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第01話 どうしようもない人生
俺は今、まさに死に瀕している。
独り暮らしのワンルームマンションで、動かぬ手足を汚い布団に放り出し
もはや何も見えぬ眼で天井を見上げ、人生を振り返る。
いつからだったか、40過ぎたあたりだったか
それまで目を背けていた事実に目を向けてしまってからと言うもの
飲み食いと趣味に関して自制することをしなくなった。
どんな事実だったかって?
それはもう昔から、鏡を見ることが嫌いだった事だ。
俺自身が嫌いなこの顔を、世の女性が好きになってくれる訳がない。
孤独死確定。
なら、好きなものを我慢して生き永らえるより
好きなものを食べて、飲んで、遊んで、早々に死んでしまった方がいい。
普通と言うものがとてつもなく遠く、眩しく、手の届かない
どうしようもない人生。
なろう系とか、異世界転生して無双するような話が流行ってるけど
もし俺が転生できたら、鏡くらい普通に見れる顔になって、普通に結婚して、普通に暮らしたい。
・・・・・・
そろそろ俺は死ぬ。
もう現世に未練はない。
来世に期待して、眠るとしよう。