綿毛
貴方のことを全て知りたい。私のことを全て知って欲しい。でも、お互い全ては分からない。だって、貴方の全部を知ってるのは貴方だけ。私の全部だって私しか知らないもの。
幾ら全てを話したって言われても中身が見えるわけじゃないでしょう?
でもね、貴方がそう言うなら私は信じる。
ただ、私を信じるかは貴方に任せる。
だけど、信じてもらえたら嬉しいな。
それと、お互いの全部を教える必要も絶対でなくていいと思うの。もちろん、全部を教えられたらそれは素敵なことだと思う。ずっと抱えきれることならそのままでもいいんじゃないかな。でも、教えてもいいなって思えた時には教えて欲しいな。
もし、お互い教えられないなって思ってしまうことがあった時は、できたら伝えたいね。それを、それでもいいよって許し合えたらなって思うの。
冷たい言葉になるけれど、どこまでいっても他人ってことは忘れないでいようね。
貴方とずっと一緒にいたい。でも、ひとりの時間も欲しい。貴方といると、ずっとこの時間が終わらないで欲しいと思うの。永遠に続いて欲しいって。でも、ひとりでいると、この時間も欲しいなって思う。だけど、もっとずっと一緒にいたいって思う。
矛盾してるの、笑っちゃうね。
貴方もそうであって欲しいな。
ただ、そうでなかったらちゃんと伝えて欲しい。
だって、伝えてくれないとわからないもの。察するなんて贅沢なものを求めるのはやめてほしいな。私は超能力には自信がないから。
伝えづらいなんて遠慮はだめ。
お互いがどう考えてるか伝え合わないとでしょう?
貴方が超能力を使えないのは知ってるの。
もし、考え方に違いがあったら、どっちかが譲る前に、我慢する前に、ちゃんと伝えましょう。
でも、棘のある言い方はだめ。
お互い優しさと思いやりをもたないとね。
でも、もしその余裕がなかった時はどっちかに責任を押し付けないでね。疲れとか時間とか、何か適当なものの所為にしちゃいましょう。
貴方はとても素敵な人。貴方にとっても私は素敵かな。そうだったらいいな。
でも、お互いに期待はしすぎないようにしましょう。
たくさんしてくれる、たくさん忘れないでいてくれる。そう思ってるとお互いに辛いことが増えてしまう気がするの。例え、何かしてくれなくても、何かを忘れてしまっても仕方ない。
お互い人間で、人間ってそういう生き物でしょう?
してほしいことも、してほしくないことも、伝えないとしっかりはわからない。
忘れたくないことも、忘れたいことも、いつかは忘れてることがあったりする。
してほしいことは、伝え合う。忘れてしまったことは、許し合う。それで充分だと思うの。
貴方にたくさん幸せを届けたいって思ってる。貴方も私にそう思ってるかもしれない。どうなのかな?
でも、お互いに自分のことは自分で幸せにしてあげましょう。私たちが届け合う幸せは、その幸せへのおまけ。
それくらいがちょうどいいと思うの。
それに、そうしたら幸せが増えるほうが多くなると思うの。会えないと辛い、一緒にいられないと辛い、よりも、会えたら幸せ、一緒にいられたら幸せ、のほうがいいなって。小さな幸せを幸せに感じられる、そのほうが素敵だもの。
でもやっぱり、貴方と一緒にいないと、たまに不安になることがあるの。貴方もそうなのかな。
寂しかったり、辛かったり、悲しいかったり、気紛れの気持ちが不安を伝えてくるの。
でもね、その不安にだけは負けないようにする。そういうときは好きなことをしたり、掃除とかでもしたりして不安を誤魔化そうと思うの。
だって、その不安を伝えてしまったら、きっと困らせてしまうもの。
だから、今なにしてるの?なんて濁して伝えない。それだけを聞いたりしないようにする。
聞く時は、どうにしても気持ちが駄目な時。それか、用事があるときに、枕詞を添えて聞くようにする。
どこまでいっても、お互いに他人だもの。
悲しいけど、私の人生はどうしたって貴方だけしかないなんてことはなくて、貴方の人生も私だけしかないなんてことはないでしょう?
お互いに、大切な人、家族や友達、知り合いがいるもの。仕事に勉強、趣味があるもの。
だから、お互いとても大変なことだけど、その全部の釣り合いを大切にしないといけないの。
そうしないと不必要な迷惑をかけてしまうでしょう?
そんなことをしたら釣り合いが保てなくなってしまうもの。
人として生きていく以上、その責任を全うしましょう。貴方はそれが出来る人。私もそうしてみせる。
お互いが素敵な人生を全うできるように。
たくさん笑って泣いて、幸せを感じ合えるように。
空を舞うやわらかな綿毛が、自らの行方に不安と期待を抱くように、これからを見つめて。