2-14 精霊樹
一先ず、俺自身の今後の事は保留とし、改めて皆に家の案内をする。
玄関ホールは、見た目だけなら、ただ白い壁に囲まれた、縦横十メートルの四角い、広々とした空間となっている。
玄関から向かって、左側には二つの扉。
手前が食堂で、奥がキッチンにする予定だ。
予定と言うのは、まだ家具等が置かれてなく、ただの広いだけの空間となっているからだ。
流石に家具までは、魔力に余力がなかったので作れなかった。
それに、皆で色々相談しながら揃えていくのも、楽しそうだと思ったからだ。
そして、右側には四つの扉。
一つはトイレで一つが洗面台。一つは遊戯室兼寛ぎ空間で一つは書庫……の予定。
トイレと洗面台は作り終えているが、他二つはこちらも皆と要相談と言った所か。
最後に、玄関から真正面にある二つの扉は、大浴場となっている。
男湯と女湯だ。
こっちは、お湯は張っていないが、ちゃんと風呂としての形を取っている。
続いて二階。
これは、先程も言った通り、部屋は十室。後、トイレと洗面台もある。
広さと間取りは全て一緒なので、部屋割りを決めたら、後は自分達好みにレイアウトしていけば良い。
近々、俺の部屋も用意する予定だ。
それから、地下の訓練場。
これは、実はまだ未完成だ。
いや、実際に訓練するだけなら出来るが、ちょっと試したい事があるので、俺としてはまだ未完成と言うだけ。
この事は、まだ皆には秘密だ。
可能かどうか分からないし、可能なら、どうせならあっと驚かせてやりたい。
サプライズと言うやつだな。
現状では、ただだだっ広いグラウンドにしか過ぎない。
一通り説明が終わると、俺は一度外に出た。
まだやる事があったから。
ランダには、皆を怖がらせない様に、強く言いくるめたし、バロンに後は任せた。
すぐ戻ってくるつもりだが、戻って来てみたら、また険悪なムードになってた、なんて事だったら俺も困るしね。
そして、転移で|ジュエリー・ホワイトタイガー親子の塒《基地》に向かう。
そこには、タイミング良く、六匹がちゃんと揃っていた。
手間が省けて助かる。
俺は、出来ればこの親子にも、洞窟に一緒に来て欲しい。
本当は、最初はある程度様子を見てから、頃合いを見て距離を置こうと考えていた。
それが、何やかんやで二年もの付き合いだ。
ここまで来たら、愛着が湧かない方がおかしい。
勿論、ちゃんと森に行き来出来る様に『転移魔法陣』も設置するし、親子が少しでも嫌がる素振りをすれば、素直に引き下がるつもりだ。
しかし、それは杞憂だった。
親子に、大まかな説明をすると、母親が、一も二もなく首肯して、了承の意を示す。
それを確認した俺は、早速親子を洞窟まで転移させようとしてーー誰かに服の裾を引っ張られた。
俺は振り向いて、視線を少し下げると……
「…………え?」
俺は驚いて、目を見開いた。
何故かそこには、小さな少女が。
青緑色のゆるふわの髪が肩まであり、白に黒い縞模様のワンピースを来ている。
こんな子は、今まで見た事がない。
と言うか、いつからそこに居たのか。全く気配を感じなかった。
…………いや、前言撤回。
気配は何処か知ってる気がするが、思い出せない。
それなりに記憶力は良い方だと思うが、思い出せないと言う事は、やはり気のせいか?
兎も角、ジッと俺の顔を見上げる彼女に、話を聞く必要があるだろう。
そう思い、俺は少女の視線に合わせる様にしゃがんだ。
「君、名前は?」
キョトンと小首を傾げる少女。
「お父さんかお母さんはどうしたのかな?」
続けて質問する。
今度の質問には、明確な反応を示す。
ニコニコ笑顔になり、少女は俺を指差す。
「え?僕?」
少女が、コクコクと嬉しそうに頷いた。
この少女は喋れないのだろうか?
それよりも、親を聞いた筈なのに、何故俺を指差すのかが分からない。
俺が困惑していると、珍しくアシスの驚きの声が、俺の頭に響いた。
[……彼女はもしかして……?]
ん?何か心当たりでもあるの?アシス。
[……トーヤ様、彼女を〈鑑定〉してみて下さい]
意味は分からなかったが、俺は取り敢えず、アシスの言うがままに少女を〈鑑定〉してみた。
そして、その結果、驚く事が判明する。
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【名前】ーー
【年齢】0才
【性別】女
【種族】精霊樹
【種族特性】〈精霊生成〉
【称号】〈大精霊(幼精)〉
【状態】〈精霊契約 (トーヤ)〉
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「ホワッツ?!」
驚きの余り、つい言葉に出してしまった。
しかも英語。
だって、こんなの驚かない方がおかしい。
【精霊樹】ーー別名【聖樹】とも呼ばれてるが、これは【種族特性】にもある様に、『精霊を生み出す』存在だ。
世界各地に、一定の本数が存在するとされている。
枯れる事も無い聖なる木。
それが、【精霊樹】である。
しかし、今では新しい【精霊樹】が生まれる事は、まず無い。
何故なら、【精霊樹】とは言わば、【世界樹】の種子みたいなものーーつまりは、【世界樹】の『子』である。
だが、その母木である【世界樹】は隠れてしまった。
その為、それ以来今では新たな【精霊樹】が生まれる事はなくなった。
……………………そう、その筈である。
しかし、現実に今目の前に居るのは、紛れも無くその【精霊樹】だ。
しかも、生まれたて。
そして、驚くべき事に、何故か俺はこの少女と『契約』してるらしい。
……………………何故?
その疑問に答えてくれたのは、またもやアシスだった。
[…………これは推測ですが、ジュエリー・ホワイトタイガーの傷を癒す為に、この大樹に色々と魔法を付与したりしただけでなく、それからも頻繁にトーヤ様がこの場に足を運んだ際に、トーヤ様から漏れ出た微量な魔力を、無意識にこの大樹が吸収して、いつの間にか意思ある『大精霊』に成長したのではないかと]
なんじゃそら。
マジっすか。
俺は、我ながら自分の規格外さに呆れる。
これ、どうすりゃいいの?
[彼女は、まだ生まれたばかりなので、恐らくはまだ言葉を上手く喋れないでしょう。ですが、『契約者』がトーヤ様なら、意思疎通は出来る筈です。試しに、普段私としてる様に、彼女に心の中で語り掛けてみて下さい]
えっと……これでいいのかな?
〝?!〟
お?伝わったかな?
俺の言葉は分かる?
俺がそう聞くと、少女は心底嬉しそうに、首をコクコクと動かす。
その様子に、微笑ましく感じる。
実はね、俺達今日からこの場所を移動するんだけど……
〝 !!〟
俺が最後まで言い終わらない内に、少女の顔が、この世の終わりの様に、絶望の顔に変わる。
俺は苦笑して続けた。
………………良かったら一緒に来る?
〝?!〟
今度は一変して、少女の顔がパァと明るくなった。
こうして、俺達の新居に、新たな仲間が加わる事になった。
彼女の名を、【フェアル】と名付け(『フェアリー』からもじった)連れ帰ると、当然騒ぎとなったのは言うまでもない。
特に、双子ドライアドの驚きっぷりったらありゃしない。
二人とも、失神寸前だった。
【守護獣】の二人が、何故かご機嫌だったのが謎だ。
余談だが、勿論【精霊樹】は『普通の植物』とは異なる。
とは言え、【精霊樹】にも日光や水は大事だが、一番【精霊樹】に必要なのは、『魔力』だ。
故に、『魔力』を定期的に与えておけば、地下でも十分生息出来る。
但し、フェアルの場合は、契約者である俺の『魔力』が、一番の栄養源らしいが。
【種族】〈精霊樹〉ーーう~ん……これ、種族でいいのかな?分からん(笑)
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