しかしその見るに堪えない顔は侯爵家の跡取りとして相応しくない」
「侯爵家として、お前の存在を認めるわけにはいかないのだ」
冷たい地下牢の中で、俺は3年生き続けた。
いや、3年もの間死ねなかったと言った方が正しいか。
俺の顔を見て露骨に嫌そうな顔をしながらも、毎日食事を届けてくれるメイドの話では
イケメンの弟が、立派に成人の儀を終え正式に侯爵家の跡取りとして宣言したようだ。
・・・・・・
そろそろ俺は死ぬ。
もし俺がまた転生できたら、鏡くらい普通に見れる顔になって、普通に結婚して、普通に暮らしたい。