#5 未練
『ごめん、もう別れよう。』
ショックは変わらなかった。
何だよ、それ。
なんであたしが振られなくちゃいけないんだよ。
ふざけんな。
・・・・・・・ふざけんな。
―――――・・・・
そこであたしは現実の世界に戻る。
「・・・・はぁっ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・。
すごい汗かいてるし・・・
あたし、まだ未練タラタラなのかなぁ・・・・こんな夢見るなんて・・・
最悪だ・・・馬鹿みたい・・・
目ざまし時計代わりの携帯を見てみると、まだAM3:47・・・・
(・・・・少年、今頃どんな夢見てるのかな・・・)
なんて、変態みたいなことを考えてみたり。
「送っても返信なんて来ないよね・・・」
そう思ったけど、手が勝手に動いていた。
少年と繋がっていたかった――・・・何でも良いから。
・・・・カチカチカチ・・・・と、ボタンを押すたびに細やかで小さな音が周りに漏れる。
『元彼の夢見ちゃった。あたしってしつこいと思う?』
・・・・こんなメール、中1の男子がいきなりされても困るだろ・・・
(はぁ・・・朝になんないと返信来ないのわかってるのに何で送信しちゃったかなぁ・・・)
自分の馬鹿さにムカついてきた。
なのに・・・
ブーッブーッ
マナーモードにしていた携帯があたしの手の中で震える。
「えっ!?嘘ッ!?返信!?」
・・・・少年からだよね!?
あいつ何時まで起きてんだよッ!?
『こんな夜遅くにメールしてこないでよ。マナーモードにすんの忘れてたから起きちゃったじゃん。』
「あ・・・そっか。」
迷惑だったかなぁ・・・?
・・・・・だったよね、確実に。
でも少年がマナーモードにしてなくて良かったなぁ、なんて思うあたしは相当性格悪いかな。
『ごめんごめん。寝てて良いよ。』
ホントはメール続けていたかったくせに。
自分に嘘吐いちゃって、大人気取りですかあたしは。
『もう目覚めちゃったよ。眠くなるまで付き合って。』
・・・・ホントかよ。
少年は優しいから、無理してるんじゃないかなぁ・・・
明日学校寝不足で行かないと良いけど・・・
と思いながらも、あたしは少年にメールを送信してしまう。
『元彼の夢、もうこれで3回目くらいだよ。馬鹿みたい〜(>_<)』
・・・・・馬鹿みたいだよ、ホントに。
何で、あんな奴に未練なんか残しちゃうのかな・・・
やっぱり・・・馬鹿なんだね。
ごめんね少年。
『別に良いんじゃないの?』
「別に良いって・・・こっちは嫌なんだっつの。」
少し小声で愚痴ってみる。
だって、あまりにも少年が無関心ぽいことを言うから。
まぁ・・・
あたしのことなんて、興味ないよね・・・
『でも見ちゃうのは嫌だよ。もう別れたんだもん。』
また付き合いたいなんて思ってないけど・・・
でも、振られたことは悔しいし、まだすごい悲しいよ。
あたしって、こんなにしつこい女だったっけ・・・?
変だよ・・・最近・・・・
『他に好きな人作れば?』
・・・・・少年・・・
別れたばっかで、すぐに他の人好きになるっていうのは乙女にとっちゃ大変なんだぞ?
(分かってないなぁ、もう。)
『出来ないよ、そんなの。ウチ女子高だし(´Д`;)』
・・・・少年・・・は好きな人とか、いないのかなぁ・・・
なんて考えが頭を過ぎる。
別に気になんて、少ししかなってないけどさ・・・
『じゃあどうしようも出来ないじゃん。』
・・・・・呆れちゃったね、少年も。
だって、少年が考えてくれてること、尽くあたし反対してるんだもん。
『そういう皐月クンはどうなのさ・・・』
・・・・・ついに聞いてしまった。
ついに、って言うほどでもない気もするけど・・・
だって・・・・気になったし・・・
「・・・・・・・・・。」
・・・・・?
「・・・・・・・・・。」
・・・・・あれ?
「・・・・・・・・・。」
・・・・・返信来ない?
何でいきなり来なくなったんだろ・・・
・・・・あたし、もしかして、まずいこと聞いちゃった?
ブーッブーッ
「あ、なんだ、来た来た。」
メールの内容を確認すると、
『ごめん、もう限界。寝るね、おやすみ。』
「はぁ!?」
小声でそう叫ぶ。
・・・・・絶対コレ、避けられたよね。
ていうか、拒否られた?
「・・・・むぅ・・・」
・・・やっぱりあたし聞かれたくないこと聞いちゃったんだ。
そうだよね、中1男子に、
『好きな人誰?』
みたいなこと聞いたら、恥ずかしくて答えられないよね。
思春期真っ盛りだもんね・・・
少年にも少年らしいところがあるじゃないか。
「・・・・・・・・。」
・・・・あたしの思考おばさんみたいかな・・・
でも、
(ホントは聞きたかったなぁ・・・少年の好きな人・・・)
・・・・だって、気になるじゃん。
あんな少年ぽくない少年はどんな子を好きになるのか・・・
「・・・・・・・・・あたしも寝よ・・・」
もう4時過ぎだし・・・
明日学校で絶対居眠りしちゃうって、これじゃぁ・・・
少年も・・・大丈夫かなぁ・・・
優等生みたいだし、先生からも可愛がられてそう・・・
「―――・・・・・・・・・・・」
今度は、眼を閉じても、
少年は頭の中から消えなかった
でも、それが少し、心地よかった―――・・・